「自分だけの店舗を持ちたい」。そう考えて開業を目指す方は、メニューやコンセプトをはじめ、店名にも強いこだわりを持っているものです。
しかしいざ開業した矢先、「あなたの使用している店名は商標権侵害です」なんて警告状が送られてきたら……店名の入った看板やユニフォーム、ノベルティ、領収書や紙ナプキンまでも、すべて作り直しに。準備にかけた資金が無駄になってしまったことはもちろんですが、なによりも思いを込めた店名が使えないというショックは計り知れません。
そんな事態を防ぐために必要なのは、「商標の登録」です。あらかじめ店名を商標として登録しておけば、後から同じ店名で営業を始めた店舗とのトラブルを回避できるのです。
今回は決して他人事ではない「商標権侵害のリスク」と、自身で簡単にできる商標登録の方法についてご紹介します。
商標権を取得しておけば、こんなトラブルを回避できる!
商標登録について、「特に店名が同じになったとしても、特に問題はないだろう」と考えていませんか。
商標とは、「商品やサービスの名称やロゴ」のこと。開業後、多くのお客様からの支持を受けて支店を出すといった際には特に店名の商標を取っておくことは必須といっても過言ではありません。
たとえば同じ店名があることで発生するリスクとして、以下のケースがあげられます。
1.同名の店舗があると、店舗のイメージがすでに固定されてしまう。
開業前に同じ地区などにおいて同名の店舗があった場合、お客様の間では先にあった店舗のイメージが強く印象付けられています。そこで独自のコンセプトやメニューをどれだけ打ち出したとしても、店名のイメージが先行して来客にはなかなか繋がらない可能性があります。
さらに先述した通り、後から同じ店名で開業したことを知った相手が「商標権の侵害」を訴えることも。
2.同名で同業の店舗によって、イメージが傷つくことがあれば自分の店舗も被害を被る
逆に自分の店舗と同じ名前の店舗が後からオープンした際にもリスクは発生します。相手の店舗が著しく店舗のイメージを傷つけることがあれば、関係がなかったとしても同名の自分の店舗の信用も失ってしまいます。
さらに後から同名で出店した相手が先に商標登録していたら、その名称は使えなくなってしまいます。商標権の侵害はやがて「パクリ」といったレッテルとなり、悪い印象につながることは避けられません。
たとえ自分のほうが先に出店していたとしても、商標権は登録した人に与えられるのです。「特に問題にはならないだろう」と放置すると、やがて店名をめぐるトラブルに巻き込まれるでしょう。だからこそ「商標権を侵害している」という警告状が届く前に、事前に店名を商標登録しておくことが求められるのです。
自分で登録する?専門家に相談する?それぞれのメリットとともに商標登録の方法を確認しよう。
では、実際に商標を登録するためにはどうすればいいのでしょうか。
1.商標登録を行う前に、既に登録されていないかどうかを確認する
まずは、事前に登録したい商標がすでに登録されていないかを調べておかなければいけません。
自分の登録したい商標がすでに登録されているかどうかは、「特許情報プラットホーム」で検索して確認しましょう。当然ながら、登録しようとしていた名称がすでに登録されていれば、申請しても却下されてしまいます。
また、ここで注目すべきなのは「区分」です。区分とは商標を分けるカテゴリーであり、飲食店の場合は「飲食物の提供」の43類、サロンの場合は「人又は動物に関する衛生及び美容」の44類が該当します。さらにこの区分からより細かく商品を分けたものが「類似コード」となります。
もしも登録しようとしている名称がすでに登録されていたとしても、この類似コードが同じものでなければ、同じ商品として認められないために商標を登録できるケースがあります。
2.商標登録出願書類を作成する
登録したい商標がすでに登録されている商標と類似していないこと、区分を確認した後は、商標登録出願書類を知的財産相談・支援ポータルサイトから入手し、作成します。また、出願に必要な料金として3,400円+(区分数×8,600円)を支払う必要があります。
特許庁へ出願する方法として、インターネットによる電子出願(オンライン出願)と書類出願の、2種類のやり方があります。
電子出願を行うためには電子証明書の購入や住民基本台帳カードなどの事前準備が必要となります。
一方で書類出願では、さらに電子化手数料が発生します。こちらは出願後に送られる払込用紙を使って支払うこととなります。手数料は出願1件につき1,200円+(ページ数×700円)となるため、書類が1枚の場合の額は1,900円です。出願日から30日以内に払い込まなかった場合、出願そのものが取り消されてしまうため注意しなければいけません。
その後は審査を待つことになりますが、最短でも半年ほどかかるともいわれています。
以上のように、商標登録には多くの時間や労力が必要となります。そのため、商標登録には特許事務所に相談することが一般的です。専門知識を持った特許事務所の確認があれば、出願時の不備を防ぐことができます。
しかし相談をするためには、当然ながら出願料とは別に費用が発生します。それぞれのメリットとデメリットを踏まえ、自分に適した方法を検討するのがよいでしょう。
大切な店名を失わないために。
愛着を持って決めた店名は、誰しもが失いたくないもの。しかし、もしも商標権の侵害をしていた際、失ってしまうのは店名だけではありません。それまでに獲得したお客様や評判、信頼がすべて失ってなってしまうのです。
「うちは大丈夫」とおざなりにするのではなく、店舗と信頼を守るためにも今一度商標登録を検討してみてはいかがでしょうか。