緊急事態宣言の解除に伴い、新型コロナウイルスの第2波が懸念される中で本格的な経済活動が再開されました。ソーシャルディスタンスの確保など、お客様に安心して来店してもらうために新型コロナウイルスの対策に効果的な方法を導入したいと考える飲食店は多いでしょう。
こちらでは、改めてソーシャルディスタンスの定義を再確認しながら、感染拡大防止策としての具体的な営業事例をご紹介していきます。
ソーシャルディスタンスとは
新型コロナウイルスは感染しても無症状の人もいることから、知らないうちにうつす・うつされるといったことが起こり得ます。互いに新型コロナウイルスに感染させないことが感染拡大防止につながること、感染リスクを低くするのに人と人との距離をとることが大切とされることから、“社会的距離”を意味する「ソーシャルディスタンス」の確保が訴えられるようになりました。
新型コロナウイルスはくしゃみや咳などの飛沫が感染経路の一つとなります。くしゃみは3m、咳は2m飛ぶと言われていることから、厚生労働省ではソーシャルディスタンスの確保として2m(互いに手を伸ばして届くくらいの距離)、最低でも1mは人との距離をとることを勧めています。
また、店内ではソーシャルディスタンスの確保と共に、“三密”を避けるための工夫も求められます。三密とは「密閉」「密集」「密接」のことで、「密閉」は窓がないなどで換気できない場所。「密集」は人が多く、または、近い距離で集まる場所。「密接」は互いに手の届く距離で会話や運動などを行う場所のことを指します。
例えば、テーブルや椅子の間隔を空けたり、使用禁止の札を置いたりすることで店内での密集・密接が発生しにくくなります。また、出入り口を開けたままにしておくことで、換気ができて密閉対策にもつながります。そのほか、テラス席を設置できる屋外スペースがある場合は、利用することで店内よりも三密を避けやすくなります。
感染拡大防止のための営業事例
飲食店でのソーシャルディスタンスを意識した新型コロナウイルス対策には、お客様同士、また、お客様と店員との接触を少なくすることがポイントです。さらに店内が“三密”にならないよう注意することに加え、衛生管理や消毒を徹底することも感染拡大防止に欠かせません。ここからは具体的な営業事例を見ていきましょう。
ぬいぐるみとの相席でソーシャルディスタンスを確保
画像出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000038159.html
店内のソーシャルディスタンスをとる方法の1つに、テーブルや椅子を使えないようにすることがあります。しかし、空席があることで店内が寂しい印象になると感じる方もいるでしょう。また、複数名で来店してもお客様同士の距離が遠くなることで、お客様の中にも同伴者と物理的な距離だけではなく、心の距離も遠くなったと感じてしまう方もいるかもしれません。
店内が寂しい印象にならず、お客様に楽しく過ごしてもらうソーシャルディスタンスの確保方法として、伊豆シャボテン動物公園「森の動物レストランGIBBONTEI(ギボン亭)」の事例が参考になります。
▲伊豆シャボテン動物公園「森のどうぶつレストランGIBBOTEI」
「森の動物レストランGIBBONTEI」では、2018年春のリニューアル時からお客様に店内での時間を楽しんでもらうため、カピバラのぬいぐるみをお客様と相席しているようにテーブルに配置していましたが、新型コロナウイルスの流行を機に感染拡大防止のため施策として、座席のレイアウト変更とあわせ、ぬいぐるみの配置も変更し、カピバラやレッサーパンダたちとの相席を楽しみながらソーシャルディスタンスを確保できるようにしました。
さらに、レストラン出入り口の手指消毒液の設置や、お客様が入れ替わる度にテーブルと椅子、ぬいぐるみのアルコール消毒など、安心して店内で過ごせる取り組みを実施しています。
アクリルパーテーション設置による飛沫感染防止
画像出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000058660.html
緊急事態宣言の解除をきっかけに、複数名で集まった食事を避けていたお客様も今後増加することが想定されます。面積が足りず、物理的な距離を確保することが難しい場合は、株式会社engineと株式会社エフ広告共同による「新型コロナウイルス感染防止対策サポート事業」が参考となります。
