「お店の雰囲気づくりにはBGMが欠かせない！」そう思って、気軽にCDを流したり、個人向けの音楽配信サービスを使ったりしていませんか？実はその行動、もしかしたら著作権侵害にあたるかもしれません。知らずに著作権を侵害してしまうと、予期せぬトラブルや罰則につながる可能性もあります。
本記事では、店舗で音楽を流す際に知っておくべき音楽著作権の基礎知識から、うっかりやってしまいがちな著作権違反の例、そして安心して音楽を利用するための正しい方法まで、徹底的に解説します。あなたの店舗が著作権トラブルに巻き込まれないための完全ガイドとして、ぜひ最後までお読みください。
店舗における音楽著作権の基礎知識
まずは、店舗で音楽を流す上で避けては通れない「著作権」について理解を深めましょう。
著作権とは何か
著作権とは、音楽や小説、絵画などの「著作物」を保護するための権利です。簡単に言えば、著作物を創作した人が、その作品をどのように利用するかを自分で決めることができる権利です。そして、他人がその著作物を利用する場合には、原則として著作者の許可が必要となります。
音楽に関する権利は、大きく以下の2つに分けられます。
- 著作権
歌詞やメロディなど、音楽そのものに対して作詞家・作曲家などの著作権者が持つ権利です。多くの楽曲は「JASRAC（日本音楽著作権協会）」などの著作権管理団体によって管理されています。 - 著作隣接権
ミュージシャン（歌手やバンド）や、CDなどをつくるレコード会社、放送事業者などが持つ権利です。著作物を演奏する、録音する、放送するなどの活動に関わる人々の権利を保護します。
店舗でBGMを流す際の著作権について
飲食店や美容室などの店舗でBGMを流す場合は、JASRACなどの著作権管理団体に「著作権使用料」を支払う必要があります。
これには、著作権法の中で定められた「演奏権」が関係しており、音楽を公の場で流すことが著作物の利用とみなされるためです。
楽器の演奏だけでなく、市販のCDや音楽配信サービスを店内で再生する行為も「演奏」に含まれるため、許諾が必要になります。
許可なく商業施設などで音楽を流すことは、著作権法違反となり、法的な責任を問われる可能性があります。
よくある著作権違反の例
「これも違反なの！？」と思うような、よくある著作権違反の例をご紹介します。心当たりのあるものがないか、チェックしてみましょう。
JASRACに申請せず、市販のCDを利用する
「CDを買ったんだから、お店で流してもいいでしょう？」いいえ、残念ながら違います。市販のCDはあくまで「個人で楽しむ」ことを前提に販売されています。店舗でBGMとして利用する場合は、別途JASRACへの使用料の支払い（許諾手続き）が必要です。 これについてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
（参考：お店にJASRACから連絡が来た！著作権侵害とペナルティ、解決する方法を解説）
CDを端末にコピーして利用する
購入したCDから音楽データを抽出し、パソコンやスマートフォンなどの端末にコピーして店舗で流すケースも、同様に著作権法違反にあたります。CDを個人で楽しむためにコピーする行為は私的利用の範囲で認められていますが、それを店舗で公衆に聞かせる目的で利用することは、著作権の侵害にあたります。
個人向け音楽配信サービスを利用する
SpotifyやApple Music、Amazon Musicなどの個人向け音楽配信サービスは、非常に便利で多くの音楽が楽しめます。しかし、これらのサービスは「個人利用」を前提とした利用規約が設けられており、料金を支払ったとしても店舗などの商業施設でのBGMとしての利用は禁止されています。詳しくは各サービスの利用規約をご確認ください。
著作権違反した際の罰則
「著作権を侵害するとどうなるの？」と不安に思う方もいるかもしれません。著作権法に違反した場合、以下のような罰則が科せられる可能性があります。
- 10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金（またはその両方）
- 法人に対しては3億円以下の罰金
また、著作権者から利用差止請求や損害賠償請求をされ、お店の名前やオーナーの名前が公表される可能性もあります。知らなかったでは済まされないのが著作権です。日頃から適切な方法で音楽を利用することが重要です。
店舗で音楽を利用するための方法
著作権を侵害せずに店舗でBGMを流すには、いくつかの方法があります。それぞれの特徴を理解し、あなたの店舗に合った方法を選びましょう。
JASRACに申請する
JASRACなどの著作権管理団体に直接申請し、使用料を支払うことで、楽曲の著作権に関する利用許諾を得ることができます。JASRACが管理する膨大な楽曲を利用できるのがメリットですが、別途、レコード会社などへの著作隣接権の許諾を得る必要がある場合があります。手続きが複雑で、管理が手間だと感じる経営者の方もいるかもしれません。
著作権フリーの音楽を利用する
著作権が消滅した楽曲（クラシック音楽など）や、著作者が利用を許諾している「著作権フリー（ロイヤリティフリー）」の音源を利用する方法です。費用を抑えられる場合が多いですが、選べる楽曲のジャンルや数が限られることが多いのがデメリットです。また、著作権は消滅していても、著作隣接権は消滅していないことも多く、注意が必要です。
有線放送を利用する
有線放送は著作権処理が行われているため、複雑な手続きは不要です。幅広いジャンルの番組が用意されており、店舗の雰囲気に合わせたBGMを選べますが、初期費用や月額料金がかかり、専用機器や工事も必要です。
店舗向けBGMサービスを利用する
近年、店舗向けのBGMサービスが増えています。これらのサービスも有線放送と同様に著作権・著作隣接権の処理がすべて済んでいるため、安心して利用できます。インターネット回線があれば手軽に導入でき、多種多様なBGMチャンネルから店舗の雰囲気に合わせて選べるのが特徴で、有線放送より安価に提供されています。
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