monstar.ch

SNSや動画サイトで、「弾いてみた」という動画が頻繁に投稿されています。ここ数年のスマートフォンの普及によって、誰でも気軽に動画の作成や投稿を楽しめる時代になりましたが、弾いてみた動画は一歩間違えれば、著作権侵害になってしまう可能性があります。

ここからは、弾いてみたと著作権の関係性、著作権侵害をしてしまった場合の罰則、安全に弾いてみたを投稿する方法について解説します。

「弾いてみた」は違法!著作権法に違反する理由

結論、弾いてみた動画は著作権を侵害する行為に該当します。ではなぜ、弾いてみたは著作権法に違反するのでしょうか。まずは著作権について正しく理解する必要があります。

そもそも著作権とは

著作権は「知的財産権」の1つであり、著作者の利益を守るために存在しています。

著作者が「著作物」を利用する人に対して許諾をし、使用料を求めたり、禁止したりできる権利です。また、著作物とは思想または感情を創造的に表現したもので、文芸・学術・美術または音楽の範囲に属するものと定義されています。音楽の場合は、曲やメロディだけでなく歌詞も著作物に含まれ、著作権は創作された時点で創作者に権利が発生します。加えて、楽曲が録音や記譜されている必要はなく、即興演奏のような形で表現された音楽も著作物に該当するため、無断で使用することは許されません。著作物を無断で使用すると、創作者が正当な対価を受け取れない可能性があり、創作活動を支えていくため、著作権は必ず守らなければいけない法律となっています。

弾いてみたは「違法」

原曲をそのまま利用し、弾いてみたをSNSや動画サイトに投稿することは違法行為となります。これは、音楽には商業用レコードの二次使用料を受ける権利(著作権法第97条)において規定されています。

「商業用レコードの二次使用料を受ける権利」とは、市販されているCDなどの音源を商業目的で流した場合、流した人に対して使用料を請求できるという権利です。

楽曲の私的利用は著作権を犯す心配はありませんが、弾いてみた動画の場合はインターネットを通じて配信する行為のため、違法行為に該当します。著作者の許諾がない場合は、基本的にすべて違法行為となるため、注意が必要です。しかし、オリジナル楽曲を使用する場合や市販されているCDを使用しない場合は、インターネットを通じて弾いてみた動画配信しても違法ではありません。

楽曲の著作権と二次使用について

楽曲には大きく分けると著作者が保有する著作権、そして著作物を伝達する人が保有する著作隣接権の2つの権利が存在しています。

さらに細かく分けると17個の権利が存在し、不用意に使用すると権利に違反する可能性があるため注意が必要です。ここからは、弾いてみたを投稿するうえで、とくに注意が必要な2つの権利を紹介します。

楽曲の著作権について

著作権法では、著作者の財産的な利益を守る権利(著作権)だけでなく、人格や名誉を保護する権利である著作者人格権も定められています。

著作者人格権のなかには、同一性保持権と呼ばれる権利があり、著作物の内容とタイトルの同一性を保持するという権利があります。

同一性保持権は、著作者のみに発生する権利であり、編曲・替え歌・歌詞の翻訳など、著作物を改変する場合は、JASRAC管轄の楽曲であっても著作者の同意が必要です。

そのため、著作者の許可なく、勝手に曲のメロディや歌詞を改変することは許されていません。

一部例外のパターンもありますが、著作物を享受・利用する際には、基本的に著作権者からの許諾と利用料の支払いが必要となります。一般的に知られている著作権管理団体はJASRACですが、楽曲によっては、その他の団体や個人で管理している場合もあるため、事前に確認するようにしましょう。

楽曲の二次使用について

弾いてみた動画を作成する場合は、著作権に加えて著作隣接権についても知っておく必要があります。

著作権が「創作した人の権利」であるのに対して、著作隣接権はアーティストやレコード製作者、放送事業者などの「伝達する人の権利」を指します。

弾いてみた動画で市販の音源を含む動画を投稿する場合は、著作隣接権に触れてしまうため権利者への許諾と利用料の支払いが必要です。

また、営利目的でない場合、許諾を取らなくても楽曲を利用できるケースがありますが、

録音や録画、インターネットでの配信をするときは適応されないと規定されているため注意が必要です。そのため、弾いてみた動画では、非営利目的であっても許諾や利用料の支払いなどが必要となります。例外として、著作者が死亡して70年経っている楽曲は許諾なく利用することができます。

