皆さんは、近年、飲食店の店舗数がどのように推移しているかご存知ですか?
総務省が平成24年に実施した「経済センサス」によれば、宿泊業・飲食サービス業の店舗数は3年前の調査からなんと10パーセントも減少(606517店舗→545801店舗)しており、国内の外食産業市場の縮小を物語っています。
特に都心部では栄枯盛衰のプロセスも早く、1年前に繁盛していたお店でも1年後には潰れてしまっている……なんてことも日常茶飯事。これからの外食産業、国内だけに目を向けていれば先細りは免れないでしょう。
そこで今回は、日本から海外に進出して成功を収めた代表的な外食企業を紹介します。これから国外への進出を目指す方は、ぜひ参考にしてみてください。
国内人気店の海外進出ストーリー
CoCo壱番屋
CoCo壱番屋といえば、「ココイチ」の呼び名でお馴染みの人気カレーチェーン店。全国的に展開しており、一度はお店に足を運んだことがある方も多いのではないでしょうか?
ココイチはアジアを中心に海外進出を進めている飲食店の1つで、特にタイで人気を博しています。日本でココイチといえば、500円前後で食べることができるリーズナブルな価格と、注文をしたらすぐに食べられる手軽さが売りです。しかしタイのココイチは、日本のイメージとは大きく異なり、ちょっと高級でオシャレな空間を演出。デートや仕事の打ち合わせといったシーンで利用されることも多いと言います。
画像はタイのCoCo壱番屋
こうしたコンセプトで運営しているのは、給与水準の違いが理由です。日本と比較するとタイは給料水準が低く、日本では600円のカレーもタイでは3000円という感覚になってしまいます。しかしタイの大衆チェーン店と競合しないマーケット領域を選び、価格は下げずに日本と同じ味を提供することで、日本の高級カレー店というイメージを創り出すことに成功しました。あくまで日本と同じココイチのカレーにこだわり、タイカレーとは全く異なる味覚が現地でも評判を生み、現在の人気に至っています。
一風堂
一風堂は全国にチェーンを持つ博多ラーメンのお店です。2015年には創立から30年を迎え、臭みの少ない濃厚な豚骨スープで愛され続けてきました。
海外でも人気を博し、2016年5月時点でアメリカやシンガポールを始めとする12カ国・地域で50店舗以上を展開しています。2020年までに海外店舗数を200まで伸ばす計画を出しており、これからもさらに海外での知名度を伸ばしていくことでしょう。
そんな一風堂の海外人気に火をつけたのが、2008年3月に開店した「IPPUDO NY」です。開店してすぐにニューヨーカーの心をつかみ、レビューサイトは絶賛の嵐。初年度の売り上げは約4億5000万円で、目標数値を超える数字を叩き出すことに成功したのでした。
Veronica Ashley Cowie Ribeiroさん(@veronicacowie)が投稿した写真 –
画像は「IPPUDO NY」内のバー
「IPPUDO NY」が成功した要因としてあげられるのが、現地に合わせた「ラーメンダイニング」というコンセプトを明確に打ち出したことです。お洒落な内装に加えて、店内にウェイティングバーを併設して、席が空くまでの間にトークを楽しめるようにしています。また、おつまみなどのオリジナルメニューもマイナーチェンジを繰り返し、どんな味が現地の人々に受け入れられるか試行錯誤をしているのも特徴です。
元気寿司
“二段高速レーン”によるスピーディーなサービスが特徴的な「魚ぺい」、大切な人をもてなす時に使いたい高級寿司店「千両」まで、幅広い寿司のニーズに応える元気寿司グループ。1968年に創業して以来の寿司づくりのノウハウを活かし、積極的に海外展開も行っています。
現在はアジア各国に展開する元気寿司ですが、海外店第一号はハワイ。ハワイオリジナルのメニューを展開したのはもちろん、F1カー風の皿をレーンに乗せるという演出も話題を呼び、一躍人気店へと成長しました。海外においても寿司の味に妥協することは一切なく、日本食材を輸入することも多くあるといいます。
海外展開時は現地法人とフランチャイズ契約を行い、現地の文化に合わせた商品開発を行うことで素早い海外展開を実現しています。
味千ラーメン
ラーメン店の海外進出という話題で、忘れてはいけないのが「味千ラーメン」です。聞いたことがない方もいるかもしれませんが、味千ラーメンは熊本県を本社におく「重光産業」が運営する熊本ラーメンのお店です。日本では100店舗以下と知名度は決して高くありませんが、海外ではなんと600店舗を抱え、海外展開数は日本では競合を押しのけトップの数字を誇ります。
大手チェーン店にも引けをとらない、海外躍進の背景は何だったのでしょうか?味千ラーメンは海外の中でも、特に中国を中心に展開していますが、そのラーメンの本場で受け入れられた理由は「ダシ」。
実は中国のラーメンは、日本と異なり薄味で、日本ほどスープにこだわる文化は根付いていません。そのため、じっくりと豚骨を煮込んだコッテリしたスープが特徴の味千のラーメンは大ヒットしたのです。また、人気のカギは品質管理にもあります。重光産業は中国に食品工場を7拠点構え、日本と同様の品質を保つための食品管理にも力を入れています。
一方で中国の味千は日本のお店と異なる点もあります。それはサイドメニューの豊富さ。中国の食卓では1度に多くの料理が並ぶ文化があり、こうした食文化に合わせて「ポテト」「エビフライ」など、日本のラーメン店にはないバラエティー豊かなサイドメニューが用意されるようになったそうです。
画像は香港の味千ラーメン
次に海外で化けるのは、あなたの店舗かもしれない
国内市場が縮小している外食産業では、海外の市場に挑む国内飲食店が増えています。今回は海外展開に成功しているCoCo壱番屋、一風堂、味千ラーメンを例に、それぞれ独自の戦略やこだわりを紹介しました。次に海外で化けるのは、あなたが経営する飲食店かもしれません。
参考:
平成24年経済センサス
福岡から海外へ:激戦ラーメン市場、それでも「一風堂」が選ばれ続ける理由|IT media ONLINE
カレーのココイチが、タイで人気沸騰のワケ|東洋経済ONLINE
熊本の小さな飲食店「味千ラーメン」はなぜ中国で一番有名な日本の外食チェーンになれたのか|DIAMOND ONLINE