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店舗開店時に、まず考える「コンセプト」。

ライバルの多い飲食業界では、他にはない独自のコンセプト選定が、時に大きな集客効果を発揮することがあります。

渋谷駅より徒歩5分、多くの人が行き交うファイヤー通りに店を構えるのが、インタビューを受けていただいた「THE RALLY TABLE」です。

THE RALLY TABLEは、卓球とレストランを複合させた日本初の卓球レストラン。「卓球×飲食」と聞くと、スポーツバーを連想しがちですが、THE RALLY TABLEでは妥協のないイタリアンと一緒に、あらゆるシーンで卓球を感じながら楽しめます。

今回はTHE RALLY TABLEを運営する、株式会社スヴェンソンスポーツマーケティングの木原さんに、店舗コンセプトと空間作りについてお話を聞きました。

「卓球をより身近なスポーツに」
THE RALLY TABLEの提供価値とは

THE RALLY TABLE 外観

――まずはTHE RALLY TABLEの店舗概要についてお聞かせください。

木原洋輔氏(以下・木原氏):当店は2017年の6月にオープンしました。「卓球と飲食の複合」をコンセプトに、グッズ販売やスクールなどさまざまな形で卓球を楽しめるのが一番の魅力になっています。地下にスクールがあり、コーチがつくなど本格的に卓球をやりたい方、学びたい方にサービスを提供しています。レストラン(THE RALLY TABLE)は気軽に卓球を楽しみたい方、お酒を飲みながらみんなでワイワイ楽しみたい方向けにサービスを提供しています。パーティー、歓送迎会など団体での利用が多いですね。

――卓球を体験しながら飲食を楽しめるという点で、現在世の中の消費行動は「モノ消費」から「コト消費」に変化しています。THE RALLY TABLEが提供する価値は何でしょうか。

木原氏:卓球を通じた「コミュニティ形成」でしょうか。日本初の卓球レストランとして、お客様には新感覚のエンターテイメントレストランとして楽しんでいただいています。実際、卓球を通じてコミュニティの輪が広がり、団体で飲食を利用する方は増えている印象です。単なる食事という「モノ消費」よりも、卓球という「コト消費」の体験を一緒に提供しています。

飲食店の「味」を重視して勝負している方も多いのでなんとも言えない部分ではありますが、何かひとつお店に訪れたいと思うきっかけとして、卓球という共通言語を使っていただきたいという思いがあります。

――実際に、卓球と飲食を同時に楽しむお客様からは、どのようなお声を頂いていますか。

木原氏:お客様の中には元卓球経験者の方も多く、「卓球がおしゃれに進化していて嬉しい」だとか、「卓球に抱いていた暗いイメージから明るい印象に変わった」という声をよく耳にします。また、これまで卓球に挑戦したくても体育館など本格的な場所に行く勇気がなく諦めていた方も、卓球を気軽に体験できることから、飲食店を通じて卓球を始める入り口として役に立っています。

コンセプトをずらさずに、店舗運営するポイント

――卓球というコンセプトを軸に、飲食店を開業するにあたった経緯を教えてください。またなぜ卓球なのか、お聞かせください。

木原氏:当店はスヴェンソングループが運営している店舗で、グループ会社の事業に卓球のスクールや卓球用品の製造販売などを行なっています。また、卓球選手の支援等を進める中で、もっと多くの方に卓球を楽しんでもらうために、飲食店との融合を決めたんです。飲食店を通じて、これまで卓球に馴染みのなかった方にも卓球に触れ合える機会を提供するのがTHE RALLY TABLE開業の目的・背景になります。

――コンセプトの選定と同時に、飲食店として料理へのこだわりはどのように決めましたか。

木原氏:店舗開業にあたり最初に意識したのは、やはり卓球をコンセプトにしたメニュー作りです。ただ前提として、卓球と同時に食事を提供すると、スポーツバーのイメージが強くなってしまい、「ここ本当にうまいもの出るのか?」といった印象を受ける方が多くいらっしゃいました。

そのため、コンセプトはずらさずにパスタやお肉など定番のメニューはしっかり味を追求したものを提供し、まずは「飲食も楽しめる」ことを知ってもらう必要がありました。

――飲食として楽しんでもらうのに、時間はかかりませんでしたか?

木原氏:開業当初は、人が多い渋谷の真ん中で経営しているにも関わらず、ランチタイムには10数人しか来ない期間もありました。しかし、続けるうちに根付くというか、それこそスポーツバーのイメージであまり料理に期待していなかった方に「美味しい」を提供していくことで、徐々にお客様は増えていきました。

僕自身いろんなお店の立ち上げに関わっていますが、中でも卓球をコンセプトにしたものは珍しいです。ただ卓球がコンセプトと知らないで来店されるお客様もいるので、期待を裏切らない味の提供と、できるだけ卓球に触れてもらう機会は大事にしています。

ピンポンサワー

<卓球要素をメニューに加えた「ピンポンサワー」>

――「卓球」というコンセプトに縛られ、味を追求する飲食としての提供価値に影響はありませんか?

