「当初は購入予定のなかったものを、店内でのプロモーションを受け購入した」という経験がある方は多いのではないでしょうか。インターネットの普及とECサイトの拡大。現代は、商品の購入機会が増え、わざわざ店舗に足を運び商品を購入する必要がなくなりました。そのため、リアル店舗は消費者ニーズをさらに深く汲み取り、店舗の売上効果・効率性を高めていく必要があります。
今回は、店舗の販促活動に効果のある取り組み、「インストプロモーション」について解説します。
インストアプロモーションで購買意欲の促進
消費者の購買意欲を促進させるマーケティング活動をプロモーションといいます。販売員との直接的なコミュニケーションや、チラシ・POPなどの広告、WebサイトやEメールの活用もプロモーションの一つです。中でも、小売業における店内でのプロモーション活動を、インストアプロモーションと呼びます。
インストアプロモーション理解のために、まずは前提の考え方「インストアマーケティング」について解説します。
インストアマーケティングとは
インストアマーケティングとは、売り場の販売活動を促進するための「考え方」です。消費者のニーズを現場で探り、接客や店内レイアウトへ迅速に落とし込み、店舗の売上拡大や無駄なコストの削減を目的としています。
インストアマーケティングの考え方を元に売り場を調査し、消費者のニーズにあった商品やその数量、価格、タイミングを最適化する取り組みを「インストアマーチャンダイジング」といいます。そして、インストアマーチャンダイジングによって最適化された資源を消費者に対し「見せる」のがインストアプロモーションとスペースマネジメントです。スペースマネジメントは「棚割計画・フロアマネジメント」の2つに分けられ、カテゴリーごとに商品を最適に配置・管理し、消費者の動線を意識的に変え購買意欲を刺激します。そして近年、インストアマーケティングの中でも特に重視されている取り組みが、消費者に直接的な販促活動をするインストアプロモーションとなります。
インストアプロモーションが注目されるようになった背景をみていきましょう。
インストアプロモーション注目の背景
インストアプロモーションが注目されている背景には、「消費者ニーズの変化」と「消費者心理」の2つが挙げられます。
消費者ニーズの変化「モノ消費からコト消費」
従来、消費者の消費価値は商品の機能やサービス内容など「モノ」に置かれていました。しかしインターネット・ECサイトの普及によって、場所や時間に関係なくモノが手に入るようになった上、人々の暮らしも豊かになったため、商品自体の機能やサービス内容では差別化が困難となったのです。そのため、現代の消費者は商品やサービスを通した経験・体験などの「コト」に消費価値を置くようになりました。
つまり、今後店舗は商品自体の機能やサービスでの販売が困難になることを意味しています。そこで店内で消費者に向け直接的に商品の魅力を訴求し、実際に手にとってもうなどのインストアプロモーションが、オンラインにはないリアル店舗の「コト体験」として重視されているのです。
消費者の多くは計画的でない!?「消費者心理」
入店する前に購入するものを決め、商品を購入することを「計画購買」、購入計画のなかった商品を購入してしまうことを「非計画購買」といいます。アメリカとカナダで行われた、店舗を訪れる消費者心理のアンケートデータによれば、消費者の半数以上57%の方が、非計画購買者という結果になりました。みなさんの中にも、購入する予定はなかった商品を「衝動買い」した経験はあるのではないでしょうか。また同調査によれば、消費者は店舗を訪れた際に「商品の仕様」を最も求めていることがわかっています。つまり、消費者がわざわざ店舗に足を運ぶ理由は、ECサイトではわからない商品の仕様を、実際に手に取り比較検討したいからだといえます。
そこで、店内にて直接消費者の購買意欲を刺激するインストアプロモーションに注目が集まっているのです。
参考文献:SapientNitro 2nd Annual In-Store Digital Retail
インストアプロモーションの種類
インストアプロモーションの重要性、注目背景はご理解いただけたかと思います。ここではインストアプロモーションを活用する際の、種類についてご紹介します。インストアプロモーションは大きく分けて「価格主導型」と「非価格主導型」の2つに分けられます。
価格主導型インストアプロモーション
価格主導型インストアプロモーションは、商品の価格を変動させ、消費者の購買意欲を刺激する手法です。典型的な例としては、商品の値引きや特売など、商品の価格を下げることで価値を上げる方法が挙げられます。また、特定の商品をまとめて購入することで価格を下げるバンドル販売は、商品の複数購買を促します。
2019年10月から、消費税が10%に増税しましたが、政府や決済サービス事業者による「キャッシュレス・ポイント還元事業」も価格主導型のインストアプロモーションといえます。インストアプロモーションは店内での販売促進活動と述べましたが、キャッシュレス・ポイント還元事業の対象店舗であれば、対象というだけで入店意欲を促進させるため、他店舗との差別化や集客が期待できます。
非価格主導型インストアプロモーション
非価格主導型インストアプロモーションは、価格に関係なく商品の魅力や効用を訴求することで消費者の購買意欲を刺激する手法です。具体的に以下のような方法が挙げられます。
・実演販売
デモンストレーション販売とも呼ばれる実演販売は、店内・店頭で行われる販促活動の1つです。試食や試飲、サンプリングなど、商品の特性や効果などの魅力を直接消費者に訴求できるため、商品の価値を「コト体験」として提供できます。
・プレミアム
商品をおまけや特典などと一緒に提供することで、消費者の満足度が上がり、継続的な購買を促進させます。おまけ商品のプロモーションにもつながるため、オンラインにはない柔軟な価値を消費者に届けられます。
・デジタルサイネージ
従来、POPやチラシで商品の魅力をプロモーションしていた販促活動も、現代ではデジタルサイネージの活用をよく目にするようになりました。デジタルサイネージは連続する静止画に加え、動画を用いて商品の魅力を訴求できます。そのためPOPやチラシよりも、より臨場感あふれる情報を消費者に届けられます。また商品のターゲットに応じて、表示する内容を変更でき、時間帯や場所も設定できます。看板のように張り替える手間を削減できるため、コストを抑えながら効率的なプロモーションが可能です。
まとめ
今回は店内での販促活動、インストアプロモーションについて、消費者心理を含め含め解説しました。ポイントを振り返ってみましょう。
②店舗には消費者ニーズの変化と、消費者心理を汲み取った販促活動が求められる
③インストアプロモーションは「価格主導型」と「非価格主導型」の2種類に分けられる
インストアプロモーションは、現代の消費者ニーズを満たす重要なマーケティング手法です。インストアプロモーションを通した「コト体験」は、オンラインでは満たすことのできない消費者満足度につながる要因の1つです。店内での購買意欲向上はもちろん、リピートしてもらえるよう顧客ロイヤルティの育成も視野に入れながら活用しましょう。