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日本全国に120店舗以上を展開する一風堂は、空間演出にこだわった店内が魅力的な大手ラーメン店。2008年にはニューヨークに進出、現在ではロンドンやパリをはじめとする世界各国に店舗を拡大しています。そんな一風堂を運営する株式会社力の源ホールディングスの広報・販促グループの桑野洋氏(以下・桑野氏)とIT企画グループの福岡貴信氏(以下・福岡氏)に、ブランディングの秘訣やグローバル戦略、空間演出について伺いました。

◆ 一風堂が大切にしているブランドイメージ

まずは桑野氏に、一風堂が大切にしているブランドイメージや価値観についてお聞きしました。

一風堂のイメージとは

―― はじめに、一風堂のイメージについてお聞かせください。

桑野氏:「味に安心感がある」というのが、一風堂のイメージだと思っています。一風堂は多店舗展開していますが、どの店に行っても同じように美味しいラーメンが食べられるように、クオリティの担保にこだわっているからです。

一風堂には味だけでなく、空間づくりや接客にもこだわりぬく文化があります。そのため、味が美味しいのはもちろんですが「来てくれたお客さまが元気になれる空間」というイメージも大切にしながら運営しています。

一風堂が大切にしていること

―― 事業を進める上で、一風堂が大切にしていることは何でしょう。

桑野氏:「変わらないために、変わり続ける」これに尽きると思います。一風堂の味やイメージや文化はベースとして大切にしつつも、現状に満足はしたくないのです。だから、時代に沿って変わり続ける。この姿勢は一風堂のずっと変わらないマインドだと思います。

たとえば今は、日本のお客さまだけでなく、世界のお客さまにも一風堂やラーメン文化、ひいては日本食のことを知ってもらいたいと思っています。そのために、イノベーションを繰り返しながら事業を展開しています。

◆ 海外での事業戦略について

次に海外での事業戦略について、引き続き桑野氏にお聞きしました。

一風堂にとっての海外進出の重要性

―― 一風堂は現在、全世界に270店舗以上を展開し、海外進出にも力を入れていますよね。海外進出を重要視するのは、なぜでしょうか。

桑野氏:根底にあるのは、ラーメンを世界中の人たちに広めたいという想いです。ひと昔前に比べたらラーメンの知名度はかなり上がりましたが、本格的な日本食としてのラーメンは、まだまだ広がっていないと認識しています。

現時点で一風堂は15の国と地域に進出しており、日本よりも広いマーケットを海外に抱えている状態ですが、まだ道半ばです。今後も新しい店舗をどんどん世界中に広げていく予定です。

また、ラーメンの味はもちろんですが、ラーメンにまつわる文化についても世界に伝えていきたいと考えています。

今、特に私たちが注目しているのは「麺をすする」という文化です。実はあの文化にはちゃんと意味があって、ラーメンはすすった方が、香りが鼻から抜け、より深い味わいを楽しめるのです。海外ではまだ「すする」という行為が広まっていないので、一風堂では「ZUZUTTO(ズズット)」というフレーズを使い、project ZUZUTTOとして「すする喜び」を世界へ発信しています。

国ごとの文化に合わせた戦略設計

―― 日本と海外の店舗とで、戦略上で大きく異なる点はありますか。

桑野氏:ラーメンの食べ方のスタイルが国ごとに違うので、それを踏まえて戦略を立てています。

日本では、ラーメンというと20分くらいでサクッと食べて出ていくものというイメージがありますよね。でも国によっては、レストランのように1時間ほど滞在するのが普通という文化もあります。海外1号店があるニューヨークもそのひとつです。きちんとしたアラカルトメニューを用意し、アルコールも提供し、コース料理の流れのひとつとしてラーメンを提供できるような店舗スタイルにしています。

ありがたいことに行列ができることが多いので、待ち時間から楽しんでもらえるよう、待ちながら利用できるバーも用意しています。このように国ごとの文化に合わせて、日本とは違う店舗形態をとっています。

また、宗教上の理由で使用できない食材もあるので注意をしています。豚を食べられないお客さまが多い国では、豚骨以外を使用してラーメンを作っています。またその土地ならではの人気の麺料理がある場合、メニューに入れるよう工夫しますね。

国内外で共通する店舗ブランディングのこだわり

―― 一方、日本と海外の店舗の両方のブランディングについて、一貫してこだわっているポイントはありますか。

桑野氏:強く意識しているのは、清潔感のあるおしゃれなお店づくりです。

一風堂が1985年にオープンするまで、ラーメン屋は汚い、臭いというイメージを持たれていました。そんなイメージを払拭するために創業者である河原は、おしゃれな空間にジャズを流して、一風堂をオープンさせたのです。「デートの際や女性ひとりでも抵抗なく入れるような店舗」を目指したそうです。そんな河原の思いは、一風堂の原点として今もなお引き継がれています。