木原氏:うーん、コンセプトを常に意識してメニュー開発はしていますが、飲食店として困ったことはないですね。むしろ「飲食店」としての型は自分で作っていけばいいと思っています。例えばうちはイタリアンですが、昼にハンバーガーを提供してます。でもハンバーガーってイタリアンでもなんでもないですよね。それでもランチの客層にはしっかり刺さる点と、材料にはこだわっているので、人気のメニューになっています。

たとえ飲食店としての業態が決まっていても、その周辺環境、店舗を構える立地によっては客層が広がり流行も変わっていきます。なので、店舗も周辺環境に合わせ、提供価値を常にアップデートする必要があると思うんです。卓球というコンセプトは絶対にぶれませんが、それ以外は自分で作っていけばいい。そもそも卓球×食事という時点でお客様には何がメインなのか伝わりにくいんですよね(笑)。

よく言われるのが、「なんだよ、料理うまいじゃん」です。コンセプトが強い店舗であっても、飲食店として当たり前のことは当たり前にする。最低限のサービス提供は絶対に必要です。

――THE RALLY TABLEのアップデート方法は?

木原氏:渋谷という街の特性上、トレンドが常に変化するため、みんなが知っているものではない、少し変わった商品をエッセンスとして取り入れるようにはしています。例えば日本ではまだ流行っていませんが、世界で有名なチキンオンライスという屋台飯に、ピンポンを意識した卵を配置するなど、トレンドを意識しながらも店舗のコンセプトに合うメニューを提供しています。

もちろんイタリアンにもっと寄せることもできます。ただ、卓球をしながらその横でレストランサービスのように「ワインです(渋い声)」みたいなことをやられても違うのかなと。なので、肩肘張らずに食べられる無難なメニューに加え、シーズンごとに流行りを取り入れるといった組み合わせで工夫を続けています。

コンセプトが伝わる、空間演出へのこだわり

THE RALLY TABLE 内装

――コンセプトに合わせた空間作りも、飲食店の運営上大きなポイントになってくると思います。空間演出へのこだわりを教えてください。

木原氏:店内のオブジェや照明には、卓球を感じられるよう工夫しています。また渋谷という街自体が若くトレンドに敏感な点と、昨今のSNSを活用した集客を意識して、写真映えするようなイメージで空間作りをしています。

また、空間演出のひとつとして「店舗BGM」は重要な要素になります。通常は洋楽を流しているのですが、平日のランチの客層が、30代後半から40代の方が多いので、7~80年代のBGMを流すとハマるなあと感じています。一方、夜はライトダウンしてお酒を飲みながら楽しむ空間になるので、少し縦ノリ系のヒップホップを流したりしていますね。

――時間と客層に合わせたBGM選定が重要になりますね。

木原氏:そうですね、僕は飲食店を20年ほど経験していますが、時間と客層にマッチするBGMは店舗の業態によっても変化するので、まずは少しづつ試して適切なBGMを選定する必要があると思います。実際にお昼の忙しいピーク時にはアップテンポの曲を流したり、夜はゆるい感じの音楽を流したり、工夫しています。

ここ2年くらいは少しずつBGMを変えながら試していますけど、お客さんを見ていると、やはり客層に合わせた音楽を流した方が、「居心地の良さ」という目に見えない部分で効果が出ていると感じます。

「あの店」に行く理由

――これから開業を検討する方に向け、店舗コンセプト作りのポイントや注意点、空間演出のポイントについてお聞かせください。

木原氏:コンセプトが決まったら、まず外装が重要です。外からでも、カウンターに人が座っている様子が見えるなど、人の動きを感じられる外装作りが店舗開業の鉄則になります。

あと内装にはグリーンを取り入れるのもいいですね。ドライフラワーを入れたり。女性目線に気を配って、口コミやSNSで拡散してもらう。客層にあったBGMを取り入れるのも重要になります。

また個人店舗で多くの集客を得るには、何か一品、キー商品を用意するのも重要です。ただ一品勝負をするにしても、そのキー商品の派生商品、季節によって変化をつけるといったことが、店舗のアップデートにつながります。あとは写真が重要な時代なので、お皿ひとつ、グラスひとつでも、お客さんの目を引く見た目のこだわりは意識するべきです。

ただ写真でお店を選ぶ方って、一回きりの方が多いんですよね。料理を食べるのではなく写真を撮ることが目的なので。一方でリピートしたいお店にはお客さんが行き続ける理由が必ずあります。それがコンセプトを売りにするのか、飲食としての味を極めるのか、バランスを見極めた上で、常に「変化し続ける」ことを意識した柔軟な店舗運営が鍵になると思いますよ。

【THE RALLY TABLE】
■営業時間
11:30 – 23:30(LO.22:30 ドリンクLO.23:00)
■場所
JR渋谷駅 ハチ公口徒歩6分
東京メトロ・東急東横線 渋谷駅 13番出口より徒歩5分
〒150-0041 東京都渋谷区神南1-12-16 ASIA BUILDING 1F.B1F
https://t-4.jp/tokyo/cafeandrestaurant/

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magazine 編集部

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店舗BGMアプリ「モンスター・チャンネル」が運営する店舗運営情報magazineの編集責任者。