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スタジアム内のすべての店舗をキャッシュレス化した東北楽天ゴールデンイーグルス(法人名:株式会社楽天野球団)。世界の主要国から見てもキャッシュレスの普及率が低い日本において、スタジアムに「完全キャッシュレス」を導入した意図はどのようなものなのでしょうか?

今回は、楽天野球団の事業本部本部長である大石幸潔氏に、キャッシュレス化導入の流れやメリット、キャッシュレス社会を実現するために必要なことなどについて聞きました。

 


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楽天野球団がキャッシュレスを導入した理由とは?

――なぜ楽天生命パーク宮城で完全キャッシュレスを導入したのですか?

大石幸潔氏(以下・大石氏):キャッシュレス決済導入の目的は、楽天グループが持っている技術を、東北楽天ゴールデンイーグルス(以下・楽天イーグルス)というマーケットで使わせていただくことで、お客様により便利で快適なサービスの提供をすることです。導入に際しては、部分的に進めるよりも一気に変えたほうがキャッシュレス決済のメリットを最大限に活かすことができると考え、完全キャッシュレスに踏み切りました。

――導入にあたり特に気を付けたことはなんですか?

大石氏:これまで現金を使っていたお客様へのセーフティネット(安全網)作りです。事前のプロモーションや告知、サイトでの告知を打つことで、大多数のお客様に完全キャッシュレス化の意向を伝えられる道筋がつきました。

また現金をいつもお使いになっている方には電子マネー決済が一番馴染みやすいと考え、楽天Edyカードの販売と、無料レンタルサービスを実施しました。中学生以下のお子様には、年間を通してお一人様につき、1枚無料でプレゼントしています。

――キャッシュレス化に伴うコストにはどのようなものがあったのでしょうか?

大石氏:大きく3つのコストがかかっています。1つ目が導入費(投資費)です。決済端末、バーコード端末におけるPOSの開発、Edyのチャージ機を100台に増やすなどの投資コストがかかりました。2つ目が運営費で、これは現金決済をやめるためのコストです。Edyカードの無料配布や、キャッシュレスデスクの設置、ブース運営費、人件費等があります。3つ目が決済手数料ですね。これらのコストをクリアすることで、スタジアムでの完全キャッシュレス化を実現しました。

完全キャッシュレス化を行ったことでどのような変化があったのか

――キャッシュレス化によって、運営側にはどのようなメリットがありましたか?

大石氏:まだ効果が十分にでているわけではないのですが、まず目指すのは決済時のスピードアップですね。オペレーションタイムを短縮することで、お客様のストレスを軽減することが期待できます。観戦中の買い物によって、試合の重要シーンを見逃さないためにも、販売時の手間をなくすことは重要です。また、データマーケティングへの活用もメリットの一つ。今はお客様へのより良いサービス提供のため、キャッシュレスの環境に馴染んでいただく認知段階にありますが、将来的には買い物を通してお客様の嗜好に合わせた情報提供が可能です。来場時にお客様に合わせた商品情報を提供することも考えています。

――キャッシュレスの導入によって、お客様からはどのような反応がありましたか?

大石氏:もともとキャッシュレスに慣れているお客様には便利になっていただけたようですが、我々が最も注意を払っていたのは、普段キャッシュレス決済を利用していないお客様です。キャッシュレスによるスピードアップ効果やデータマーケティングによる情報提供は、もう少し後のフェーズでお客様に認識してもらうものだと考えていたので、全面キャッシュレスを導入して間もない段階では、まずはキャッシュレス決済に馴染みの薄いお客様がキャッシュレスに馴染んでいただくことに注力しました。今のところ多くのお客様はスムーズにキャッシュレス決済をご利用いただけているようでして、それは先ほど申し上げた十分に告知をしたことと、セーフティネットを用意できたことによるものだと考えています。

キャッシュレス社会を実現するために必要なこととは

――今後個人店舗も、 キャッシュレスを導入していくものと思われます。簡単に導入できるキャッシュレスの種類は何だと思いますか?

大石氏:例えばバーコード決済は、小規模店舗で最も簡単に導入できると聞いています。よって、個人オーナー店舗には最適なキャッシュレス方法だと思います。楽天ペイも、特に何かしらの機器の設置はないので、誰でも導入ができます。バーコード決済は手間がかからないため、簡単に始めることが可能です。

――日本社会のキャッシュレス普及率は20%弱というデータがありますが、 今後日本にキャッシュレスが浸透するためにはどのような取り組みが必要だと思いますか?

大石氏:最終的には、店舗側がキャッシュレスで払って欲しいと思うだけでなく、消費者がキャッシュレスで払いたいと思うようにならないと浸透しないですよね。消費者ニーズの拡大のためには、キャッシュレスの便利さを実際に使って知ってもらうことが重要だと思いますが、その中には「キャッシュレスがどこでも使える状況」というものも含まれています。現金にしても、どこでも使えるから便利なのであり、使いたいと思えるわけです。店舗側としては、様々なキャッシュレスが増える中で、お客様がキャッシュレスを使える店舗を探す手間がかからないよう、どこでも使え、様々な種類に対応し、選択肢を増やしてあげることが重要だと思います。

――楽天野球団は、日本のキャッシュレス社会実現のために、 どのようなアクションを起こす予定でしょうか?

大石氏:我々の直近のミッションは、より多くのお客様にキャッシュレス決済を使っていただくための施策を続けていくことだと思っております。施策のターゲットを「高齢者・お子さんに向けて」と決め付けるわけではなく、すべての消費者に対して、普段の生活でニーズに合わせたキャッシュレスの提供をしていきたいです。生活がより便利になるための1つの方法としてキャッシュレスを提案し、我々はそのための環境づくり、キャッシュレスに抵抗を示さないようなサポートをしていけたらと思っています。

諸外国では現金お断りのお店はあるのですが、日本ではキャッシュレスはまだ黎明期ですので、完全キャッシュレスに驚かれることもあります。そういったお客様にもスムーズにキャッシュレス決済をご利用いただくことで、キャッシュレス決済を浸透させていけるのだと信じています。ですので、現金を持っている人に配慮しないキャッシュレス化をするのではなく、現金だけを持ってきた人でもスムーズに電子決済が利用できるようなキャッシュレスの世界を作っていきたいですね。

キャッシュレス導入のカギは「選択肢を増やすこと」

――キャッシュレス導入を検討している店舗に向けて一言お願いします。

大石氏:店舗がキャッシュレス化に対応することは、流通を増やすことに効果のある取り組みだと言えます。スタジアムに一歩足を運べば、クレジットカードも楽天Edyも楽天ペイも使えるということがわかっているので、来場者のお客様はためらいなくお買い物ができるわけです。どんな店舗においても「現金以外の決済方法でも使える」ということがお客様に認知されることで、お客様の集客や、利用拡大につながると思います。

キャッシュレスの種類が多い今だからこそ、それぞれの店舗に合ったキャッシュレス決済を導入し、お客様の選択肢を増やしてあげること。それが、結果的に集客流通を増やすことにつながると考えています。

 


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magazine 編集部

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店舗BGMアプリ「モンスター・チャンネル」が運営する店舗運営情報magazineの編集責任者。