2015年の流行語大賞にもなった「爆買い」。全国の観光地や東京の繁華街で中国人観光客の姿を見かけることは今では当たり前の光景となりました。中国経済の変調が予見される中でも、まだまだその「爆買い」パワーは健在のようです。
さて、昨年は「買い物」を中心に話題になった中国人観光客の消費傾向でしたが、今後はその傾向が「飲食」と「美容」に向かうと予想されています。皆さんのお店では中国人観光客用の接客、告知などのインバウンド対策を行っていますか?
2016年は2月7日から13日が春節(旧正月)の長期休暇期間にあたり、中国人観光客が大挙して日本に押し寄せることが予想されています。そこで今回は、高まるインバウンド需要のチャンスに乗り遅れないための、中国人観光客のおもてなし術を紹介いたします。
中国人観光客にアピールするための基礎知識
2015年には、約1900万人もの外国人客が日本に訪れましたが、その多くは中国人観光客でした。この背景には、円安による為替効果の他に、「中国・ASEAN諸国の中間所得層の激増」「中国・ASEAN諸国からの旅行者へのビザの緩和」という事情があります。
そしてこれら外国人客は、決まって今や世界でも人気となっている「和食」の飲食店を訪れているのです。
WebマガジンFoodistが、飲食店への外国人観光客の来店頻度を調査した結果によると、外国人の来店頻度が「ほぼ毎日」と答えた飲食店が27.8%にものぼり、「週1回程度」が28.9%と、半数以上が週に1回以上の頻度で外国人観光客を迎えていることがわかりました。
ところが、外国人の集客については実に68.9%の店で「特に対策を行っていない」と答えています。外国人観光客は、お店の立て看板などでメニューを判断して店に入ることはありえません。逆に言えば、これら7割の店でもインバウンド対策を行えば、さらなる集客が見込めることを意味します。
実際に外国人観光客の集客をしている店の実施策としては、「自店ホームページの外国語対応」「外国語の看板、店外POPの設置」「外国人が見るクチコミサイト(トリップアドバイザーなど)に掲載」「外国人向け情報誌へ広告出稿」「旅行代理店、旅館・ホテル、観光案内所への営業」などがありました。
特に、急増する中国人観光客対策として、中国の旅行会社、旅行情報誌へのアピールが有効です。
「飲食業界」における中国人観光客の“トリセツ”
昨年9月に、札幌のコンビニで中国人夫婦のトラブルがありました。会計前のアイスを店内で食べた妻に店員が注意をしたところ、夫がいきなり店員に暴行を働きました。この夫は「妻が辱められてると思った」と供述しています。
中国人と接するときに、特に気を付けなければいけないことは「面子」です。そしてこれは、日本人が一般的に考える面子とはまったく異なるもので、複雑で難解なものなのです。
特に「恥をかかされた」と思うと、逆ギレや激怒も普通。さらに他の中国人の前で注意されたりすると、面子を潰された、と意地になってしまいます。札幌のコンビニ店員も、そっと陰に呼んで注意していたら、暴力沙汰にはならなかったかもしれません。
日本にやってくる中国人はほとんど日本語を話しません。そのため、挨拶やメニューなど片言でも中国語で話しかければ、相手は歓迎されていると思います。中国語のできるスタッフがいれば、店のイメージは上がり、その観光客は帰国してからPRしてくれるでしょう。
中国でも禁煙は広がっていますが、まだまだ喫煙者が多いので、中国人観光客にはタバコの喫煙場所を伝えたり、あるいは全面禁煙であることを伝えたりする必要があります。トイレの紙も中国では便器で流さないので、日本のトイレの使い方を説明する必要があります。できれば、こうした文書を絵入りで説明して渡せるようにしておくとトラブルを防げます。
「美容業界」のキーワードは“美ンバウンド”!日本のサロンが人気の秘密とは?
2016年のインバウンド消費をめぐる動向のなかでは、「美ンバウンド」が新しい流行語になりそうです。これは外国人観光客、特にアジアからの訪問客が「モノ消費」から「コト消費」へと推移している傾向があるからです。
「コト消費」とは、ラーメン作りや侍トレーニングなどの、「体験そのものの消費」のことを指しますが、中でも今後注目されているのが「美容」です。
ホットペッパービューティーアカデミーによる「インバウンド美容に関する調査」によれば、中国、台湾、韓国、香港の女性に聞いた「美容に関して憧れる国」は、フランス、韓国を抜いて日本が64%で1位となりました。
日本の美容に憧れる理由として、「化粧品・美容ブランドで素敵だと思うものがある」「原産国として表記されていると品質がよさそう」「美容の技術が進んでいる」が上位に挙げられました。日本の旅行会社ではインバウンド向けに、美容室やネイルサロンを訪れる体験ツアーを設定し人気になっています。
こうしたジャパン・ブランド人気の背景には、電化製品、自動車など、メイド・イン・ジャパンの工業製品の品質の高さ、高性能といった信頼感が、美容業界にも反映されていると考えられます。
最近では、美容整形の分野でも、「整形大国・韓国」から、日本の美容整形に注目が集まっています。これも、日本の技術への信頼がバックボーンになっているからなのです。
満足度の高い日本美容サロンの“丁寧なもてなし術
日本の美容サロンでは通常行われていることが、アジアの女性にとっては「丁寧なおもてなし」と好評です。
例えば、「仕上がりを説明するカウンセリングが丁寧」「ホットタオル、ひざ掛けクッションがあり、大切にされる」「家でのセットも丁寧にアドバイスされた」などがあります。中国でも日本人の経営するサロンは人気で予約が取れないそうです。
また、ある中国女性は「カット技術がうまい」「日本のカワイイ髪型にできるのがいい」「床に髪が落ちたらすぐ清掃するなど店内が清潔」「椅子の座り心地、マッサージ、シャンプーがとても気持ちいい」など、日本の美容サロンの対応を褒めています。
こうした傾向を踏まえ、日本の美容サロンのなかにも、中国語、英語が堪能なスタッフを配置したり、外国語パンフレットを用意したり、店の美容師向けの英会話スクールや旅行代理店と連携した体験ツアーを実施したりするなど、外国人観光客受け入れに本腰をいれているお店が増えてきています。
また、独自の試みとして、お客様に青竹セラピーを施し、ウエルカムドリンクはお香がたかれた茶室で抹茶と和菓子を提供するなど、「和」を意識した美容メニューを充実させるサロンも登場しています。店内に金屏風や茶釜、菩薩像を配置し、和インテリアで統一するなど、海外ウケのいいアイデアを内装にも活かしている点が人気のようです。
さらに、あるネイルサロンでは、お寿司、歌舞伎デザイン、富士山と桜など、ユニークなネイルで外国人の遊び心をとらえています。外国人旅行客が週に何人も訪れるそうです。また、イスラム教信者に向けたムスリム対応の美容室も登場しました。ハラル対応のシャンプーを用意し、祈祷室や方位磁石を設置し、施術は必ず女性スタッフなどの対応をしています。
まとめ
今後、少子化によって日本の人口減が進む中、インバウンド、特に中国人観光客を呼び込むことはさらに重要になってきます。そのためには、積極的に中国への情報発信が必要です。
日本の丁寧なおもてなし、ジャパン・ブランドの質の高さを評価してくれる中国人のお客様の接客においては、無意識にその面子を潰すことを避けることが重要。
2020年には東京五輪も行われ、さらに外国からの訪日客が増えることが予想されます。中国人観光客も含めたインバウンド対策として、飲食・美容業界にも海外へ向けた事業展開が迫られているのです。