音楽配信サービスをはじめ、様々な分野でサブスクリプション型サービスが話題となっていますが、近年飲食業界でもサブスクリプションは注目されています。
今回は、飲食店がサブスクリプションを導入するメリットと注意点、導入事例を紹介します。自身の店舗で始められそうなサービスを検討する際の参考にしてみてください。
サブスクリプションとは?
サブスクリプションとは、製品やサービスを利用する度に料金を支払う代わりに、一定の「期間」に対して料金を支払うことで製品やサービスを利用できる定額制サービスのことです。「サブスク」と略されることもあり、元は「定期購読」を意味します。
音楽配信サービスSpotify、動画コンテンツのストリーミングサービスNetflixなどはサブスクリプションの事例の一種ですが、元来は定期購読を意味していることから、新聞購読は昔からあるサブスクリプションの一例といえるでしょう。
モノが多く、ECサイトで簡単に商品を購入できることになった現代では、消費者はモノを所有することよりも利用することに価値を見出す流れがあります。利用したい時にいつでも利用できるサブスクリプションは、今後の消費者のニーズに合うビジネスモデルと言えるでしょう。
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レンタルサービスとの違い
料金を支払って一定期間利用できるサービスと聞くと「レンタル」を思い浮かべる方も多いことでしょう。レンタルとサブスクリプションでは利用期間中の製品・サービスの交換可否やリピート時の扱いが異なります。
レンタルは一定期間借りることのできる製品・サービス自体に料金を支払うので、他の製品・サービスを利用するには、レンタルする度に料金を支払わなくてはなりません。また、返却後に同じ製品・サービスを再度利用する際には、追加料金がかかります。
サブスクリプションは一定期間利用し放題である点はレンタルと共通ですが、期間中の製品・サービスの交換や、以前利用していたモノ・サービスを再度利用するのに追加料金がかからないことが多いという点でレンタルと異なります。
飲食店がサブスクリプション化するメリットと注意点
飲食店がサブスクリプションサービスを導入することで、安定した収益や新規顧客の開拓などを期待できるというメリットがあります。一方、サブスクリプションサービスで提供するメニューの在庫管理や、リピートしたくなるメニューの提供などが求められるなど、注意が必要です。
サブスクリプション化のメリット
具体的に、飲食店のサブスクリプション化のメリットを紹介します。
・安定した収益が得られる
歓送迎会といった行事の多い時季には集客が増える一方、天候に左右され集客が減るなど、収益が安定しないことが多々あるでしょう。しかし、お客様にサブスクリプションを利用してもらえば、集客に変動があっても毎月一定の売上は確保されるため、安定した収益を得ることが可能です。
また、ある程度の売上を見込めることで適正量の食材を仕入れることができるので、食品ロスを抑えることにも役立ちます。
・リピーターの獲得につながる
飲食店が利益を出し続けるにはリピーターが欠かせません。サブスクリプションを利用しているお客様は、損しないように店舗を利用する機会が増えるので、自然とリピーターになります。リピーターを獲得できると、注文の多いメニューの傾向が見え、看板メニューを明確にし店舗の特長を打ち出しやすくなるというメリットもあります。
・新規顧客を開拓しやすい
複数人で食事をする際、サブスクリプションを利用している飲食店であれば料理の味や店舗の雰囲気を知っているため、会員が新たなお客様を連れてくることで新規顧客が開拓されます。おひとりさまに人気の飲食店も、サブスクリプションという話題性から、会員がSNSや口コミで店舗情報を発信し、認知拡大も期待できるでしょう。
・顧客情報の収集・管理が容易になる
単発での購入とは異なるサブスクリプションでは、顧客の定着化が望めるため、安定した収益から注文履歴といった情報を収集しやすくなります。顧客の傾向をつかみやすく、顧客管理や人気メニューからヒントを得た新メニューの開発に活かすこともできるでしょう。
サブスクリプション化の注意点
飲食店がサブスクリプション化する際の注意点を紹介します。
・初期費用をはじめとした様々なコストがかかる
多くのお客様に継続して利用してもらうためには、念入りな計画と準備は避けられません。サービス開始直後は店舗の認知や経費の管理など、会員が増えるまでの準備にかかったコストの発生を念頭に置きましょう。
・計画的な在庫管理が重要
サービスの質向上だけでも容易ではありませんが、サブスクリプションで常に注文できるメニューに加えて追加注文したくなる魅力的なメニューをいつでも提供できる状態でなければ、サブスクリプションを続けてもらうことは難しいでしょう。
サブスクリプションで提供するメニューに使う材料はもちろん、サブスクリプション以外のメニューも提供できる適正量の仕入れが求められます。経費を抑えて利益を生むためには、仕入れにかける費用と材料の無駄をなくすことも重要です。
・飽きないメニューの開発が欠かせない
飲食店を定額で利用できるのはお得というメリットがありますが、来店回数が増えれば店舗で気になるメニューを食べ尽くして飽きられるリスクもあります。また、お得なだけでメニューに特長がなければ、何度も足を運んでまで食べたいと思われず、サブスクリプションを契約してもすぐに解約されてしまうことが懸念されます。
