私たちが毎日行くスーパーマーケット、スポーツジム、歯医者さんなど、いろいろな場所でBGMが流れています。音楽が流れていることにより、よりリラックスすることができ、良い雰囲気を作ることができます。
しかし、この音楽をかけるために、「著作権使用料」というものを支払わなければならないことをご存知でしょうか?支払っていないことがわかった場合、損害賠償を請求されるなどの法的措置がとられてしまいます。
2018年6月、日本音楽著作権協会(JASRAC)は、全国22都道府県の151事業者、166店舗に対して、民事調停を申し立てました。全国の飲食店や美容室などが著作権料を支払わずにBGMを流していたのに対し、著作権手続きを繰り返し求めていたものの、応じなかったことからとった行動でした。
JASRAC 『BGMを利用する美容室・飲食店など全国151事業者に対して民事調停の申し立て』
BGMに関する著作権問題、4つの事例
今後もこのような措置は考えられ、BGMの使用についてさらに管理が厳しくなることも想定されます。今回はトラブルを防ぐために知っておきたい、BGMに関する著作権問題の事例を紹介します。
事例1:喫茶店経営者の場合
喫茶店の経営を始めたAさんは、CDを使って音楽をかけました。おいしいコーヒーと音楽……お店にはしだいに、常連客もふえてきました。ところがその矢先、著作権管理団体より郵便が届き、そこには、著作物使用料を支払うべきとの記載がなされていました。
このCDは、Aさんがお金を払って買ってきたものです。「自分のCDを自分のお店でかけるのは自由なのではないか」と、解釈することもできます。しかし、お金を支払って買ったのは、「CD」という単なる円盤であり、そこに「収録されている音楽」ではないのです。
音楽そのものには、作曲者の著作権というものがあります。作曲者の著作権とは、その音楽を使用したい人に使用を認めたり、禁止したりできる権利です。
大半の著作権は、作曲者から依頼を受けて、JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)という団体が管理しています。よって、自分のお店で自分のCDをかける場合にも、JASRACに手続して使用料を支払う必要があるのです。音楽プレイヤーやパソコンで音楽を流す場合も同様です。
JASRACが管理する著作権の対象となる作品は、作者が存命もしくは亡くなってから50年以内のものとなります。これに該当する曲かどうかは、ウェブサイトで検索することができます。
事例2:生演奏のスナック経営者の場合
スナック経営者Bさんは、お店でピアノの生演奏をしていました。ところが、著作権料を支払わなかったことで刑事告訴されてしまったのです。
このように、著作権の対象となるのはCDなどの音源だけでなく、ライブ・カラオケ・モノマネパブなどの生演奏の場合も含まれます。カラオケは、リース会社が間に入ってJASRACとの契約をすすめています。
しかし、これはあくまでも任意であるため、契約をしていないところも多いようです。トラブルを完全に防ぎたい場合や商用での利用の場合は、手続きを済ませておく方が安心です。
事例3:バレエ教室などの発表会の場合
バレエの音楽も、作曲者が亡くなってから50年以上たったクラシック音楽以外は、著作権の対象となります。
著作権の対象となる音楽について、著作権法38条により、例外的に著作権料を支払わなくてもいいのは、営利目的ではなく、かつ入場料を取らない場合のみです。
バレエの発表会でも、入場料をとれば著作権料を支払う必要が出てきます。運営や会場を借りるために経費がかかるからと安易に有料とすることで、著作権料を支払う必要が発生し、著作権料を支払う方が高くなることもあります。
有料とする前に、まずはかかる著作権料を含めて計算をしておくことをおすすめします。老人会の発表会や、学校の定期演奏会についても同様のルールとなります。
事例4:結婚式での楽器の演奏の場合
ライブやコンサート、学校の演奏会や発表会などでも著作権料が発生してしまうのならば、結婚披露宴の席で楽器を演奏する場合にも、やはり著作権料が必要なのでしょうか?
一般的に結婚式場は、著作権管理団体とあらかじめ包括的に契約しているのが普通なので、申請や著作権料の支払いをすることなく演奏できると考えられます。
しかし、もし公民館や学校の同窓会館など、結婚式場ではない場所で披露宴を行う場合には、著作権料の支払いが必要になる場合もあります。あらかじめ確認し、あとからトラブルになることのないように対策しておきましょう。
おわりに
せっかくの開業や企画が、著作権問題で思い通りに行かなくなってしまうこともあります。基本的な知識を備えて、気持ちよくスタートしましょう。
店舗BGMとして、有線放送やテレビ、ラジオをかける場合には支払い手続きは不要です。店舗でCDを使ってBGMをかける場合、面積に応じて著作権使用料がかかりますが、JASRACへの手続きさえすれば、どんな曲を何曲かけても大丈夫です。
「お金がかかるのは嫌だから、有線や有料BGMサービスと契約せずにCDを流そう!」と考える店舗経営者の方も多いと思います。しかし、著作権料を支払わなければならないため、BGMサービスを利用したほうが安く済むことも多いのです。
自分の店舗でCDやMP3を使用している店舗経営者の方は、この機会にBGMサービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか?
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