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近年よく聞かれるようになった「サードウェーブ」という言葉をご存知ですか?豆の産地や栽培方法にこだわり、コーヒーの持つ可能性を最大限に引き出そうとするコーヒーショップの動きのことです。

2015年に爆発的に流行するようになったこのワードですが、果たしてこの流行の中で、一過性のカフェ・ブームにとどまらないような、地域ユーザーにとっての真のメリットは提示されているでしょうか。そこで今回、清澄白河のカフェ・ikiの代表である原瀬輝久さんに、カフェが地域のハブとなるためには何が必要なのか、「総合空間」としてのカフェ経営術についてインタビューしました。


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iki ESPRESSOのオーナーになるまで。街をプロファイルした日々

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原瀬さんは、大学卒業後、ニュージーランドに単身で渡り、現地のオープンなカフェに囲まれた生活をしているうちに、カフェ文化に魅了されていったそうです。その後、カフェやケータリング会社の経営などを経験したのち、原瀬さんはALL ESPRESSO JAPANの代表取締役に就任。清澄白河(平野)に焙煎会社を立ち上げ、それと同時期にiki Esppresso をはじめ数多くカフェのオープンをサポートすると共に焙煎豆の卸販売を始めます。

(原瀬)「当時のikiは、神奈川県の茅ヶ崎市にありました。ikiのような個人自営のお店は、コンセプトや場所が良くてもカフェビジネスとして、経営面で難しい事が多い傾向にあります。実際、茅ヶ崎のikiは、海が近いという素晴らしい立地、ローカルの人にも知られ愛されるお店となったがビジネス上課題が多かった。」

そこで原瀬さんは「経営を持続させるためには、地域の人達に必要とされるお店にならないといけない。」そう考えるようになったといいます。

(原瀬)「僕は、常に街をプロファイリングしていて、この店舗ならどのスタイルにするのか、どのようなお客様が来るのかということを、いつも考えています。ALLPRESS ESPRESSO時代からカフェを開きたいと思っていたのですが、まずは焙煎所を作るために、歩いて場所を探しました。何度もコミュニケーションをとって関係をつくることが重要だと考えているので、地元の人の声を聞いたり、地域の文化に触れたりできたのは本当に良かったです。」

焙煎所のオープンから今までカフェをオープンしたいとたくさんの方々に相談される事が増え、場所、建物、スタッフ育成等、原瀬さんはご自身の経験をもって対応しました。そうやってたくさんの相談を受ける中で、原瀬さんの中に1つの思いが芽生えたといいます。

(原瀬)「焙煎会社としてではなく、カフェのあり方としての成功を自身で示す事で、これからカフェをオープンしたいと考えている方やカフェの経営で悩んでいる方々のビジネスモデルの1つとなり、カフェ経営の見本となる空間を作る必要があると強く思ったわけです。そして更に、個人の経営者が成功できる店舗を見つけ、色々な場所で形態の違うカフェ運営を広める手助けをしていきたいとも考えています。」

焙煎会社やカフェ経営の経験を活かし、カフェ経営コンサルとして、茅ヶ崎のikiを手助けしたいと思うようになった原瀬さん。そしてその新たなロケーションとして選ばれたのが「清澄白河」。ikiは、あのブルーボトル・コーヒーがオープンする前から、清澄白河にコーヒー文化を広める先駆者となっていたのです。

 

清澄白河に生まれた、「オセアニアスタイル」の空間。

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このような経緯で、清澄白河のお客様にサードウェーブコーヒーを提供するようになった原瀬さんでしたが、最高の空間を作るためにコーヒー以外の工夫も惜しみませんでした。

ヨーロッパやシアトルなど、世界にはカフェ文化の発信地となるエリアがある中、ikiがコンセプトとして掲げているのは「オセアニアスタイル」というもの。ニュージーランドやオーストラリアを発祥の地とするこのカフェスタイルは、コーヒーだけでなくフードメニューにも力を入れ、ゆったりとした時間をお客様に楽しんでもらえることが、その大きな特徴です。

ikiの内装は、無骨なコンクリートの骨組みをウッディーでオーガニックな枠取りが飾り、春以降には一面開けっ放しになるという窓からは、ぜいたくなくらいの陽光が差し込みます。リノベーションを基調としたカフェでありながら、オセアニアの開放的な雰囲気を再現するために、当時の流行だった「インダストリアル(工業系)デザイン」の寒々しさや無機質さを回避したかったという原瀬さん。カフェの空間性に、並々ならぬこだわりを持っているのです。

(原瀬)「空間デザインを考えるときは、一つ一つのスペースをどう生かしていくのか、席の高さや並び方、外と一体化できるような造りを心がけていています。特に、お日様の位置は入念なチェックをしています。陽の光を浴びながら新聞を読んだら、気持ち良いじゃないですか。」

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清澄白河は現在、おしゃれカフェスポットとして有名になりつつありますが、実際は、現地のお客様に比べるとエリア外から来店する利用者の方が多いという状況です。その背景として、日本で「コーヒー」というと、未だに「缶コーヒー」をイメージする人の方が多いからではないかと原瀬さんは指摘します。日本には、まだまだ「カフェ文化」が根付いておらず、「カフェ」というと、リッチな雰囲気の路面店ばかりで、気軽さを感じにくい面があるかもしれません。

(原瀬)「アメリカやオーストラリアなどでは、おじさんや若いお兄ちゃんも皆、生活の一部として、カフェでコーヒーを買って飲みます。それが、めちゃくちゃ格好良くて。カフェは、いろいろな人が楽しむところなので、缶コーヒーでなく気軽にテイクアウトなどをしてカップで飲むのが理想的ですね。」

 

カフェの理想は地域に「習慣」を提供すること

 

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また、「地域の方々から愛されるカフェ」(地域に必要とされる、場所カフェ)を目指すためにも、カフェ経営は利用者とのコミュニケーションがとても大切です。サードウェーブが広まって、コーヒー自体を楽しむ環境が増えたのは良いことですが、店舗スタッフがコーヒーばかりに没入しているようでは本末転倒。そこで原瀬さんは、カフェ経営に一番大事なのは「人」ということを強調します。

(原瀬)「お客様にとって行きつけのカフェだとしても、一人でも嫌な対応をされたら、きっと行きたくなくなると思います。メニューだけでなく、接客やBGMまで含めた総合空間がカフェなのだから。そのようにお客さん一人一人との気持ちのいいコミュニケーションを通じて、カフェがライフスタイルとして地域の習慣に取り込まれたら嬉しいですね。例えば、平日は朝起きて、カフェに行って、落ち着いたら自分のダイアリーを開いて仕事の準備を整える。そこでは、スタッフもお客さんも同じテンションで「おはよう」と挨拶する、そういう世界観が作れたらカフェ経営は大成功だと思います。」

カフェは、スタッフの「趣味のお店」にするのではなく、まずお客様に喜んでもらうこと(またビジネスとして成立する事が)必要です。コーヒーが目的ではなかったお客様にも、飲んだコーヒーや食べたものが「本当に美味しかった」と感動してもらえるような、スタッフの声かけや居心地の良い空間作りは、今後も大切にしていただきたいですね!

 

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【店舗情報】
「iki ESPRESSO TOKYO」 (http://www.ikiespresso.com/

〒135-0006
東京都江東区常盤2-1-12
Tel:03-6659-4654

■営業時間
8:00-20:00

facebook:https://www.facebook.com/ikiESPRESSOTOKYO/


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magazine 編集部

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店舗BGMアプリ「モンスター・チャンネル」が運営する店舗運営情報magazineの編集責任者。