2015年6月24日の風営法改正によって、風俗営業から“ダンス”が除外され、クラブは深夜0時以降でも営業することができるようになりました。(全面施行は2016年6月23日より)
この改正を受け、SNSでは「規制緩和を勝ち取った!」というポジティブなムードが拡散されていましたが、この法改正により、深夜イベントを行うライブハウスやカフェも、クラブと同様の営業許可を得なければならなくなったことを、ご存じでしょうか。
ライブハウスやカフェを運営されている人の中には、風営法改正に関する報道を見て、「別に大音量で音楽をかけて踊らせているわけじゃないし……」と考えている方も多いかもしれません。が、それは間違いです。
今回はライブハウスやカフェを運営されている方や、開業を考えている方に向けて、あらためて知っておくべき風営法改正のポイントをお伝えします。
深夜営業をするためには、新たな許可の取得が必要!
深夜営業するクラブなどは、今回の法改正によって新しく定められた「特定遊興飲食店営業」の許可を、各都道府県の公安委員会から取得することが求められています。この手続きを踏むことで、初めて深夜0時以降の営業が可能になるのです。
では「特定遊興飲食店」とは、どのような店舗のことを指すのでしょうか。「特定遊興飲食店営業のセルフチェック(警察庁)」というWebサイトでは、次のように定義されています。
「ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客に酒類を提供して営むものに限る。)で、午前6時後翌日の午前0時前の時間 においてのみ営むもの以外のもの(風俗営業に該当するものを除く。)」
つまり、午前0時から6時の間に、客にお酒と“遊興(ゆうきょう)”を提供する店舗は、すべてこの「特定遊興飲食店」にあたることになるのです。
“遊興”とは、具体的にどのような行為?
ここで問題となるのは、“遊興”という言葉が具体的にどのような行為を指すのかということ。先述した「特定遊興飲食店営業のセルフチェック」によれば、“不特定の客にショー、ダンス、演芸その他の興行等を見せる行為”や、“不特定の客に歌手がその場で歌う歌、バンドの生演奏等を聴かせる行為”が“遊興”にあたるとされています。
つまり、ライブハウスやカフェで、深夜0時以降、お客さんにお酒を出しつつ、ミュージシャンのライブパフォーマンスやDJプレイ、トークショーなどを提供する場合は、クラブと同様、この「特定遊興飲食店営業」の許可を取得している必要があるのです。
「特定遊興飲食店営業」の許可を取得するための条件
では「特定遊興飲食店営業」の許可を取得するための条件はどのようなものがあるのでしょうか。主には以下の3点が挙げられます。
①各都道府県にて告示された営業所設置許容地域内にあること
②客室は1室33㎡以上であること
③営業時間内の店内の照度が10ルクス以上であること
最もハードルが高いのは、①の“営業所設置許容地域内”にあることです。東京都における営業所設置許容地域を定めた「特定遊興飲食店営業の営業所設置許容地域の告示地域1、同2」によれば、現在指定されている地域は決して広くなく、六本木や新宿などの繁華街が中心です。
たとえば若者が多く集う渋谷区でも、住居が集合している富ヶ谷などの地区には深夜営業が可能な店舗を作ることはできません。また自治体がこの“営業所設置許容地域”そのものを設定しなければ、その県(都・府)内には、そうしたお店を一切作ることができなくなってしまうのです。
また、小規模な店舗での深夜営業を考えている方にとっては、②の33㎡以上というフロア面積も(改正前の風営法で定められていた66㎡からは随分緩和されたとはいえ)ハードルとなるでしょう。
③の10ルクスとは、映画館で明かりが付いているとき程度の明るさとなります。ライブハウスとしてはかなり明るい状況ですが、遊興のためのスペースと飲食スペースが分かれている場合は、飲食スペースでの測定が認められているので、店内のレイアウトなどを工夫すれば対応できそうです。
音楽を楽しめる場を台無しにしないために
「特定遊興飲食店営業」の許可を取得するためには、さまざまなハードルが存在します。現状、グレーゾーンのまま深夜営業を続けている方もいるかもしれませんが、もし無許可での営業が発覚した場合、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金が科せられます(併科されることもあります)。ひいては、せっかく作り上げた音楽を楽しむための場を手放すことにもなりかねません。
アーティストとオーディエンスが共に長い時間を過ごすオールナイト・イベント。終盤の朝方に訪れる場内の一体感は、ほかでは得られないもの。そんなせっかくの貴重な体験を守るための取り組みはしっかりと行うべきです。
これから深夜営業も見据えたライブハウスやカフェを作ろうという方は、本稿を参考に現行の風営法を理解し、アーティストやオーディエンスが安心して音楽を楽しめる環境を提供する義務があるのではないでしょうか。