夏本番を迎え、仕事終わりのサラリーマンが「とりあえず生!」と、冷たいビールを求めて来店する季節がやってきました。しかし、近年その「とりあえず生」というお決まりのフレーズにも変化が起きつつあります。
その背景としてあるのが、2013年~2014年にかけて到来したクラフトビールブーム。ビール党の多様化をもたらしたこのブームは、一過性のものにとどまらず。今では成熟した文化として定着しつつあるのです。
レストランを経営している方であれば、これからはお客様に「ビールリストはありますか?」と聞かれることも増えてくるかもしれません。そこで今回は、ビールにまつわる幅広いニーズに応えるため、お店の品揃えに加えておきたいクラフトビールを代表的な銘柄・産地と共に紹介します。
クラフトビールは何故そんなに人気なの?
そもそも、何故クラフトビールに注目が集まり始めたのでしょうか?
日本におけるクラフトビールの歴史は、1994年にまで遡ります。当時の酒税法改正により、2000キロリットルから最低製造数量60キロリットルへと少量生産できるよう規制緩和されたことで、全国各地に小規模なビール製造会社が誕生しました。
それによって、地域おこしや地産地消を目的として地ビール人気に火が付き、現在のクラフトビールブームへと繋がっていくことになります。
そして2004年以降、技術の蓄積から醸造技術が向上し、高品質なビールが生産可能になった各地方の醸造所(ブルワリー)は、クラフトビール造りが盛んなヨーロッパやアメリカを手本にして「品質を重視したビール造り」を追求していきました。
そこからビールの味や香りに多様性が生まれ、今では毎年のようにビールの世界大会で入賞するほど国として高品質なクラフトビールを造ることに成功。既に100種類以上のクラフトビールが存在します。
全員が「とりあえず生!」と、同じお酒を頼む“大量生産・大量消費”の時代はほぼ終わりつつあり、一人ひとりが自らの嗜好に基づいてビールを選択する、消費者側も味・香りにこだわる新時代へと突入しているのです。
これだけはリストに加えておきたい!代表的なクラフトビール5選
ここからは、有名なクラフトビールを5種類紹介します。これだけでも抑えておけばバラエティ豊かなビールリストに仕上がるので、今後クラフトビールを仕入れていこうと考えている経営者の方は是非参考にしてみて下さい。
ピルスナー(Pilsner)
ピルスナーとは、ホップの苦味を特徴とする黄金色のビールのこと。日本の大手ビール企業(アサヒ、サッポロ、キリン、サントリー)が製造している「スーパードライ」、「一番搾り」、「エビス」、「プレミアムモルツ」といった銘柄は全てこのピルスナーにあたります。
程よいホップの香りに、苦みのキレ、爽快なのどごしが合わさることによって、日本人好みの「ク~~ッ!」っと唸るような爽快感が得られるのが特徴。他のビールと比べて軽いテイストのビールなので、最初の一杯目としてオススメするのには最適ですね。
ペールエール(Pale Ale)
ペールエールは、ピルスナーに比べて「ホップの香り」も「モルトのしっかり感」も強く味わうことができるので、ピルスナーを飲み慣れた人が飲むと「濃い」と感じるかもしれません。
それに加えて、ペールエールが美味しく飲める温度は10〜13℃とされており、キンキンに冷やしたビールを好む人からすれば「ぬるい」と感じることでしょう。なので、ゆったりとしたディナータイムのお供に、二杯目からゆっくりとしたペースで飲むビールとしてオススメするのに最適です。
銘柄:よなよなエール
醸造元:ヤッホーブルーイング
産地:長野県軽井沢町
特徴:のどごしではなく、ビールの美味さを舌でダイレクトに感じることができるペールエールです。爽やかな味わいとバランスの良いホップ感が、普段のビールと一味違う逸品です。
IPA(インディア・ペール・エール)
IPA(アイピーエー)は、ペールエールよりもさらに強いホップの香りと苦味を持っているビールであり、ガツンとインパクトのある個性が特徴。ビールが苦手な人は飲むことは困難ですが、その強烈で斬新な味わいがコアなビールファンを唸らします。
「ビールは苦いから美味い!」そんなことを再認識させてくれるIPAは、その深みにハマったビールファンをリピーターにしてくれる、魔法のビールと言えるかもしれません。
銘柄:ストーン IPA
醸造元:ストーンブリューイング
産地:アメリカ
特徴:“ビールを愛し過ぎた”2人がアメリカの西海岸でスタートした醸造所(ブルワリー)が苦味と香りを追求し続けたIPA。これを飲まないとIPAは語れない程ファンを唸らせ続けている逸品です。
ヴァイツェン(Weizen)
ヴァイツェンは、大麦よりもたんぱく質が多い原料小麦で造られており、白く濁ることから日本では「白ビール」と呼ばれています。
他のビールと違い、口当たりから後味までフルーティーな風味が続くので、苦味はほとんど感じません。その飲みやすさから、ビールが苦手な人でもヴァイツェンからビールに目覚めることが多く、初心者に優しいクラフトビールです。
銘柄:ヘーフェ ヴァイスビア
醸造元:フランチスカーナー
産地:ドイツ
特徴:口に含んだ瞬間、柑橘系のサッパリとした味が広がり、そこから喉を通り過ぎると舌の上に残るのはバナナや風船ガム、エスニック系のスパイスの味など、飲む度に味や風味が変わるというなんとも複雑で癖になる逸品です。
スタウト(Stout)
スタウトは、黒くなるまでローストした大麦を使用した、いわゆる「黒ビール」です。非常に濃厚な味わいで、苦味も酸味も強く、アルコール度数も高めに作られています。スタウトの苦味はコーヒーに近く、香ばしさが特徴で、一般的なビールとは大きくかけ離れた苦味の性質を持っています。
ピルスナーのようにゴクゴク飲むのではなく、一口一口をワインのように楽しみながら飲むのが定番ですね。
銘柄:エクストラ スタウト
醸造元:ギネス
産地:イギリス、アイルランド、その他各国
特徴:スタウトといえばギネス!と言われる程、世界で最も飲まれているビールの一つとして支持され続けています。低アルコールでサッパリとしている中で、まったりとしたコクとクリーミーな味わいが重なり、一度口にしたらリピーターになること間違いなしの逸品です。
クラフトビールの勢いは止まらない
現在、東京都内だけでもクラフトビールを扱う店舗が毎日のように開店しているほど、ここ数年のクラフトビールブームは留まることを知りません。
日本の4大ビールメーカーも、ピルスナーだけでなく、各地方のクラフトビールを限定販売する試みに乗り出しています。
今や値段や定番よりも「高品質」を求めるニーズが増えてきている時代。ビールの品揃えに困っている経営者の方は、この機会にリストの種類を増やし、クラフトビールブームに乗っかっていきましょう!