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飲食店ができる「SDGs」(持続可能な開発目標)について考える

20世紀以降、人類は急激な経済成長を遂げ、私たちの暮らしは豊かなものになりました。しかし、それと引き換えに、その過程で排出された二酸化炭素(Co2)によって、地球環境は悪化の一途をたどるようになりました。

そして現在、環境負荷を軽減させることは国や大企業だけに与えられた義務ではなく、市井で暮らす私たち一人ひとりもできることから取り組んでいかなければならない課題となっています。今回は、持続可能な社会をつくるために飲食店ができることについて考えてみます。

人類が直面する共通の課題に立ち向かうために

世界情勢に目を向けると、戦争、飢餓、人種差別などあらゆる問題が各地で起きていることがわかります。そのような問題をなくし、人間一人ひとりが自分らしく、平和で安心して生活していくために、2015年の国連サミットでSDGs(エス・ディ・ジーズ、Sustainable Development Goals)が採択されました。「持続可能な開発目標」という意味で、国連に加盟する計193か国が、2030年までの間に問題を解決していこうと決めた取り組みです。

SDGsには大きく17の行動指針が掲げられています。「貧困をなくす」「質の高い教育をみんなに」「安全な水とトイレを世界中に」など、一見、発展途上国を支援する内容にも見えますが、中にはクリーンエネルギーの推進や、製造者・使用者責任、森林と海洋資源の保護など、先進国が率先して取り組んでいかなければならない課題もあります。

そして17の目標は、人間が生きていく上で欠かせない食糧問題とも密接に関わっています。それだけに、飲食業を営む人たちにとっても無視できない問題であり、たとえ小さな努力であっても、お店で始められるSDGsもあるのです。それでは、飲食店が取り組むべき課題であるSDGsについて見ていきましょう。

飲食店が取り組むSDGs

食品容器、食器などのリユース化

飲食店で提供させるメニューの皿、箸、スプーンなどを使い捨ての紙やプラスチック製からリユース(洗浄して繰り返し使う)できる素材の物に切り替えることです。ごみの大幅な削減につながるメリットがあります。

ただし、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、一度リユースタイプの食器を導入した店が、再び使い捨てに切り替えた事例もあることから、今後の感染状況を様子見しながら慎重に選んでいく必要があります。

プラスチックごみの削減

使い捨てされる容器包装の中でも、特に問題となっているのがプラスチックです。ご存じのとおりプラスチックは石油から作られます。近い将来、枯渇する化石燃料を大切に使っていくことは人類共通の課題です。大手ファストフードやカフェ店がプラスチック製のストローの使用を止め、紙製の物に替えたことが話題を集めましたが、リユースが難しい場合は、より環境負荷の少ない素材に替えていくこともSDGsの観点から必要なことです。

2020年7月に日本でもレジ袋の有料化がスタートしました。これは単に省資源につながるだけでなく、今まで何も考えずに受け取っていたビニール袋が、本当にいま必要な物なのか、消費者が自分の価値観やライフスタイルを見つめ直すきっかけとなるはずです。

また、プラスチックごみは海洋生物や鳥の生態に深刻な被害を与えています。魚の体内に蓄積された微細なプラスチックは、やがてそれらを捕食する人間の体内にも宿り、いつしか人体に影響を与える可能性だってあるのです。

日本の海岸に漂着するごみの大半は近隣諸外国から流出したごみです。そのため、プラスチック容器を減らしごみの発生を抑えることは、もはや一国の問題ではなく世界各国が足並みをそろえて考えていかなくてはならない問題なのです。

食品ロスの削減

日本では「食べ物を粗末にしてはいけない」という思想が深く根付いていることから、食料残渣(ざんさ)に心を痛める飲食店経営者も多いことかと思います。そこで、食の細い子どもや高齢者でも完食できるような小ポーションメニューの導入や、余した食べ物を持ち帰れるバッグの提供などができるはずです。客単価が落ちることや、食中毒など衛生面の問題もあるため躊躇するかもしれませんが、逆に環境意識の高いお客さんに喜ばれる可能性もあります。

近年は、廃棄が近い食品の存在を手持ちのスマートフォンなどに通知してくれる食品ロス削減アプリも普及しています。お店側としてはせっかく作った料理が無駄にならず、消費者としては食べ物が割安で手に入るWin-Winの関係になります。こういったIoT(モノのインターネット)の進歩もSDGsの目標達成には欠かせない存在となってくるはずです。

トレーサビリティを意識する

最近はスーパーマーケットで並ぶ生鮮食品に、生産者の顔や氏名が明記されることが多くなりました。このように生産者が“見える”ことは、消費者に大きな安心感を与えてくれますが、こういったトレーサビリティが明確な食品を選ぶことも飲食店ができるSDGsです。

特に外国から輸入される食品については、日本とは違う農薬や食品添加物の基準が設けられていることもあるため、そのトレーサビリティを知り、信頼できる物を採用してお客さんに提供することは、飲食店の信頼の証につながります。

バナナやコーヒー豆など主に発展途上国で生産している食品については、現地の労働者が不当な賃金で働かされていないことや、未成年の子どもが強制的に働かされていないことが証明されている「フェアトレード」の商品を選ぶことが重要です。

海産物については、資源保護が世界の共通課題となっています。洋上という普段人目につきにくいところで操業していることから、乱獲や密漁がたびたび問題視されています。そこで、水産資源や環境に配慮し適切に管理された漁業のもと獲られた、または養殖された水産物を選ぶことが重要になってきます。「マリン・エコラベル」や「MSC認証」などいくつかの認証があり、スーパーマーケットなどでもパッケージに貼られたラベルで確認することができます。

雇用の創出

従業員やアルバイトの雇用を確保することも、飲食店ができるSDGsの一つです。アルバイトをしながら学費を稼ぐ大学生や専門学校生も大勢いますが、コロナ禍で店の経営が危うくなり、バイト先を解雇され学費を払えず、学校を辞めなくてはいけない学生が増えているのが現状です。

外国人に対しても同様で、日本で得た収入を母国に仕送りしている外国人も多くいます。物価の違いもあり、日本でのわずかな収入が現地家族の生活を支えているケースもあります。人種や雇用形態を問わず、仕事がなくなれば生活できなくなる人が大勢いるため、飲食店経営者はスタッフの雇用を守ることを肝に銘じなければなりません。

「東京野菜キッチンSCOP」の事例

株式会社マイファームが運営するイタリアンバル『東京野菜キッチンSCOP(スコップ)』(東京都・港区)では、店内で使用するすべての電気に再生可能エネルギーを導入しています。これによりSDGs17の目標のうち、「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「気候変動に具体的な対策を」に寄与することになります。

また同店では、東京都下で生産された野菜を積極的にメニューに取り入れており、自然の恵みを享受しながら地元生産者を支援するスキームを構築しています。これもSDGsの「つくる責任 つかう責任」、つまり持続可能な生産と消費のパターンを確保することに当てはまります。同時に、地元東京の野菜を使うことは「地産地消」になり、物流面での二酸化炭素排出削減に寄与しています。

東京野菜キッチンSCOP

SDGs達成のため、できることを今すぐにでも

世界の主要各国による温室効果ガスの排出削減を目指した「京都議定書」が採択されてから20年以上が経ちました。同時にサスティナビリティの概念も芽生えてきましたが、時代の変化に合わせてそのあり方やプロセスも変わってきています。

環境や人権問題は一朝一夕で解決できるものではありませんが、一人ひとりができることを愚直に取り組んでいくことが、SDGs達成のための正攻法であり近道となるはずです。

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