飲食店の空間づくりに、何よりも大切なのは「おいしい空間」にすることです。家具や装飾品にこだわったお洒落なレイアウトでも、食欲が削がれるような空間では、お客さんに満足してもらうことはできません。
人間は、視覚から得る情報に大きく依存していると言われています。視覚効果の中でも、もっとも敏感に意識するのが色彩です。
店舗の空間づくりをするときも、カラーコーディネートの基礎知識があれば、「おいしそう」「また来たい」と思わせるインテリアを実現することができます。
店舗の空間づくりに役立つ「色の効果」、ぜひ参考にしてみてください。
食空間の理想的な面積比
食事の満足度は、食空間70%、食卓25%、皿の料理5%といわれています。
カラーコーディネートも同じ。ベースカラー、サブカラー、アクセントカラーと3種類の色を意識してコーディネートしましょう。
■ベースカラー(基調色)
部屋のしつらえ、飾り物、テーブルクロス、照明 など■サブカラー(副調色)
テーブルウェア、食器類 など■アクセントカラー(強調色)
料理の盛り付け
色相・明度・彩度
カラーコーディネートに必要なことは、色の性質そのものを理解すること。もっとも重要と言われている3つの要素を、まずはしっかり把握しましょう。
1:色相
色相とは、「色の傾向」つまり色の種類・方向をあらわす属性です。ある色を見て「青」や「赤」と感じることを指します。
2:明度
明度とは、色の明るさをあらわす属性です。色は明度が高くなると白に近づき、低くなると黒に近づきます。
3:彩度
彩度とは、色の鮮やかさや強さをあらわす属性で、生命力を測る属性でもあります。新鮮な果物の彩度は高く、腐っていく果物の彩度は低くなります。
「温かみ」をうまく活用する
暖色系の色は自律神経を刺激し、消化作用を助ける効果かあるので、一般的には、食欲をそそる色は赤・橙・黄から中性色の緑まで含まれ、中でも橙が一番だとされています。逆に食欲を減退させる色は、黄緑・青・紫・灰色・黒などがあげられます。
料理そのものでなく、テーブルクロスを暖色の色にすると、よりおいしそうに見えるようです。
高級レストランなどで白いテーブルクロスを使用しているのは、「照明の効果を最大限にいかすこと」や汚れの目立ちやすい白をあえて使うことで、「きれいなテーブルで食事をしてもらうこと」を目的としているから。
白くて清潔なテーブルクロスは高級感を感じさせるだけでなく、「きれいに食べよう」と意識することで自然とマナーもよくなりそうですね。
テーブルクロスは、店内の雰囲気に大きな影響を与えます。これひとつを変えるだけでも、店内の雰囲気をガラッと変えることができます。
色の組み合わせ効果
料理を引き立てるために、もうひとつ知っておきたい色の性質は「補色」。テーブル上の料理をおいしそうに見せることも大切ですが、色と色の相性を考えなければ、逆の効果をもたらす危険があります。
そこで参考にするのが「色相環」です。色相環とは、色相同士の関係をあらわしたもので、色の連続した変化をあらわしています。
色が円形状に並べられたこの色相環は、離れている色ほど関係性が低いという性質があります。近い位置にある色同士は調和し、離れた位置にある色同士は不調和をおこします。
しかし、飲食店では、この不調和となる色の組み合わせ=補色が重要となるのです。
例えば、赤身の刺し身に青葉を添えるとおいしそうに見えるのは、赤と緑は「補色」の関係で、お互いの色を引き立たせる働きがあるからです。
照明は白熱灯がオススメ
店内のカラーコーディネートを考えるとき、家具やリネン類だけでなく、照明までトータルで意識することが大切。
一般的に飲食店では、白熱灯と蛍光灯が使われています。それぞれ発する光や照らすものの色の見え方が異なりますが、白く寒々しい光を発する蛍光灯よりも、赤っぽく暖かい光を出す白熱灯がおすすめです。
また、白熱灯は蛍光灯に比べ、色を忠実に見せてくれます。特に、食欲を駆り立てる赤が鮮やかに見え、さらに陰影がはっきりするため、立体感が出て、料理をより一層おいしそうに見せることができます。
▼ 参考例(左:白熱灯/右:蛍光灯)
「目で味わい、舌で愛でる」空間を実現させましょう
「人は見ためが9割」と言いますが、料理も同じではないでしょうか。日本料理に「五味・五感・五色・五法」という言葉があるように、日本人には感覚すべてを使って料理を楽しむ習慣が根付いています。
お金を払って来てくれるお客さんに、おいしく召し上がっていただけるよう、視覚からもおいしさを最大限に引き出しましょう!
料理そのものの見ためをおいしそうに見せるためにも、まずは空間デザインを見直すことが大切です。カラーコーディネートの基本知識を使って、店内の空間を見直してみませんか?