飲食店を運営するうえで、衛生管理は特に気を付けなければならない事柄です。もしも衛生管理が不十分なことから自分の店舗で食中毒が発生してしまえば、それまでに培った評判を一気に失ってしまうことでしょう。
食中毒の多くは夏場に発生しますが、冬場はノロウイルスが大流行する季節です。厚生労働省のデータによれば、1年を通して発生するノロウイルスのピークは12月から翌年1月。まさにこれからの時期、注意が必要となるのです。
今回は、そんなノロウイルスの基礎知識と防止策を解説します。
ノロウイルスってどんなもの?症状や特徴をチェックしよう
食中毒は大きく細菌性・ウイルス性の2種類に分けられます。高温多湿を好んで増殖する細菌性食中毒は湿気の多い梅雨の時期に発生しますが、ノロウイルスのようなウイルス性食中毒は乾燥した冬に増加する傾向が見られます。
また、気温が低い冬は人が持つ免疫機能も下がることもあり、ウイルスに感染しやすい状況となります。特にノロウイルスに体力の弱い子どもや高齢者が感染した場合、症状が重くなることも少なくありません。
ノロウイルスが冬に流行する原因のひとつとして、この時期に旬を迎える牡蠣も大きく関わっています。牡蠣そのものがノロウイルスを保持しているのではなく、牡蠣をはじめとする二枚貝がプランクトンとウイルスを含んだ海水を取り込む点に原因があるとされています。
アサリやシジミなどもこの二枚貝に含まれますが、これらは加熱して食べることが当たり前になっています。一方で牡蠣は生の状態でも食べることが多いため、知らず知らずのうちに生牡蠣が原因でノロウイルスに感染していた……というケースも珍しくないのです。
ノロウイルスの症状
ノロウイルスに感染し、発症するまでの潜伏期間はおよそ24時間から48時間。嘔吐、下痢、腹痛、微熱が主な症状であり、1日〜2日ほど続きます。感染者の看病をした人が二次感染することも多く、爆発的に感染者が広がることも……。だからこそ、的確な予防をしておくことが大切です。
明日から早速実施したい、ノロウイルス予防策5つ
ノロウイルスが流行する前から、しっかりと以下のような予防対策しておくことをこころがけましょう。
1.徹底した手洗い
ノロウイルスをはじめ、さまざまな感染症の予防の基本といえば「手洗い」です。調理を行う前や食事の前、トイレに行った後は必ず手洗いをすることはもちろんですが、ノロウイルスはとても小さなウイルスのため、簡単な手洗いでは落としきることができません。指先や爪の中は爪ブラシを使って念入りに洗う、常に爪を短く切っておく、指輪を外してから洗うといった細かな点にも注意しましょう。
なお、消毒用エタノールは石けんと水を使った手洗いの代用にはなりませんが、すぐに石けんによる手洗いができないような場合にはあくまでも補助として用いることはできます。
手を洗った後は清潔なタオルか、ペーパータオルで手を拭きましょう。
2.スタッフの健康管理
店舗のスタッフの健康管理を徹底することも大切です。
感染していたとしても免疫力が強ければ症状が見られないほか、軽い頭痛から「ただの風邪だから休めば治る」と思っていたらどんどん症状が悪化した……ということも起こります。少しでも体調が悪いと感じたら病院で検査を受け、もしも感染していることが明らかになったら完治するまで出勤を避けるようにしましょう。
3.調理器具の消毒
さまざまな食材に触れる調理器具は十分に消毒しておきましょう。まな板や包丁、へら、食器、ふきん、タオルなどは85℃以上の高熱を60秒以上加えることで、ウイルスの活動を防ぐことができます。特に包丁は柄と刃の間部分に食材のカスが溜まりやすいため、細かなところまで徹底的に行うことが重要です。
ノロウイルスが発生しやすい二枚貝を調理する際には、まな板や包丁など専用の調理器具を用意するか、使用するたびに洗浄、加熱消毒することが求められます。
また、サラダや和え物、刺身を盛り付ける際には使い捨ての手袋を着用するほか、箸やトングを使った後にしっかりと消毒を行い、同じものを使い回すことは絶対に避けましょう。過去、素手で調理作業を行ったことが原因でノロウイルスが多くの人に拡大してしまった事例もあります。
4.調理時の加熱処理
加熱処理をすることは、ノロウイルスの活性を失わせるための有効な手段です。特に二枚貝を調理する場合は中心部に85℃〜90℃の熱を、90秒以上加えることを徹底しましょう。
5.店舗内の消毒
食品のほか、店舗内の消毒も徹底したいポイントです。ドアノブやテーブル、トイレの便座や水洗レバーなど不特定多数の人が触れる場所は次亜鉛素酸ナトリウムが含まれる洗剤を使って消毒するようにしましょう。
ノロウイルスの予防はもちろん、感染拡大を防ごう
ノロウイルスは恐ろしい症状を引き起こすだけでなく、感染力が非常に強いウイルスです。店舗はノロウイルスを発生させないことはもちろん、感染の可能性をなくすことも求められています。
まずは店舗でできる対策をスタッフ間で共有し、絶対に感染を防げるように心がけましょう。