狭小地での新規開店は、店が狭く窮屈に感じたり、その狭さゆえに内装デザインやインテリアが制限されてしまったり、入客数が限られて来たり…というように様々な弊害が生じることが想定されるためどうしても敬遠されがちです。
しかし狭小地には物件価格が安いということやアットホームで暖かな空間を作り出すことができるということなど、狭小地だからこそ味わえるメリットもまた沢山存在します。
今回は、狭小地で新規開店する魅力についてご紹介します!
なんといっても安さが魅力!狭小地なら夢の脱サラや多店舗展開も可能!?
狭小物件の魅力としてはまず、賃料や地代が安い、という点が挙げられます。
商売、特に接客業をしたいという場合、ある程度立地条件のいいところで開業する必要があります。しかし市内中心部や駅に近い所となると土地の坪単価がかなり高いうえ、まとまった土地というのもあまり残っていません。
そこでおすすめしたいのが狭小物件です。
たとえばご夫婦で小さなカフェを経営したいという場合、狭小地にある三階建ての店舗兼住宅を探す、というのはいかがでしょうか。狭小物件は同じ立地条件でも通常の物件より賃料・地代が安いため、毎月かかる費用を抑えることができます。
商売をする際は、“賃料は最初の3日で稼げ”というのが鉄則ですが、開業当初は売り上げも安定しないため賃料が高いところですと赤字を出してしまうかもしれません。その点、狭小地ならば賃料を安く抑えることができるため、開店当初から無理のない経営をすることができます。
ちなみに最近は大手企業も狭小物件に注目しており、例えば2014年5月にオープンしたファミリーマート日枝神社前店は、売り場面積が通常の7割しかありません。しかしその分2階部分をイートインスペースとして提供し、これが大ヒットしているのです。
これを受けてファミリーマートは全国各地に2階建て店舗を展開し、今やその数は40店舗以上となっています。
無駄を削ぎ落とし、サービスを高める。狭小店舗のミニマルな機能性
狭小店舗には、“狭い空間”にしかない機能性も期待することができます。
飲食店を経営する場合、お客様の回転率を上げることは売り上げを伸ばすうえで欠かすことができない要素です。
この点、狭小店舗であれば立ち食いスタイルやカフェスタンドスタイルにすることで容易にその回転率を高めることができます。
また商売をするうえで最も重要であるといっても過言ではないのが「自店の売りがあること」、なおかつそれが「お客様に対して明確に伝わること」です。ところが敷地面積が広い店舗の場合、“あれもこれも”と詰め込むうちに自店の売りが何なのか、お客様に伝わりにくくなってしまうことがあります。
この点、狭小店舗であれば自ずとサービスの“核”となる部分に特化した空間にせざるを得ませんので、余分なものを全てそぎ落とし、自店の“売り”が伝わりやすい店舗を作ることができるのです。
実際、狭小店舗の中にはその“狭さ”を有効活用し、お客様との距離感が近いことを売りにしているところが多数存在しています。
参考にしたい!狭小店舗の内装デザイン事例
では、狭小地に建てられている実店舗にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、狭小店舗の内装やデザイン事例などをいくつかご紹介します。
■根津のカフェ「nezu chiffon」
建築面積:約8.5坪
こちらは、2階建て狭小物件の1階部分をカフェとして利用している店舗兼住宅です。店内は木の温もりが感じられるあたたかな雰囲気で、テーブル席とソファー席が用意されています。
余分なものをすべて排除しシンプルな空間にすることで、狭さや窮屈さが全く感じられません。
■焼きとん・焼き鳥「天下一なぎ屋 代々木店」
建築面積:??坪
代々木の人気焼き鳥店ですが、特筆すべきは腰を曲げないと立てないほどの2階屋根裏スペースまでを客席として解放した「攻め」の店舗デザイン!店員さんははしごを登り下りしながら接客をしているそうです。どれだけ狭くとも、お店の「覚悟」と「コンセプト」が伝われば、お客様はきっとついてくる。そんな好例となっているお店です。
■イタリアン「ピテカントロポ」
面積:3.9坪
東京都世田谷区の三軒茶屋にたたずむ「ピテカントロポ」は、業容拡大に伴い2013年に赤羽橋に移転しました。移転前の店舗面積はなんと3.9坪!狭いながらも毎日にぎわっている大人気のイタリアンレストランとして、狭小地にたつお店のお手本のような繁盛店でした。
空間に合わせたインテリアがあちらこちらに置かれていて、「今度来たときはあちらのテーブルで食事してみたいな」なんて言われるお客様もいらっしゃったそうですよ!
■大阪府寝屋川市のバー「SAKURA SAKU」
面積:8坪
「自宅のリビングにいるような安心感」というコンセプトのもとに作られたbar SAKURA SAKUには、50種類以上の缶詰を楽しむことができる立ち飲みスタイルのお店です。これはまさに、“狭い店舗だからこそできること”と言えるでしょう。
■吉祥寺の生フローズンヨーグルト専門店「ウッドベリーズ」
面積:??坪
暑い日にふらっと立ち寄りたくなるフローズンヨーグルト専門店。回転率を高めたい業態ならではの、サービスの「核」以外のデザインをすべて削ぎ落とした店舗デザインです。小さいながらも客足は絶えず、吉祥寺だけで2軒、鎌倉に1軒の店舗をかまえている人気店です。
面積:8坪
工事費用をとにかく抑えたい、しかし味のあるデザインにしたい、という店主の要望をかなえるべく、建材や引戸、羽目板などあらゆる部分が工夫された店舗です。店内は“和”を感じさせる空間になっており、訪れた人はゆったりとくつろぎ美味しい料理とお酒に舌鼓をうっています。
面積:4坪
「4名様以上では来ないでください!」
「4名様で貸し切りにすることができます!」
が、コンセプトの店舗。なぜならば、4名様しか入店できないほど狭い店内だからです。まさに“狭さ”を売りにした店舗であるといえるでしょう。
敷地面積自体は狭くても天井を高くとっているため窮屈さを感じませんし、ベンチタイプの椅子にするなど余分なものを極力取り除くことによって居心地の良い空間を作り出しています。
面積:4.1坪
もしかしたら日本一狭いかも知れない、約4坪のとても小さな美容室です。こちらの物件はなんと、自宅に隣接する納屋を改装して店舗にしました。北欧テイストで、トレンドを発信する美容室にふさわしい内装に仕上がっています。
まとめ
いかがでしたか?
「狭小物件」というとそれだけで敬遠してしまいがちですが、狭小物件には狭小物件にしかない魅力や機能性がたくさん詰まっています。これから開業しようとしている方や店舗の移転を考えているという方は、その選択肢の一つとして「狭小物件」を検討してみてはいかがでしょうか。
デザインと工夫次第で、他にはない素敵な店舗を作り上げられるかもしれませんよ!?