2016年現在、新卒で入社してくる従業員や大学生・高校生のアルバイトスタッフたちは、いわゆる“ゆとり世代”と呼ばれる世代の若者です。
2016年にはドラマ「ゆとりですがなにか?」(日本テレビ)で、居酒屋チェーン店の本部に勤務する若者の奮闘が取り上げられましたが、そこで描かれていたのは、「これだからゆとりは!」という世間のステレオタイプと、それに悩みつつも成長していく若者の姿でした。
では、実際の店舗運営の中で、ゆとり世代を受け入れ、職場に定着させていくためにはどのようなコミュニケーションが必要なのでしょうか。ゆとり世代の定義と特徴、教育のポイントを探ります。
ゆとり世代とは
「ゆとり世代」とは、一般的に1987年4月2日〜2004年4月1日生まれで、2002年度以降に施行された「学習指導要領で育った世代」のことを指します。
このゆとり教育では、授業時間や授業内容の削減、評価方法の変更など、従来のカリキュラムが大きく変更されました。その結果、子どもが手厚いサービスに囲まれて育ったために、「自ら能動的に動く必要がない」という人間に育ってしまったといわれています。また、推薦入試やAO入試などの学力試験のない受験形態が生まれ、大学進学が容易になった事も理由のひとつとして挙げられています。
ゆとり世代の特徴
「言われたことしかできない」
「打たれ弱く、叱られるとなかなか立ち直れない」
「コミュニケーションが苦手」
「言いたいことはメールで届く」
接客業を営む上で、ゆとり世代のスタッフが示す上のような特徴について目の当たりにしたり、耳にした経営者の方は、多くいらっしゃるのではないでしょうか。
後にも詳しく触れますが、これはあくまでも「一般論」。自分より下の世代の若者がどういう環境で育ってきたのかを理解するための参考に留めておくのがいいでしょう。以下に挙げるのは、その他にも「ゆとりバッシング」のテンプレートとして取り上げられることの多い要素です。
▼ 自分のアタマで考えられない?
様々な情報に携帯さえあれば簡単にアクセスできることから、分からない事は検索すればすぐに解決できるために、分かった気になり、すぐに結果を求めます。そのため自分で考えたり、深く考える必要がない人間に育ってしまったともいわれています。
▼ 叱られ慣れていない?
さらに、SNSの普及により、自分と似通った仲間とのつながりに多くの時間を割くために、異なる世代や価値観を持った人々と接する必要がない人間に育ってしまったようです。そのため、年上の人間との関わり方がわからず、叱られると萎縮してしまうのもゆとり世代の特徴のひとつです。
▼ 視野が狭い?
少子化の時代に生まれ、同世代との熾烈な競争を経験していないゆとり世代の若者たちは、視野が狭く、無駄だと思うことは不合理に感じて避けようとする傾向にあるとも言われています。そのため「結果を出そう」「人に負けないよう頑張ろう」といった価値観を持たないため、自分の成長につながることにしか興味がないのです。
▼ プライベートが最優先?
このほか、先輩・上司の方から自分の元にやってきて頼むべきと考えているため、自主性がない「指示待ち人間」が多くいます。さらに、いつ無くなるかも分からない職場にはあまり興味がなく、家族や友人など、なくならずにいてくれるものを大事にするため、何よりもプライベートを優先します。
何事も決めつけは良くない
先述した通り、若いスタッフの行動を上記のようなステレオタイプに当てはめて「これだからゆとりは!」と難癖をつけることは、かえってそのスタッフのやる気を削ぎ、お店にとっても必要なスタッフの成長機会を奪うことにもなります。時には世代間ギャップとしっかり向き合い、自分自身の価値観が古いのではないか?と疑いの目を持つことも必要でしょう。
それでは、新人指導の上で世代差を埋めるためには、どのようなコミュニケーションを取ればいいのでしょうか?次のセクションでは、その具体的なポイントを探ります。
ゆとり世代の新人教育や指導のポイントは?
ゆとり教育の考え方の大きな影響を受け、「個性」を受けいれられることが当たり前の中で成長してきたゆとり世代。そのため、常に自分を見ていてくれる事を望む傾向があります。
強い口調にも、“怒られた”と感じるゆとり世代が多く存在します。上の世代と比べて打たれ弱い彼らは、叱られると自分の全人格を否定されたと思い込んでしまうのです。そんな時は声を荒げず、柔らかい口調で「あなたの為に言っているんだよ」と声をかけると、自分のことをきちんと見てくれている先輩(上司)だと思ってくれるでしょう。
また、SNSのヘビーユーザーであることが多いゆとり世代の若者は、人からどう思われているかをとても気にする傾向があり、その分失敗を恐れます。そのため、失敗することは恥ずかしいことではない、ということを、しつこいほど教える必要があります。さらに彼らが失敗した際の注意の後、きちんとフォローすることも忘れてはいけないのです。
言いにくいことは全てメールで対応しようとするゆとり世代には、ランチやお茶に誘って話しやすい場を作ってみると良いでしょう。これは、直接コミュニケーションをとる方がスムーズであることを分からせるためです。
まとめ
今やっている作業に何の意味があるのか、上司の指示を受けることに何のメリットがあるのかなど、ひとつひとつの作業が分からないとやる気をなくし、退職を考えてしまいがちなゆとり世代。そのため、自分たちの仕事の目的や意義をはっきりと伝える努力が必要になってきます。
今回挙げたゆとり世代の特徴を踏まえて、彼らにあった指導や接し方をすれば、想像以上の成長をしてくれるかもしれません。根気よく、声を荒げずに頑張ってみてください。