著作権法に違反した場合

誤って著作権を侵害してしまった場合、どのような罰則を受ける可能性があるのでしょうか。

著作権法には、著作者の利益や権利を守るために、刑事的手段または民事的手段による救済処置が規定されています。

誤って著作権を侵害してしまった場合、どのような罰則を受ける可能性があるのでしょうか。

著作権法には、著作者の利益や権利を守るために、刑事的手段または民事的手段による救済処置が規定されています。ここからは、刑事的手段と民事的手段、それぞれの罰則と処置の内容について解説します。

刑事罰が課される可能性がある

弾いてみた動画で、著作物の無断使用が判明すると、著作権者から告訴される可能性があります。

その後、検察に起訴され有罪判決を受けると「10年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金、または懲役と罰金の両方」が科せられます。

違反の内容によって差は生じますが、最悪の場合、罰金や懲役、またはその両方の刑事罰が科せられる恐れがあります。

損害賠償請求を受ける可能性がある

検察から起訴されなくても、民事訴訟を著作権者から起こされる恐れがあります。

民事告訴の場合では、損害賠償請求だけでなく差止請求を受けることも考えられるでしょう。

損害額は「侵害者の譲渡等数量」×「権利者の単位あたりの利益」−「権利者が販売等をおこなえない事情に応じた金額」で計算され、巨額の請求が発生する可能性があることに留意しておきましょう。

安全に「弾いてみた」を投稿するには

上述のように著作権を侵害した場合、刑事罰や損害賠償を求められる可能性があるため、弾いてみたを投稿する際には細心の注意を払う必要があります。

リスクがあるなら投稿を諦めてしまおうかと、悩んでしまう方もいるかもしれません。しかし、著作権に配慮したうえで、安全に弾いてみた動画を投稿する方法が存在しています。ここからは、安全に弾いてみた動画を投稿する4つの方法を詳しく紹介します。

著作権管理団体と包括契約を結んでいるサイトを利用する

包括契約を結んでいるサイトの場合、そのサイトが代わりに書作権の手続きをおこなってくれるため、投稿者は手続きなしで動画を投稿できます。包括契約を結んでいる主要なサイトは「YouTube」「ニコニコ動画」「インスタグラム」「TikTok」などです。JASRACが締結している包括契約の内容は以下になります。

・投稿者自身で演奏した音声を動画にして公開すること

・動画に歌詞を掲載すること

・動画に自身で採譜した楽譜を掲載すること

・自身で作成した動画に楽曲の音声を流すこと

注意点として、CDや音楽配信サービスなどで販売されている楽曲を弾いてみた動画でそのまま使用してはいけません。CDや配信されている音楽にはレコード製作者に権利があり、包括契約には含まれないため注意しましょう。

レコード会社から許諾を得る

楽曲の権利はアーティストが保有していますが、CD音源の権利はレコード会社が保有しています。そのため、CDなどの原曲をそのまま使用する場合、レコード会社からの許諾があれば違反行為ではありません。

例えば、YouTubeにCDの音源を流した場合は、AIが自動で審査請求をレコード会社におこないます。その後、レコード会社によって審査した結果楽曲の利用がNGの場合は、動画の削除や音声のミュートなどの対策が取られ、

OKだった場合は動画の収益をレコード会社に渡すといった、無条件許可などの対応が取られます。

審査に通った場合のみ、弾いてみた動画をYouTubeに残せるという仕組みになっています。

基本的にここまで述べた手続きで弾いてみたを投稿することは可能ですが、さらに安全性を求める場合はレコード会社から直接許諾をとるようにしましょう。

JASRACと個人契約を結ぶ

JASRACと個人契約を結ぶことで、著作権を気にすることなく自由に弾いてみた動画を投稿することができます。楽曲の使用用途に分けて料金プランが用意されているため、申請の際に内容を確認しましょう。ただし、JASRACと個人契約をしても市販されているCDなどの音源は使用できないので、注意が必要です。

著作権のない楽曲を使用する

著作権フリーの楽曲や著作者の死後70年が経過し、著作権が消滅している楽曲は自由に使用して問題ありません。また、レコード制作者などが持つ著作隣接権(原盤権)はその発売から数えて70年が経過した時点で著作権が消滅します。

著作権を理解して安全に「弾いてみた」を投稿しよう

弾いてみたは、一歩間違えれば著作権を侵害してしまう動画です。きちんとした手順を踏まなければ、著作権者から訴訟を起こされる可能性があります。弾いてみた動画を作成する際には、著作権を侵害しないためにも徹底した下調べをおこない、必要な手続きを完了させてから投稿しましょう。

monstar.ch
著者情報
magazine 編集部

magazine 編集部

店舗BGMアプリ「モンスター・チャンネル」が運営する店舗運営情報magazineの編集責任者。