スタッフを採用しても、すぐに辞めてしまう……
職場のモチベーションが低い……
飲食店の経営において、スタッフの質やモチベーションは売上に直結します。万が一、スタッフが一度に何人も辞めるということになったらお店の存続問題になりかねません。
では、どうしたらスタッフのモチベーションを上げることができるのでしょうか。スタッフの育成が上手で、離職率も低い、高い従業員満足度を誇る飲食店の代表として「スターバックス」の育成の方針にならってみましょう。
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満足度が低い原因は「スタッフの心が掴めていないから」
そもそもなぜ、飲食店のスタッフの離職が多くなりがちなのでしょうか。一般的な飲食店スタッフの不満がたまる理由としては以下のようなことが挙げられます。
・作業が単調
・「お金」以外に働く目的がない
・時給が上がらない
・魅力的な人がいない
・顧客の質が悪い
このように、スタッフが使命感を持って働けない環境だったら当然、時給が良い別の仕事があったら乗り換えてしまいますし、いつ辞めてもおかしくないでしょう。
その点、スターバックスはスタッフの「モチベーションを上げ」、「成長意欲を向上させる」のがとても上手なのです。
以下では、その徹底したモチベーション管理術を通じて、飲食店が取り入れるべき「スターバックス式の育成プラン」をご紹介します。
スタッフに圧倒的なビジョンを語れ!
スターバックスのスタッフは、みんなスタバが好き……というのはよく言われていることですが、そんな人たちが集まる理由は、コンセプトやブランドに魅力があるから。スタバが何を目指しているのかは多くの人に知られています。
それは、お客さんにとっての家や会社・学校に次ぐ3つ目の心地よい居場所、「サード・プレイス」をつくること。このビジョンに多くの人が共感し、「自分もスターバックスで働きたい」というファンがスタッフとして集まり、接客のレベルや提供するドリンクの質を上げようと夢中になって努力するのです。
もちろん、スターバックスのように、ここまでビジョンが広く知れ渡るのは一飲食店としては難しいこと。ですが、「お店が何を目指しているのか」という明確なビジョンを掲げて、スタッフに共有することで、前向きな仕事が期待できます。そのビジョンの浸透によって、品質・環境・人材バランスが高いレベルでとれるだけでなく、お店のブランドに惹きつけられた顧客層ができるのです。
アルバイトでも3か月に1度の給与改定
スターバックスはアルバイトでも何段階もの職務レベルがあり、それぞれの段階に必要な「スキル」が明確に設定されています。例えば最初は、1人でレジ作業ができる、ドリンク作りができる……という基本的なものですが、レベルが上がるにつれて自分自身のタスクだけではなく、「周囲のスタッフに適切な指導ができるか」「お店全体の状況を判断し、マネジメントできるか」というより高度な項目がついてきます。
職務レベルが上がるにつれて時給も上がるのですが、給与改定がなんと3か月に1度あるのです。それぞれ20円刻みほどで大きな金額ではないのですが、「評価してもらえた」という事実は大いにスタッフのモチベーションになります。
また、その話し合いの時間でさえ、運営側にとっては普段腹を割って話す機会のないスタッフとの貴重な対話の時間になるでしょう。
1時間ごとにスタッフに「変化」と「目標」を与えよ
マンネリしがちな日々の業務内容。ただ時間が過ぎるのを待つ……なんてスタッフもいるのではないでしょうか。スタバは、スタッフに「業務を楽しませる工夫」が非常に上手なのです。
まず1時間ごとにポジションを変えて、メイン業務の内容に変化を与えます。レジ・ドリンク作成・客席を整える係……等。さらに1時間ごとにその時間の「目標」を決めてもらいます。職務レベルによって目指すべきものが明確に設定されているので、ステップアップするために1時間ごとの目標を設定するのです。
また、同じ人ばかりがかぶらないようにシフトを作成しているもの特徴です。こうすることで、いろんな人たちからの刺激を受けられる環境でスタッフが育成されます。できるだけ環境に変化を与え、多様な目標を設定することでスタッフのモチベーションを上げることができるのです。
徹底した「効果的な」フィードバック
スターバックスでは、目標を設定しっぱなしではなくその時間帯の“フィードバック”(振り返り)をすることを欠かしません。コーチングをする人はしっかりと数十時間の育成がされていて、「効果的なフィードバックの方法」を習得しています。
フィードバックには2種類あり、それぞれに「行動是正」「行動強化」というコンセプトが与えられています。具体的には、
▼ 行動是正
うまくいかなかったときに使うのが「行動是正のフィードバック」。相手の行いを正しい方向に導くことが目的です。うまくいかなかった理由をまず本人に問いかけ、原因を自分で考えてもらいます。むやみに相手を責めるのではなく、行動を改める理由から納得してもらうことでその後の行動も変わってくるのです。
▼ 行動強化
こちらは逆に、うまくいったときにそれを誉め、さらに「どうしてその行動が良かったのか」を分析させて良い行動を習慣化させるためのものです。
さらに、フィードバックのタイミングは「タイムリーなもの」に絞るのが原則です。「前から気になっていたんだけど……」と、過去を蒸し返したり、「雑な性格だよね」などと人格を否定するようなことは、相手のモチベーションを著しく低下させます。
言い方ひとつで浮き沈みするのは誰もが経験のあることかと思います。そんな「仲間を尊重した育成をする」という姿勢をスタバは非常に大切にしています。
スタッフを巻き込んで売上向上の施策を練る
「スタッフを巻き込むのは申し訳ない」。そんな遠慮が少なからずある経営者もいることでしょう。
逆にスターバックスは、どんどんスタッフをお店の取り組みに巻き込んでいきます。2か月に1度以上は変わる季節ごとの新商品。それが出るたびに、食べ物のおすすめトークや、ディスプレイの仕方など、「どうしたら売れるか」をみんなで一緒に考えます。自分のアイデアを頼られることで、スタッフのモチベーションも上がるのです。
これが成り立つのも「お店の目指すもの」がスタッフに浸透し、共感してくれている結果で、お店のためにある程度尽くすのは厭わないスタッフが育ってくるのです。理念の浸透があってこその体制です。
従業員満足度はアゲられる!
高い従業員満足度を誇るスターバックス。抜群のブランド力を持つ同社と比べるのは、少し乱暴に感じる方もいるかもしれませんが、それぞれの要素を具体的なアクションプランに落とし込むことが「無理ではない」ことに気が付いていただけたでしょうか。
スタッフのモチベーションを上げるためには、圧倒的なビジョンを持ち、評価制度を整えること。そして、相手を尊重する店舗の風土が大切なのです。