―― 空間演出や雰囲気は海外では変えているのでしょうか。

桑野氏:現地の人が入りやすいような設計にしています。具体的にはクイックに食べられるような店作りやダイニング形式でゆっくりお食事を楽しめる店などは変えておりますが、空間としては一風堂らしさを守っています。

その結果、海外の店舗に日本の駐在員の方が来店されたときに「日本に帰国したみたいだ」と言ってくださるケースがあります。そういう変わらない雰囲気を提供できていれば嬉しいですね。

また、日本らしさを演出するために、店舗で働くスタッフが現地の人であっても、日本語のフレーズを使ってもらうようにしています。「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」「お待たせしました」などの接客用語や「ラーメン出ます」などのスタッフ同士の掛け声を日本語にして雰囲気を演出しています。

海外進出で大変だったこと

―― 海外進出を進める上で、特に大変だった点を挙げるとすれば何でしょうか。

桑野氏:まずは食材です。日本では豚骨スープの原材料が簡単に手に入るものの、海外では入手が難しく、水も違います。受け入れやすい味付けも異なりますので、その土地に合ったメニューを考案していくのが大変でした。

あとは、日本と海外とで、仕事の進め方でも文化の違いがあります。海外進出を始めた当初、その違いを認識できていなかったので、オープン準備が予定通りに進まないことがありました。さらに当然ですが国によって法律が違うので、気をつけるべきことが変わることにも苦労しました。

これからのグローバル戦略

―― 現在どのようなグローバル戦略を描いているのかをお聞かせください。

桑野氏:これまでも、人気ブランドとコラボレーションしてオリジナルユニフォームを作成したり、日本酒を豊富に揃えたスタンディングバースタイルの「一風堂スタンド」をオープンさせたりと、日本文化を伝えるためにさまざまな戦略をとってきました。

今は全世界でサスティナブルな取り組みへの意識が高まっていますしお客さまからのご要望もあって、植物由来の原材料で作るラーメン、いわゆるプラントベースのラーメンの商品開発をしているところです。

◆ 一風堂の空間演出へのこだわり

続いて、主に国内での店舗の空間演出についてお聞きしました。

空間演出の考え方

―― 日本国内の店舗における空間演出で、特に大切にしていることは何ですか。

桑野氏:木の温もりを感じられる、落ち着くデザインの店内にすることです。モダンさは取り入れつつも、流行りのカフェっぽい雰囲気に寄りすぎることなく、元来の一風堂らしさを残すことを意識しています。

―― 空間演出は、どのように決めているのでしょうか。

桑野氏:基本的には、創業者が考えた営業方法をベースにしています。そこから時代に合わせてブラッシュアップをしています。

ターゲットの考え方

―― どのような客層をイメージして設計されてますか。

桑野氏:具体的な客層のイメージは持っていません。客層は店舗によって様々だからです。

ロードサイド店舗であれば週末は家族連れのお客さまが多いですし、ビジネス街であればサラリーマンのランチタイムの需要が高いです。客層は絞らず、とにかく幅広い方々に受け入れていただきたいと思いながら方針を立てています。

―― 一風堂のコンセプトのひとつに「女性がひとりで入れるお店」というものがあります。それに向けた空間演出のポイントはありますか?

桑野氏:今では多くのお店が取り入れていますが、カバンを入れる荷物置きを比較的早く導入しました。また、お食事の際に髪が汚れないようにヘアゴムのサービスをしたり、トイレの清掃を徹底したりしています。

空間演出のこだわりと他社との差別化

―― インテリアやBGMをはじめ、一風堂は空間演出に徹底してこだわっています。空間づくりへの価値観や考え方をお聞かせください。

桑野氏:私たちは、お店を一種の舞台・劇場として捉えています。お客さまに、ラーメンを作る姿や従業員同士の掛け合いを見てもらうことが、最大の空間演出だと考えているのです。そのため、すべての店舗でオープンキッチンを採用しています。

―― 他社との差別化において、重要視しているポイントはどこですか。

桑野氏:一風堂では、これまで500種以上のラーメンを開発してきましたので、開発力やそのノウハウにおいては、圧倒的な力を持っていると自負しています。

空間演出で生まれる「笑顔」と「ありがとう」

―― 接客時には「五感をフルに活用している」とお聞きしました。

桑野氏:はい。我々従業員は、単にラーメンを提供しているのではなく、ラーメンを通して「笑顔」と「ありがとう」をお客さまに提供していると考えています。

そのため、ただラーメンを作って出すだけでなく、五感をフルに活用して、お客さまの些細な動きにも注意を払い、丁寧な接客をするように心がけているのです。マニュアル化できないような部分の接客ノウハウが、脈々と受け継がれてきています。