▲カウンタータイプのアクリルパーテーション
同社では、透明なアクリルパーテーションを店舗に設置することで、空間デザインや機能の品質を落とすことなく収容客数を維持し、低コストでこれまで通り営業を継続するための施策を提案しています。カウンタータイプのパーテーションであれば、接客時の飛沫感染防止にも役立つでしょう。
衛生管理・消毒による感染対策の徹底
画像出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000049106.html
衛生管理と消毒の徹底も感染防止のために欠かせません。こちらでは効果的な事例として、2020年6月1日より営業を再開した長野県「親湯温泉」が導入した独自の衛生管理・消毒プログラムをご紹介します。本プログラムを構成する3つの視点から、飲食店でも取り入れたい施策をそれぞれ見ていきましょう。
【1】「施設の衛生管理」
・アルコール消毒の設置(全客室、全パブリックスペース) ・深夜及びチェックアウト時のオゾン殺菌機を使った殺菌(全パブリックスペース、調理室) ・接触感染リスクが高い箇所のアルコール消毒 ・大浴場、レストラン、などの全パブリックスペース清掃・消毒・高換気サイクル ・外部機関による衛生監査 ・全室禁煙、法に基づく喫煙室設置 ・調理室における、食品と施設衛生管理の徹底 ・食品衛生のHACCP(危害要因分析に基づく必須管理点)の導入 ・納入食材及び他納入物の消毒 |
【2】「人からの感染防止」
・社員の毎日の検温及び体調チェック、記録 ・出勤時、勤務中のうがい、手洗い、アルコール消毒の徹底 ・毎月の検便検査、ノロウイルス検査(11月〜3月) ・インフルエンザ予防注射 ・清掃時の手袋着用 ・調理及び提供時の手袋 ・フェイスシールド着用 ・個室でコース料理形式の料理提供 ・ランチサービスの提供場所選択 ・ソーシャルディスタンス監視 ・全スタッフ常時マスク着用 ・チェックイン時のお客様に対する体調ヒアリング ・館内移動時、お客様へのマスク着用願い ・収容人数に対して50%制限 ・パルスオキシメーター(血中酸素濃度測定器)貸出 ・体調不良のお客様が出た場合は、隔離協力を頂き保健所の指導を仰ぐ ・送迎バス等でのソーシャルディスタンス措置 ・乗車時、全お客様へのアルコール消毒、マスク着用願い ・全納入業者へのマスク着用及び手袋着用願い ・浴室内、エレベータ内での会話自粛願い |
【3】「衛生管理トレーニング」
・衛生消毒プログラムの啓蒙教育 ・手洗い講習 ・外部による衛生管理講習 ・調理室、提供者への衛生管理マニュアル徹底 ・8つの過程に分けた調理室業務衛生マニュアル(1作業前、2食品の検収、保管 3下処理 4原材料等の保管、管理 5調理 6盛り付け 7施設、設備の衛生 8従事者の管理) ・社員評価項目に衛生管理理解度、実施度を導入 |
▲非接触体温計を使いお客様の体温を測る様子
【1】の中で飲食店でも導入したいものとして、多くの人が触れて接触感染のリスクが高い出入り口の手すり・テーブルや椅子などのこまめなアルコール消毒、HACCP(ハサップ)に基づく衛生管理の徹底などが挙げられます。
【2】の中では、従業員の毎日の検温・体調チェックと記録、出勤時と勤務中の手洗い・うがい・アルコール消毒の徹底、調理と料理提供時の手袋とマスク・フェイスシールドの着用、料理の提供形式の変更(ビュッフェスタイルからコース形式にするなど)、納入業者へのマスクと手袋の着用のお願いなど。
【3】の中では、衛生管理・手洗い・消毒についての講習の実施、HACCPに基づく衛生管理を全従業員が実行できるための衛生管理システムのマニュアル化などが挙げられます。
感染拡大防止は一つひとつの施策から
ソーシャルディスタンスを確保しながら営業を続けるためには、三密を回避する取り組みとあわせ、マスクや手袋の着用のほか、こまめなアルコール消毒などで飛沫や接触による感染リスクを低くすることが大切です。「三密にならないよう営業している」「衛生管理が徹底されている」といった施策の実施は、お客様の安心にもつながります。
また、メニューの閲覧と注文ができるアプリや、キャッシュレス決済などを導入することで、注文や会計のシーンでも感染防止に努めることができます。一つひとつの施策を通じて、お客様が安心して来店できる店舗運営を行いましょう。