お客様を接客するうえで避けて通れないのが、“電話対応”。「接客には慣れていても、電話対応は苦手……」、「正しく電話対応できているか、自信がない」という人は多いのではないでしょうか。
経営者の方も、「接客には力を入れているけれど、電話対応はスタッフ各自に任せている」人はいるでしょう。しかし、スタッフ全員が電話対応の基本を身につけておくことは、お店を経営する上で、必須条件。特に、はじめて働くスタッフには、電話の取り方をはじめとする基本中の基本から教えなければなりません。
今回は、最低限でも押さえておきたい電話対応のマナーを徹底解説。スタッフ全体のマニュアルとして使うのもおすすめです。
まずは電話対応のマナーと基本を知ろう。
「電話対応は、お店の印象を左右する」といっても過言ではないほど、とても大切なスキルです。電話対応がしっかりできていれば、お客様はきちんと教育が行き届いたお店だと感じ、好印象を与えられます。逆に、感じの悪い対応だと、お客様を不快にさせてしまい、失客に繋がってしまうことも……。電話対応の基本とマナーは、スタッフ全員がしっかりと身につけておく必要があります。
電話は3コール以内にとる
ビジネスの場面では、受けたお電話を3コール以内にとるのが基本。もしも3コール以上待たせしてしまったのなら、「大変お待たせいたしました。○○(店名や会社名)でございます」と、先にお詫びの言葉を添えましょう。
明るい声で、ゆっくり話す
表情や態度が見えない電話は、あなたの”声”でお店の印象が決まってしまいます。電話対応をする時は、普段話す声より少しだけ高めで、明るくハキハキと話すのがコツ。
緊張していると、自分でも知らず知らずのうちに話すスピードが速くなってしまいがち。直接話すよりも聞き取りにくいことが多い電話では、早口だとさらに聞き取りにくくなってしまいます。だからこそ、普段の会話よりも少し余裕をもって、ていねいな話し方をすることを心がけましょう。相手の聞き間違いも減り、トラブルを回避できます。
重要な内容は必ずメモをとり、復唱する
名前や連絡先、そして来店時間や人数……。お客様から伝えられた情報は、メモを取っておくことを忘れずに。そのためにも、電話がかかってきてから焦ることのないよう、受話器の近くにメモ帳と筆記用具を常に準備しておきましょう。
そして電話の最後には、お客様からお伝えいただいた内容を必ず復唱し、間違いがないか確認します。最後には「ご来店、お待ちしております。ありがとうございました」と感謝の気持ちを付け加えると好感度アップ。
ここで注意しておきたいポイントは、こちら側から電話を切らないこと。お客様が先に電話を切るのを待ってから、受話器をおろします。
こちらから電話をかけるときの注意点
予約の確認など、こちらから電話をかけるケースもあるはず。そんな時には、どんなことに注意すればいいのでしょうか。
仕事中や、夜遅い時間帯は避ける
大前提として、電話をかける時間帯には注意が必要です。できるだけ相手の状況を配慮して電話をかける必要があります。
平日の日中など、お客様が仕事中であろう時間帯に電話をかけてしまえば、「忙しいのに!」と迷惑に思われることでしょう。かといって、早朝や深夜に電話をかけるのは、ご迷惑なのでNGです。
お客様にお電話をするのに最適な時間帯は、仕事が終わる方も多い19時から21時ごろ。飲食店にとっては、1番忙しい時間帯ではありますが、他のスタッフと連携してお客様が電話に出られる時間帯に電話連絡を済ませたいところ。
まずは店名と名前を伝える
電話をかけたら、「わたくし、○○(店名)の■■(名前)と申します」と先に伝えるのが基本。続いて「今お時間よろしいですか?」と相手の状況を確認してから、話を進めましょう。
要点を簡潔に述べる
要領を得ない内容をダラダラとしゃべるのは、お客様の時間を奪ってしまうことと同じ。電話をかける前には、話す内容の要点をあらかじめメモしておき、それに沿って簡潔に伝えることが求められています。
店舗にかかってくる電話のパターンを知っておこう
お店にはお客様からの問い合わせや予約の電話の他にも、取引先の業者からの電話、営業電話といった電話がかかってきます。かかってくる電話にもパターンがあるため、そのパターンごとにマニュアルを作っておけば、スムーズに対応できます。電話を受けたスタッフによって対応内容にばらつきがないようにしておきましょう。
ここでは、それぞれの電話の種類と、注意すべき対応のポイントをお伝えします。
【お客様からの電話】
▼ 予約
1番多くかかってくるのは、お客様からの予約電話。あらかじめ予約に必要な情報(来店日や時間、お客様の電話番号などの連絡先、予約人数など)をまとめておき、聞き忘れがないようにしましょう。お店に予約フォームがある場合、電話を受けながら書いてしまえば記入漏れもありません。
▼ お店へのお問い合わせ
営業時間やメニューの詳細、食品アレルギーやバリアフリーの確認、誕生日や結婚記念日などのサプライズ演出の相談……。皆さんも実感しているように、お店にはさまざまなお問い合わせの電話がかかってくるもの。
お問い合わせに関してスタッフそれぞれの対応内容が違うと、「詳細を説明できる人」を探す必要が生じます。そんな二度手間を防ぐためにも、いただくであろうお問い合わせ内容を想定しておき、全体で対応を決めておくのがおすすめです。
【クレーム対応】
