秋らしい気温になってきたかと思いきや、夏場のような快晴が広がったりと、なにかと天気の変わりやすい今日この頃。皆さんも朝の天気予報とにらめっこをする日が続いているのではないでしょうか。
今日はそんな季節の変わり目に押さえておきたい、気になる店内の設定温度のお話です。
温度が消費行動を変える!?
外気温と消費行動との関係を考察したこちらの英語コラムによれば、夏場のシカゴでは気温が上昇するにつれ「restaurant near me(近場のレストラン)」というワードでのグーグル検索数が上がるといいます。誰しも炎天下のもと長時間かけてレストランを探しに行きたくはないもの。近くに涼し気なお店があれば、すぐにでも飛び込みたくなりますよね。
気温が熱いから今日はビールがよく売れる、寒くなってきたからホットの飲み物を増やしたなど、レストラン経営者であれば気温が売り上げに直結するシーンを多く経験するはずです。しかし、客足に関係しているのは外気温だけではありません。室内の設定温度でも、お客様の行動は様変わりします。例えば大人気チェーンレストランなどでは、お店の回転率を高めるためにわざと設定温度を寒く設定したり暑く設定したりといった具合に操作しているケースもあるといいます。
しかし、ホスピタリティーの基本に立ち返って考えれば、料理やヘアカット、ネイル施術などのサービスを提供するだけでなく、お客様がお店で過ごす快適な時間を提供するのもお店を経営している側のお仕事です。
どれだけ美味しい料理を提供しても、どれだけ完璧な施術をしても、店内の温度が高すぎたり低すぎたりすれば、お客様がそのお店ですごした思い出はマイナスに。逆に、過ごしやすい最適な温度を心がければ、サービスに対する満足度も上がり再訪率のアップにつながります。
お客様目線の温度設定を
エアコンの設定温度を見直す際に、まず気をつけなくてはいけない鉄則が「従業員の体感温度=最適室温ではない」ということ。
例えば、火を使うことの多い飲食店の厨房は、夏場ならずとも熱気がこもりがち。なので、従業員はお客さんと比べると、一般的に「暑がり」な傾向が見られるのは確かです。しかし、だからといって店内の設定温度を大幅に下げてしまうと、お客様と店側とで「肌で感じる温度」に大きな隔たりが生まれてしまい、居心地の悪い空間になってしまいます。
とはいえ、従業員の衣服に大きな汗染みを残したままだとどうしても不衛生な印象を与えてしまいがちですし、厨房に空調設備を置いている店舗の数は少ないとはいえ、40℃くらいまで熱のこもった環境では労働意欲にも影響がでてしまいます。
従業員の体感温度を客席の体感温度と近づけるためにも、厨房には別個に扇風機を置いて熱を分散させたり、スポットクーラーで局所的に熱を下げるなどの工夫をしましょう。
エアコンに頼らず、まずはお店で計測を
一般家庭でのエアコン設定温度として最適と言われている「28℃」に対し、接客業での最適温は一般に「26℃」と言われています。しかし、エアコンの表示温度は必ずしも室温と一致するわけではありません。
エアコンの温度センサーが全面から上面の吸気口部分にあり、冷たい空気が足元にたまりやすく暖かい空気は天井付近にのぼっていくという関係から、(古いエアコンであれば特に)設定温度よりも冷たい風が足元に集中してしまいます。結果として、エアコンのセンサーが感知している温度と、室内の体感温度のあいだに2℃ほどの乖離が生じてしまうことがあります。これでは、冬場であれば十分な暖房効果が得られず寒いまま、夏場であれば冷房が効きすぎた状態になってしまいます。
設備投資を気にしないのであれば、このような構造上の欠陥を補うために天井にファンを設置するなどして室内温度を均一化するのも得策です。しかしなによりもまず大切なのは、エアコンの設定温度だけではどうしても生じてしまう室内温度のムラについてお店側でしっかりと把握しておくことです。
一番確実なのは、窓側席、テーブル席、厨房付近のカウンター席など、店内に複数の計測ポイントを設け、時間帯ごとに温度計をチェックすること。とくに窓のすぐ側の席であれば、夏場は室内の熱気の71%が窓から入り込み、冬場は室温の48%が窓をつたって逃げていくといいます。
なので、夏はすだれや緑のカーテンで熱気を遮断したり、冬場は毛布のひざ掛けを用意するなどの特別の配慮を行き届かせてください。ここでもやはり、「従業員の体感温度だけで判断しない」というルールを徹底してくださいね!
客席目線で細かな心配りを
このように、エアコンの設定温度で一括管理するだけでは、どうしても客席に潜む温度差を見落としてしまいます。
さらに体調が優れなかったり、薄着だったりと、お客様のコンディションによっても体感温度は変化します。
客席から発されるシグナルを決して見落とさずに、積極的にお声かけしながら快適な空間づくりを目指しましょう!