少子高齢化が叫ばれるようになって早20年……。人手不足は、大きな問題として飲食店経営者の前に立ちふさがっています。この人手不足を解消するために今必要とされているのが、一人当たりの生産性を充実させるための、厨房設備の充実です。
例えば、大手の外食チェーンが推進してきたセントラルキッチンシステムや、調理の計数管理を応用したコンベアオーブンやコンベアフライヤーへの応用など、人員数が足りない外食産業の現場を救うためには設備投資という選択肢が有用なのです。
そんな中、今注目を集めているのが、徹底的な数値管理をされた高度なマニュアルと、それを活かす電化厨房機器の制御性を売りとする、「新調理システム」です。新調理システムの推進役でもあり、フードサービスのコンサルティングを行っているニチワ電機によれば、システム導入によって、料理の質の均一化や作業効率の改善、人件費の削減、高い安全性の確保など、様々なメリットがあるとのこと。
今回は、ファベックス2016において行われた、新調理システム推進協会の事務局長、西耕平さんの講演を参考に、「新調理システム」の可能性に迫ります。
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新調理システムを導入する意味
出典:ニチワ電機株式会社
ここで、冒頭でも少し触れましたが、新調理システムの定義をまず押さえておきましょう。新調理システムとは、計数管理を利用したレシピと電化厨房機器を利用した、新しい調理の生産システムのことを言います。
この新調理システムを導入することによって、これまで飲食業界において、感覚や経験則で行われていた「料理の品質」「食品衛生」を、計数を利用して管理し、チェーン店であっても一定の質を保つことができます。また、食材や水道・光熱、人にかかる費用のロスをコントロールするため、原価率も維持することができるのです。
このように、どの店でも同じサービスを提供することができるようになるのが「新調理システム」の魅力なのです。
重要なのは「温度」と「時間」! TT管理による衛生管理と品質管理
では、数値で管理する新調理システムにおいて、具体的にどのように「品質」と「衛生」を高めていくのでしょうか。
そこでポイントとなるのが、「TT管理」という考え方です。TTとは、Time(時間)とTemperture(温度)のことで、加熱調理の加減を、時間と温度の要素に分けてデータ化して管理することを指します。このTT管理によって、食品の衛生面と品質面での水準が一定ラインのものとなり、さらに人件費などの節減にもなるのです。
生肉は常温で1時間放置すると細菌が8倍、3時間放置すると500倍にもなると言われています。TT管理で時間と温度を明確に管理することで、この食中毒のリスクを抑え、食品の質や衛生を保つことができるのです。
TT管理により、時間やお金も削減!新調理システムの本領発揮
そして、TT管理のメリットはそれだけではありません。実は、新調理システムと組み合わせることで、時間短縮や人件費抑制にも役立てることができるのです。
その理由を説明する前に、まず「加熱調理には4つの温度帯がある」という話をしましょう。
110℃〜150℃ 炊く・煮る・煮込む
160℃〜230℃ 揚げ物・フライ・炒める・軽く焼く
240℃〜450℃ 焼く
加熱調理は、調理の種類別に、このようにたった4つの温度帯に分けることができます。そこに目をつけたのが、「新調理システム」。この4つの温度帯をベースに、同じ温度帯でできることを統合してコストダウンを図ったのです。
これだけの説明では分かりにくいと思うので、例を挙げましょう。
ある従業員食堂では、茹で作業・煮物調理を行っていた回転釜とガスコンロを、スチームコンベクションオーブンに置き換えることで、26パーセントの時間短縮に成功しました。2つの温度帯に分けて同時調理することで加熱時間が大幅に減少できるようになったからです。
また、弁当や惣菜を売っているお店では、1日の生産量を2年間で2200食から3500食に増やす一方で、年間人件費率をマイナス5%まで削減することに成功しました。これは、TT管理に則った効率的な調理法が、新調理システムの厨房機器によって実現したためです。加熱調理に割かれる人員は減る一方で大量生産が可能になったのでした。
このように、「品質」だけではなく「時間」「お金」まで管理できるのも、新調理システムの強みだと言えるでしょう。
新調理システムが切り開く、サービスの標準化の時代。
人手不足の世にあっても、一定の品質を保ちつつ、コストを抑えるためには、今回ご紹介した新調理システムが鍵となることでしょう。チェーン店や従業員食堂などで課題を感じている方は、是非取り入れてみてはいかがでしょうか。