―― 一風堂ならではの空間演出で、印象的なエピソードがあればお聞かせください。

桑野氏:一風堂では、赤ちゃんをお連れのお客さまがご来店された際に「ダッコチェンジ」という方法でラーメンを提供しています。これは、お父さんとお母さんにタイミングをずらしてラーメンを提供するという方法で、交代でどちらかが赤ちゃんを抱っこし、どちらかが出来立てのラーメンを食べられるようにと考えました。お客さまには喜んでいただいて大変嬉しい限りです。

◆ BGMによる空間演出

空間演出を考える際には、店舗の内装、インテリア、BGMなど、さまざまな要素を考慮する必要があります。ここでは、中でもBGMに焦点をあてて、福岡氏にお話をお聞きしました。

店舗BGMは創業時より「ジャズ」を利用

―― 一風堂のBGMは、ジャズが中心だと聞いています。なぜジャズなのでしょうか。

福岡氏:創業者が「ラーメン店らしからぬ空間演出がしたい」という考えで選定したのがジャズだったからです。それがきっかけで、今も全店でジャズを流しています。

―― 各店舗の客層や時間帯によってBGMを変えていますか。

福岡氏:基本的にはアップテンポのジャズと決めているのですが、店舗によってはアイドルタイムにスローテンポのジャズを流しています。また、仕込み時間などの営業時間外には、従業員の好みのBGMを流してモチベーションを高めている店舗もあるようです。

BGMの聞こえやすさに気をつけている

―― BGMの大きさなど、音響に関して気をつけていることはありますか。

福岡氏:店舗全体にきちんとBGMが聞こえるようにしています。スピーカーは、店舗の規模にもよりますが最低でも2台は設置しています。ただしお客さまの会話の妨げにはならないよう、音量は各店舗で適宜調整しています。

◆ 新たに導入したモンスター・チャンネル

最後に、今回新たに導入した店舗BGMアプリ「モンスター・チャンネル」について、使い勝手や魅力をお聞きしました。

モンスター・チャンネルの魅力とは

―― 今回、BGMにモンスター・チャンネルを導入いただきました。なぜモンスター・チャンネルに切り替えをされたのでしょうか。

福岡氏:店舗の経営効率向上の目的で幾つかのサービスの切り替えを検討している中で、モンスター・チャンネルを見つけました。

我々が利用する「アップテンポなジャズ」のチャンネルがあり、価格が安いことが大きな魅力でした。さらに導入に工事もかからず簡単に始められるため導入することにしました。

スムーズな切り替え作業

―― 実際に導入した際は、どのような手順で切り替えを行いましたか。

福岡氏:デバイスはAmazonのFireタブレットを利用しています。Fireタブレットは、モンスター・チャンネルの利用推奨端末であったことと、タブレット端末の中でも安価であったため選びました。

以前に有線放送を利用していたため店舗にはすでにスピーカーとアンプがあったので、Fireタブレットからアンプに接続するだけで簡単に導入できました。

―― 店舗の担当者へどのような連絡をしましたか。使い方の説明や指導も行なったのでしょうか。

福岡氏:はい。元々導入していたサービスからの切り替えだったので、まずはなぜ切り替えるのかの説明を行い、手順やトラブルシューティングの方法をレクチャーすることで、スムーズに切り替えできました。

モンスター・チャンネルの使い勝手

―― 実際にモンスター・チャンネルを使用してみて、いかがですか。

福岡氏:結論として、導入して良かったと思っています。稼働も安定していますし、とても便利に使っています。

―― 最後に、よく使う機能や、便利だと感じるポイントを教えてください。

福岡氏:時間帯ごとに流すBGMを決めてセットできるスケジュール機能は役に立っています。あとは操作性がシンプルな点も便利です。アルバイトの方など、操作をよく知らない人でもすぐに使えるので助かっています。

◆ モンスター・チャンネルで最適な空間演出を

今回は一風堂のこだわりの戦略や空間演出についてお聞きしました。

店舗のBGMを「ジャズ」にすることで、従来からのラーメン店のイメージを刷新した一風堂。現在その空間演出の重要な一端を担っているのが、店舗BGMアプリ「モンスター・チャンネル」です。

BGMは、空間イメージを大きく変えるものです。
モンスター・チャンネルを導入して、最適な空間演出を目指しませんか。

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magazine 編集部

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店舗BGMアプリ「モンスター・チャンネル」が運営する店舗運営情報magazineの編集責任者。