「空の上で本当にあった心温まる物語」に学ぶ!ANA流「おせっかい文化」で一歩先行く接客をしよう

家族や友達、恋人との旅行、修学旅行、出張、留学……飛行機にはさまざまな理由で、さまざまなことを考えながら搭乗するお客様が集まります。

そんな空の上での出来事をまとめたのが、「空の上で本当にあった心温まる物語」。著者の三枝理枝子さんは、全日本空輸株式会社(ANA)に入社し、国内線・国際線チーフパーサー、VIPフライトの乗務、新人客室乗務員のインストラクターなどを務めました。退職後はANAラーニング株式会社の講師として、ANAグループだけでなくさまざまな企業で接遇やコミュニケーションの研修を行っています。

ANA接客
■空の上で本当にあった心温まる物語 (心温まる物語シリーズ)/三枝理枝子(あさ出版)

地上とは違う空の上だからこそ、搭乗から降機まで気遣わなければいけないポイントがたくさん。ANA接客では、どのような点に気をつけて、飛行機の運航を行っているのでしょうか?

今回は「空の上で本当にあった心温まる物語」で紹介されている中から、3つのストーリーをピックアップして紹介します。

お客様に注意をするときも、相手の気持ちをまず考えてから

緑茶

出張にでかける日の朝、母と喧嘩して朝ごはんを食べそびれてしまったサラリーマンの男性。搭乗後に空腹を我慢できなくなり、マナー違反だとわかりつつも離陸前に急いでお弁当を食べようとしていたそのときのことです。

”一口、二口目を口に入れた時でしょうか。
「お客様、上空に参りましたら熱い日本茶をお持ちいたします」
と、CAさんが紙コップに半分だけ入った、ぬるい日本茶を持ってきてくれました。
「離陸までにはテーブルを元の位置にお戻しください」
「あ、どうも」
さっそくいただいたぬるいお茶をグイッと飲み干し、その勢いで弁当を食べ終えました。
「注意されるのかな」と思いきや機転の利いたスマートなサービス。驚くと共に、心が温かくなりました。”
— p.58より

この男性は、ぬるめのお茶を飲み干したことで、母と喧嘩したことの胸のつかえも一緒に流してしまったような気分になり、フライトも心地よく過ごすことができたようです。

ただお客様に注意するだけなら、誰でもできること。しかし、大勢の人の前で注意を受けたお客様は、恥ずかしい思いをしてしまったり、嫌な気持ちになってしまうかもしれません。

そこでほんの少し機転をきかせてあげることで、お客様の気分を害すことなく、さりげなく注意することができます。

お願いやお詫びをするときは相手の立場に立った上できちんと理由を説明すること、そして何かをお断りするときは代替案を用意することがポイントです。

マニュアル通りもいいけれど、たまには超えたサービスも

ANA接客

ロス便のビジネスクラスを利用していた男性の体験談。離陸後すぐに眠りにつき、起きたタイミングでCAさんに声をかけられ、飲み物を持って来てくれたときのことでした。

”しばらくして、先程のCAさんが、キンキンに冷えたブラッディ・マリーとおつまみを持ってきてくれました。
「なんか、いいにおいがするぞ」
そう思いながら、グラスを取ろうとテーブルを見て、驚きました。
いつもの袋に入ったおつまみではなく、ローストしたアーモンドなどのナッツが、陶器のお皿にきれいに盛られていたのです。いいにおいの原因はローストしたナッツでした。
(中略)
冷たいものは冷たく、温かいものは温かく、当たり前のことなのでしょうが、ひと手間かけてくださったご好意に感激しました。”
— p.132より

接客はマニュアル通りに行えば、お客様の気分を大きく害するリスクも低く、そつなく対応することができます。しかし、ときにはマニュアルを超えたサービスをすることで、お客様の感動をより大きなものにすることもできるのです。

また、スタッフも自由な発想でサービスを行うことで、より働く意欲が増し、すばらしいパフォーマンスを行うことができるようになるのではないでしょうか?

常識のない接客態度はもちろんNGですが、マニュアルから一歩超えた接客をしてみてはいかがでしょうか。

お客様の情報はしっかりと覚え、共有する

ANA接客

ロンドン便のファーストクラスに乗っていた、とある外国人男性のお客様のお話です。

食事の前菜でキャビアを召し上がるとき、その男性はブリーニーと一緒に食べることを所望したものの、口に入れて10分も立たないうちに酷い蕁麻疹と吐き気、頭痛を催してしまいました。

原因は男性の持っていたそばアレルギー。ブリーニーは、原料にそば粉が含まれていたのです。しばらくすると体調は回復し、その後のフライトは快適そうに過ごしていたものの、同じ事故が起こってはいけないとアレルギーについての記載をお客様情報にしっかりと加えました

1ヶ月後、同じロンドン便に男性が乗ったときは、ブリーニーの代わりにフランスパンやトーストでキャビアを提供。男性も覚えていてくれたことを嬉しく思い、キャビアを美味しく召し上がっていたようです。

この出来事に関して、三枝さんは次のように語っています。

”「お店やホテルなどで、どんなことをしてもらえるとうれしいですか?」と聞くと、「自分のことを覚えていてくれること」という答えが多く上がります。
「いらっしゃいませ、◯◯様」
「お久しぶりです、◯◯様」
「◯◯様が苦手なニンジンをホウレンソウに交換させていただきました」
こんな声をかけていただけるだけで、その場を気持ちよく過ごすことができます。
それが顔なじみのお店の方だけでなく、ほとんど接点のない方から同じような対応をしていただけたら、なおさらでしょう。”
ー p.174-175より

よい接客をしている店舗やサービス業の人たちは、みんなそろってお客様の顔や好みなどを覚えています。特にアレルギーや持病のあるお客様は、自分の体調をわざわざ申告しなくても把握してくれていれば、安心して利用することができ、「次も利用しよう」と思うようになります。

また、自分だけが理解していればよいのではなく、仲間にもしっかり引き継ぐことが重要です。いつ、誰が対応してもお客様が満足できるよう、チーム一丸となって情報を共有し合うことが大切です。

ANAでは、毎回フライト時間の前後にお客様の情報を報告し合う時間があるようです。店舗でも、シフトの入れ替わり前後にミーティングを導入するなどし、しっかりと引き継ぐ時間を設けてみてはいかがでしょうか?

お客様の心に一歩踏み込んだ接客を!

ANAの接客には、搭乗前に失恋してしまったお客様を元気づけてあげたり、これから商談に行くお客様に印象を良くする即席レッスンをしたり、喧嘩してしまったお客様の仲裁役になったり……と、さまざまなエピソードがあります。続きはぜひ、単行本でチェックしてみてくださいね!

お客様の状況は、いつも同じとは限りません。その時々で、何を求めているのか変わってきます。お客様の心にもう一歩踏み込んで、より感動を与える接客をしてみてはいかがでしょうか?