店舗開業を考える人が陥りがちな、資金調達・経理についてのお悩みに、税理士法人 田尻会計・田尻重暁先生が答えてくれるこの企画。第2回は、店舗経営者が知っておくべき「経営指標」の読み方について、田尻先生に教えていただきました。
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【税理士・田尻先生直伝!知識ゼロからの資金計画講座】第1回:開業までの資金調達のフロー
ポイントを絞って経営指標をチェックすればOK
── 店舗の利益などを把握するために、経営指標をきちんと見ることは必要です。でも、知識がないと、どの数値をどのように見ればよいか、わからないという方も多いと思います。
基本的な数値の見方や、経営指標の分析は何のために行うのか、具体的に教えていただけないでしょうか?
飲食店の店長や経営をしている方って、料理はちゃんと上手で、おいしいものを提供している方がほとんどです。でも、それで「儲かっていますか?」と聞いても、漠然とした答えしか返ってこないことが多いんですよね。
だから、そういったものをきちんと可視化しておくべきだと思います。
どれくらい儲かっているのか、あるいは儲かっていないのか。儲かっていないのなら何が原因で儲かっていないのか、どこを改善すれば良いのか……そういったものを示すのが、経営指標だと思うんです。
感覚的に経営するというよりは、具体的にわかるようにする。そのために、数値を見ながら、「次はどういうアクションをすべきか」ということを判断すべきだと思います。
── 店舗経営者が、「ここの数値だけはチェックしたほうがいい」という、経営指標の効率的な見方はあるんでしょうか?
私の個人的な意見ですが、隅から隅までいくつもの指標をチェックする必要はないのではと思います。飲食店だと、売上げと原価率だけを見て終わってしまう店舗もありますよ。
店舗ごとで重視したいポイントも、変わってくると思います。「うちの店は売上げが上がれば必ず利益が出るから、それだけは追いたい」とか、「材料費がかかる店舗だから、原価率は重視したい」など、店舗ごとにポイントを絞っていくのが良いのではないかなと思いますね。
でも、やっぱり売上げは見たほうが良いですね。
── 飲食店特有の経営指標があるとのことですが、これはどういったものなのでしょうか?
FLコスト比率と呼ばれているものがあります。これは、食材費(F)とレイバー(人件費・L)が、売上げに対してどのくらいの割合を占めているか、という指標です。
一般的には、FLコスト比率は60%以内が望ましいと言われています。ですが業態によって変わるので、ご自身の状況に合わせて適正比率を設けてもよいと思います。
── 飲食店以外にも、特殊な数値はある業種はあるのでしょうか?
サービス業なら原価は気にしないと思うので、ひとりあたりの生産附加、労働分配率などをチェックすることはありますね。
赤字?黒字?店舗の経営状況がひとめでわかる指標
── 先ほど、「経営者は自分の店が儲かっているのかよくわかっていない」と伺いました。お店が黒字化した、今は赤字だからもう少し頑張らなければいけない、などはどの数値から判断して、どうなってしまうといけないのか、ということを知りたいなと思います。
まずは売上げから判断します。例えば、ラーメンを売った売上げがあるとしたら、そこから材料費を引き、さらにお店の家賃や電気代、従業員のお給料などを引きます。そこで残ったものが「営業利益」です。
その営業利益がプラスになっていれば、一般的に黒字と言って良いのではないかと思います。
利息の返済がある場合は、経常利益も確認したほうがよいですね。
── 経営指標を見直すための、タイミングなどはあるのでしょうか?
継続的に見続けていくことが大切なので、できるだけ毎月チェックしたほうが良いですね。タイムリーに経営状況を把握することが重要です。
決算書は、いつ作成する必要がある?
── 店舗経営者は、決算書も作成する必要があります。この「決算書」とは、どのようなものなのでしょうか?
決算書は、事業を1年間やった結果、どのくらい儲かったか、どのくらい財産が貯まったかということを表す書類です。
主に税務申告に添付したり、金融機関に提出したり、あるいは株主総会で報告するときに使用したりします。
── 店舗経営者は、一年のうち決算する時期になったらこれらを作成する義務がある、という認識をしておけば大丈夫ですか?
会社形態、いわゆる法人でしたら決算日がそれぞれあると思います。その場合、通常であれば、2ヶ月後に税務申告することが義務づけられています。5月31日決算の場合であれば、7月31日までに申告、といった具合です。
延長制度もありますが、原則として2ヶ月以内までとなっています。そのため、それまでに決算書を作成しておく必要がありますね。
※いよいよ最終回となる第3回では、経理に関する素朴な疑問について、田尻先生に教えていただきました。お楽しみに!
■協力:税理士法人 田尻会計(TEL:03-3618-4403)