地震などの自然災害や火災などをはじめ、いつ何が起こるかわかりません。そうした予期せぬ出来事に備えるために、“店舗保険”には入っておきたいもの。「よくわからないから」、「うちは大丈夫だから」とあいまいにしてしまい、いざトラブルが発生してから「あのとき加入しておけば……」と後悔しても遅いのです。
今回はなぜ保険に加入する必要があるのか、その理由や具体的な保険の内容を解説します。
保険選びのポイントは、リスクの洗い出しと相談にあった。
店舗保険への加入を検討する際、まず最初にすることは、自分の店にどのようなリスクがあるかを書き出してみることです。
そのリスクは火災や配管修理、盗難などいくつかあげられますが、たとえば水漏れなどを起こした場合、店舗の階下に被害が及ぶと数千万円以上の損害倍賞を求められる場合もあります。さらに飲食店の場合は火を使うため、他業種と比べて火災が発生するリスクが高まると同時に、食中毒のリスクも発生します。
そして保険の補償内容と保険料は、販売する保険会社によって異なり、さまざまな保険商品の資料すべてを取り寄せて比較検討するのは大変です。しかも、同じような補償内容でも、保険会社によって保険料が大幅に違う場合もあります。そんなときは、複数の保険会社の商品を取り扱う「乗り合い代理店」を探して相談するのがよいでしょう。店の業態に合った保険の組み合わせを提案してもらえるほか、更新や事故発生時の連絡もひとつの店舗で済みます。このようなパック型の保険であれば、さまざまなケースに対応できるだけでなく、プロに相談することで割高な商品を購入してしまうことがなくなります。
飲食店運営時に起こり得るリスクと保険。
飲食店の場合、起こりうるリスクは大きく4つに分けられます。
財産に関するリスク
お店の財産である設備や備品が、火災や水漏れなどで使えなくなるリスクのこと。先述した通り、火を取り扱う飲食店では火災によって財産を失うリスクが他業種よりも多くあります。だからこそ、火災保険への加入は必須といえるでしょう。
損害賠償によるリスク
こちらは、食中毒やお店側の過失によりお客様に損害を与えてしまうリスクです。料理をこぼしてお客様の衣服を汚してしまった場合や、クロークでお客様からお預かりしたものを紛失してしまった場合なども含まれます。
また、賃貸物件では、火事や水漏れで損害が出てしまった場合、物件オーナーに対する賠償責任が生じることがあります。ただテナントの場合は、物件オーナーに対する賠償保険は不動産契約時に掛けられていることもあるので、忘れずに確認しましょう。
休業に関するリスク
火災や水漏れで設備が使用できなくなったり、食中毒の発生によって営業停止処分が下された場合、休業しなければいけません。
従業員への労災リスク
調理中のケガや通勤、配達中の事故など、従業員が働けなくなってしまった際のリスクです。こういった事故が発生した場合は、現場の安全管理や勤務体制に問題があるとして損害賠償請求をされる場合があります。個人事業主でも会社でも、労働者を雇い入れる場合には労働基準監督署に届け出をし、労災に加入することが義務付けられています。
以上のことから、飲食店において積極的に加入を検討しておきたい保険は、火災保険、損害責任保険、休業補償が受けられる保険です。パック型の保険を検討する場合は、これらの補償が受けられるものを選ぶとよいでしょう。
サロン運営時に起こりうるリスクと保険。
サロン運営時にも起こりうるリスクがいくつかあげられます。
施術事故
施術中の事故による事例として、ヘアーカット中にお客様の顔に傷をつけてしまった、カラーリング中にお客様の衣服を汚してしまった、フェイシャルケアでお客様の肌に異常が発生し、お客様が治療のため通院する必要が生じる可能性がまったくないとはいえません。施設所有(管理)者損害責任保険は、そんなサロンでの施術中による身体への損害や財物損害をカバーしてくれます。お客様が濡れた床で滑ってケガをした、店舗の段差で転んでケガをしたなど、店舗施設内で起きた賠償損害も、同じく施設所有(管理)者損害責任保険が適用されます。
商品に関する事故
サロンでは多種多様な化粧品や薬剤を使用し、販売をすることもあります。その際に、たとえば販売した化粧品がお客様の肌に合わず、肌荒れが原因となり病院で治療を受けたり、販売したシャンプーがお客様の頭皮に合わず炎症を起こしてしまった場合などには、生産物賠償責任保険が損害をカバーしてくれます。
持ち物の紛失
お客様が来店時には、カバンやコートなどを一時お預かりすることがあります。しかし、預かったカバンを紛失したりコートを汚してしまった場合や、お客様の荷物が盗難にあった場合などには、受託者賠償保険が損害を補償してくれます。
「なんで保険に加入してなかったんだろう」と後悔する前に。
飲食店やサロンなど、業態を問わずに店舗を運営する際にはさまざまなリスクが起こり得ます。「心配しすぎ」と考えて保険に加入していないと、いざ事故が起きたときには手の施しようがないばかりか、泣き寝入りするしかありません。「備えあれば憂いなし」という言葉があるように、いつ何が起きてもそれらに対策できるように保険にはしっかり加入しましょう。