電話対応で避けて通れない、「クレーム対応」。「あんまりクレームの電話はとりたくない」と思う人も多いかもしれませんが、誠意のある対応ができれば、逆にお店のファンになってもらえることもあるのです。
クレーム対応で最も大切なのは、「聞くこと」。お客様は、少なからず自店のサービスで不快に思い、怒りを感じたために電話をかけています。
まずは、「ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ありません」と謝罪をしたうえで、お客様の話をしっかり聞きましょう。お客様が何に対して怒りを感じているのかを正しく把握することで、その後の対処もしやすくなります。
電話を受けた本人が対処できる内容であれば問題ありませんが、自分では解決するのが難しいと感じた場合には、すぐに店長や経営者などの責任者に繋ぐよう、スタッフに指示しておきましょう。
責任者が不在だったり、その場ですぐに回答できない場合は、お客様の連絡先を聞き、折り返し電話します。当然ながら、責任者が折り返しの電話をかけたとき、再度お客様にクレームの内容をお聞きすることがないよう、必ずクレーム内容をメモにとって共有しておきましょう。
最後は必ず「ご指摘をいただき、ありがとうございました」と、お礼の気持ちを伝えます。
クレームにもパターンがあるため、内容によってどう対応するか、スタッフ全体で話し合い、共有しておくといいでしょう。
【業者からの電話】
仕入や備品の注文など、取引先の業者から電話がかかってくることもあります。まずは電話の内容を聞き、担当者につなぎましょう。担当者が不在の場合は詳細を聞き、内容を担当者に間違いなく伝えるようにします。取引先の業者リストを作っておくと、スタッフ同士での共有もしやすくなり便利です。
【営業の電話】
商品やサービスを売りたい・紹介したいという営業(セールス)電話がかかってくることもしばしば。営業電話はすぐに断ってしまうという人もいるかもしれませんが、相手はお店のことを調べて営業をしています。思いがけず、有益な情報に出会えるかもしれません。まずは内容を聞いてから、担当者につなぎましょう。
このままテンプレートで使える!困った時のフレーズ集。
電話対応に苦手意識を持つ人も、”おきまりのフレーズ”をいくつか知っておくだけでスムーズに対応できるようになります。ぜひ、このフレーズ集を活用してください。
▼ 相手の声が小さい場合
お客様の声が小さく、聞き取りづらい時には「申し訳ございません、少しお電話が遠いようでございます」、「電波の調子が悪いようです」とお伝えしましょう。
「聞こえません」、「もう少し大きい声で話してください」と伝えるのはNG。お客様自身が悪いのではなく、機械の不調であることを伝えると、お客様の機嫌を損ねずに話を進めることができます。
▼ 忙しい時に電話がかかってきた場合
言うまでもありませんが、お店の混み合う時間帯にかかってきた電話に、「今忙しいので、かけ直してください」と伝えてはいけません。「忙しい」ということは、”あなたより大切なことをしています”と言っているようなもの。そんな時は「少し取り込んでおりまして、満足のいく電話対応ができないため、後ほど折り返しのお電話をさせてください」とお伝えするのが最適です。
▼ 間違い電話
間違い電話がかかってきたとき、「間違っていませんか?」と、率直に相手を非難する言い方はしていませんか?間違い電話には「私どもは○○と申します。お手数ですが、もう一度お電話番号をご確認いただけますか?」とやんわり伝えましょう。
実はNG。間違った表現を知っておこう。
あなたが普段何気なく使っているその表現は、実は間違っているかもしれません。ここでは、正しい表現を使えているかチェックしましょう。
▼ お休みを頂戴しています。
「頂戴する」は”もらう”の謙譲語。電話をかけてきたお客様が直接お休みをくれたわけではないため、この表現は間違いです。「あいにく休んでおります」、「休暇を取っております」などが正しいフレーズです。
▼ お名前を頂戴できますか?
上記でも述べたように、「頂戴する」は”もらう”の謙譲語。相手の名前は、もらうことなんてできません。「名前を教えて欲しい」、「名前を聞きたい」と相手に伝えるときの正しい表現は「失礼ですが、お名前をうかがってもよろしいでしょうか」です。
▼ そうですか
日常会話でもよく使われる「そうですか」は、お店のスタッフや上司に使うのは問題ありませんが、お客様に対しては不適切。お客様には「左様でございますか」とお伝えするようにしましょう。
▼ ○○様でございますね
4つの問題の中で、最も間違って使われていそうな表現。あなたは正しく使えていたでしょうか?
「○○でございます」という表現は、”です””ます”の丁寧語であり、尊敬語ではないので相手の名前につけるのは間違いです。尊敬語の「○○様でいらっしゃいますね」が正しい表現になります。
電話対応も「接客」の一部
電話は、対応の仕方ひとつでお店の印象が左右される大切な要素。お互いの顔が見えない「電話」だからこそ、気配りや配慮をもとにていねいな受け答えをすることが重要です。
基本をおさえて正しく対応できれば、お客様はそのお店に対して良い印象を持ち、集客に繋がります。マニュアル化した電話対応は店内で共有し、スタッフの誰であっても満足のいく対応ができるレベルにしておきましょう。ぜひ、この記事もマニュアルのひとつとして活用してみてくださいね。