お得なメニューと一緒に注文したい魅力的なメニューや、いつ味わっても質の安定した定額メニューの提供が、サブスクリプション会員になりたいと思われるリピーターを作ることにつながります。
サブスクリプションモデルの導入事例
飲食店でのサブスクリプションモデルの参考にしたい、導入事例を紹介します。
ラーメンのサブスク
・東京豚骨拉麺ばんから
東京豚骨拉麺ばんからの秋葉原店と池袋東口店では、1ヶ月6,800円で「ばんから」「つけ麵」「とんこつ」の3種類のラーメンのいずれかが1日1杯無料となる「ラーメンパスポート」、トッピングの角煮を1ヶ月1,000円で1回につき1個無料で提供される「トッピング角煮パスポート」、1ヶ月300円で味付け玉子やチャーシューなど8種類のトッピングいずれか1種類が1日1回無料となる「トッピングパスポート」を実施しています。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000029839.html
・野郎ラーメン
野郎ラーメンでは1ヶ月8,600円+税で1日1杯「豚骨野郎」「汁無し野郎」「味噌野郎」のいずれかが無料となるサービスを実施しています。
焼肉のサブスク
牛角では三軒茶屋店、花見川店、赤阪店限定で通常3,480円で90分食べ放題の「牛角コース」を11,000円で1日1回1ヶ月間利用できる「焼肉食べ放題PASS」を2019年11月29日から提供していました。しかし、想定以上の利用客で一般客が利用できない、PASS購入者が予約できないといった事態を受け、2020年1月に終了。
2020年3月に一部店舗・数量限定で、コースメニューが中心の7種類のプランで再開しましたが、食べ放題ではなくなったこと、利用できる時間帯に制限があることなどから、食べ放題PASSほど好評とはいえませんでした。
ラーメン店のように1人で利用しやすい業態の店舗であれば、サブスク会員の方も回転率は通常のお客様と変わらないので、混雑し過ぎて入店できないといった事態に陥らないことから、サブスクを導入した店舗はリピーターの獲得や安定した収益といったメリットを受けられるでしょう。
一方、1人が一定期間食べ放題のサブスクを、グループやファミリーをメインターゲットとする焼き肉店で提供すると、1人で4人席を占領することになり、来客数と注文数が減ることで売上減が懸念されます。
焼き肉店でサブスクを導入する場合、飲み放題やグループでの利用がお得になるサービスなど、お客様にメリットがありつつ店舗も売上を維持できる内容でなければ、店舗側がメリットを受けるのは難しいでしょう。
居酒屋のサブスク
・酔っ手羽
酔っ手羽は、月額10,000円で毎日4名様まで、月額4,000円で毎日、月額1,580円で月3回まで飲み放題というサービスと、月額500円でお通し代無料という計4種類のサブスク型定期券を公式アプリで提供しています。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000014010.html
・金の蔵
金の蔵では、通常1,800円の「プレミアム飲み放題120分」を月額4,000円で毎日利用できる「プレミアム飲み放題定期券」を公式アプリで提供しています。
定期券は一部の店舗を除くほとんどの店舗で利用可能で、1店舗で利用できるのは1日1回までですが、店舗を変えれば同日に何度でも利用できます。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000014010.html
フレンチのサブスク
東京・六本木には「Provision(プロヴィジョン)」というサブスクリプションレストランがあります。Provisionでは、月額30,000円+税の「Unison」と月額50,000円+税の「De Luxe」の2つのサービスを提供しています。Unisonは1回につき4名様まで追加料金メニューを除くメニューを、De Luxeは1回につき4名様まで一部の限定高級ワインを除く全てのメニューを1ヶ月何度でも楽しめます。
参考:月額制のフレンチレストラン『Provision』に聞く、サブスクリプションの未来
サブスクサービス
・CAFE PASS
CAFE PASSとは月額900円で個人店のカフェや喫茶店を含む全国の加盟店で毎日3杯まで無料、4杯目以降は50円引きでドリンクをオーダーできるサービスです。
・GUBIT
GUBITは月額980円+税で加盟店のドリンクを毎日1杯無料で注文できるサービスです。2020年4月現在、首都圏でサービス開始に向けて準備中で、サービス開始後は関西圏、名古屋圏、福岡圏でも提供が予定されています。
・POTLUCK
POTLUCK(ポットラック)とは定額制テイクアウトアプリで、1週間3食トライアル、12食プラン、毎日プラン、12食買い切りプランがあります。
1週間3食トライアルは1食290円+税で3食まで1週間限定で利用でき、トライアル終了後は12食プランに自動更新されます。12食プランは1食590円+税で最大30日間12食まで、毎日プランは1日397円+税で毎日昼か夜に1回利用できます。12食買い切りプランは1食650円+税で12食を無期限で利用できるプランです。
まとめ
飲食店にサブスクリプションサービスを導入することで、安定した収益や、新規顧客・リピーターの獲得が期待できます。しかし、魅力的なサービスを提供するためにはコストがかかり、工夫も求められる点には注意が必要です。
飲食店では既にサブスクリプションが拡大しているので、導入事例を確認しながら自身の店舗形態に合わせたサービスを検討し、店舗にもお客様にもメリットの大きいサービスを始めましょう。