店舗経営はデジタル化でこう変わる。飲食業界の未来予想図を考えてみた

世の中は大きな変化を迎えています。各産業でICT化、ビッグデータ、AI、IoTなどデジタル化が顕著で「第4次産業革命」とも言われる改革が進行中です。国内でも経済産業省が2018年12月に「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」を取りまとめたばかり。今後の労働人口減少が確実視される日本で、業務効率化をはかるうえでデジタル化は避けては通れない道といえます。

特に今後の人手不足が懸念される飲食業界での動きは加速していくでしょう。事実、すでに「AIの導入」や「キャッシュレス店舗」などIT技術を取り入れた店舗が増えてきています。

そこで今回は、現状の飲食業界の問題点などを示しつつ、デジタル化を導入した飲食店の実例を紹介していきます。

飲食店を取り巻く“負”の現状とIT技術について

現在、日本の飲食店をめぐる現状は厳しさを増しています。飲食業界の市場規模は、1997年の29兆円をピークに減少し、2016年にはおよそ23~24兆円となりました。今後、少子高齢化の影響により、2020年には横ばいか1~2割縮小するという予測が出ています。

その要因ともなっているが、労働人口の減少による飲食業界の深刻な人手不足です。株式会社帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2018年7月)」によると、飲食業界で「正社員の不足している」と答えたのは58.5%。「非正社員が不足している」と答えたのは82.9%となっており、後者は全産業でトップの数値でした。今後も労働人口減少は劇的に回復する見込みはありません。売手市場がつづき、今後も一定数の人材確保が難しくなるため、採用コストも増大するという負のサイクルに陥っています。

飲食業界は、「労働時間が長い」「給料が安い」「休みが取りにくい」ほか、就業時間が不規則で他産業が休みのときが繁忙期になるなど負のイメージがついていることも人手不足に拍車をかけています。イメージ改善は、業界全体で取り組まないといけない問題ではありますが、飲食業界は個人経営が約6割近くを占め、半数近く開業から1年で閉店してしまうなど、各オーナー・経営者の決断によるところが大きいのが現状です。

これらの問題の解決法と期待されているのが、ICT活用などのデジタル化です。飲食業界でも、インターネットなどのIT技術を店舗経営に取り入れる企業が増えてきています。以下で、デジタル化で導入した事例を3つ紹介していきましょう。

AIロボットがおすすめメニューを決める?―飲食業の未来1


AIを導入して、客単価や好みなどをデータ化して、メニューを開発に取り入れるなど革新的なお店があります。例えば『鶏ポタラーメン THANK(サンク)大門店』は、AIロボットの「Sota(ソータ)」を導入。その結果、男性・女性それぞれに好評なメニューの分析や客単価の高い時間帯の判別が可能になりました。

また2017年にオープンしたカフェ『Alpha Beta Coffee Club(アルファベータコーヒークラブ)』では、コーヒーサーバーの下に、iPhoneやAndroidアプリと連動するスマートスケールである「acaia デジタルスケール」を設置。豆の種類やお湯と粉の比率、コーヒーを抽出するまでにかかった時間を記録し、データを蓄積しています。そのデータを分析することで、かすかな味の違いを微調整することが可能になり、よりおいしいコーヒー開発の研究に役立っているそうです。

このようにAIを駆使し、データを蓄積・分析することで顧客の好みやニーズを把握できます。今後、さらに精度の高く安価で導入できるAIサービスが世に出ると、より消費者が求めているニーズに応えていけるでしょう。

完全キャッシュレス化となる?―飲食業の未来2


諸外国に比べ、まだまだキャッシュレスが浸透していない日本。しかし、スマホ決済アプリ『PayPay』がローンチされ、大きな話題となったように今後はキャッシュレス化が進んでいくことが予測されます。

2018年10月、JR東日本の「赤羽駅」に無人のキャッシュレス店舗が登場しました(現在は実証実験中のため、2カ月程度で営業は終了)。この店舗では、入店時にSuicaなどの交通系ICカードをかざすとドアが開き、チェックアウト時に指定された場所に立つと、手に持っていたりカバンに入れたりした商品の一覧がディスプレイに表示されます。それを確認して交通系ICカードをタッチすれば、セルフ決済が完了します。購買履歴、性別や年齢などのマーケティングデータを取得でき、商品構成にも活かすことが期待されています。

同年、浅草駅近くには『大江戸てんや 浅草雷門店』がオープンしました。こちらは無人ではなく、支払い時に店員と対面で会計を行います。支払いはクレジットカードや電子マネーなどのほか、「Alipay」や「WeChat Pay」なども使用可能。キャッシュレス化を実現したことで、お釣りのやり取りなどの手間を省けるようになったほか、金銭の受け渡しが発生しないことによるセキュリティコストの削減効果も期待できます。無人かつキャッシュレスまで進むと導入に莫大な費用がかかりそうですが、シンプルに人員削減や業務効率化を目指すになら、『大江戸てんや 浅草雷門店』のケースは参考になりそうです。

ちなみに「コスト削減に店舗集客も。スマホ決済を導入してキャッシュレス化の波に備えよう」の記事でも紹介しましたが、経済産業省では、将来的には約80%まで伸ばしていく「キャッシュレス・ビジョン」という方針を掲げています。今後日本でもキャッシュレス店舗が増えていくことでしょう。

“店舗”という概念が消える―飲食業の未来3


矢野経済研究所によると、2016年度の食品宅配総市場規模は2兆782億円。2021年度には2兆3985億円まで拡大すると予想されています。この背景には、消費者の高齢化により外食産業が縮小し、代わりに中食産業が拡大していることが挙げられます。また、単身世帯や共働き世帯が増加したことも、食品宅配業界の市場拡大に寄与しているようです。このままデリバリー産業が拡大すれば、近い将来、“店舗”という概念が無くなってしまうかもしれません。

近年、日本でもサービスが拡大しているのがデリバリー業務を担ってくれる『UberEATS』や、余った食材をシェアできる『TABETE』などのシェアリングサービスです。これまで店舗まで足を運ばなければ食べることのできなかったメニューも『UberEATS』を利用することで、自宅やオフィスでも楽しめるようになりました。また店舗にとっても新しいお客様を獲得するきっかけとなります。事業を拡大したいと考えている店舗経営者にとっては、大きな効果が期待できます。シェアリングサービスに関しては、過去記事「人材確保、収入UP?!店舗経営者が取り入れたいシェアリングサービス7選」に載っているので、こちらも合わせてご確認ください。

人もお金も店舗もなくなる未来。デジタル化の波に乗ろう

上述の通り、飲食業界は市場規模の縮小と人手不足によって、飲食店経営者にとってはますます厳しい状況が続くものと思われます。チェーン店での注文はすでてに自動券売機やタブレットなどのタッチパネルが多く採用されています。支払も徐々にキャッシュレスになり、接客はAIロボットが行う……そんな未来がもう目の前まできているのかもしれません。

回転率を重視する低価格帯で勝負している飲食店は、より低価格になることが予想されます。その一方で、相対的にヒューマンタッチの接客があるお店の価値もあがるでしょう。大きな変革期にある飲食業界ですが、厳しい経営を迫られるようなことにならないよう、デジタル化の導入を検討してみましょう。

数多くのサービスが展開されていますので、業態、ターゲット、立地、客層など様々な観点から効果的なサービスを選ぶようにしましょう。