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お店の壁がちょっと寂しい…だけどありきたりな内装インテリアでは満足できない。なんかいいアイデアないかな?

そんな悩みを抱えた店舗経営者に紹介させていただきたいのが、アートギャラリーの運営を行っているFm(エフマイナー)が提供する現代アート作品のオンラインレンタル・販売サービス「clubFm」

clubFmロゴ

今回は、同社COOである佐々木真純さんにお話を伺ってきました。
洗練された知性を感じさせる佇まいと、ファンキーで意外性に富んだ人柄…まさにclubFmのサービスを体現するかのような人物である佐々木さんの口から発せられたのは

「アート作品とラーメンの関係」

「現代アートがBGMと同じ機能を果たすことを見落としているのでは?」

という、なんとも新鮮なフレーズの数々。
しかしこれこそが、いずれ日本全土を席巻するであろう、革命的な空間演出のアイデアだったのです!
OMISE Lab編集部が使命感をもってお伝えするそのインタビューの全貌を、どうぞ最後までお楽しみください!


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アートをカジュアルに広めるためのプラットフォーム作り

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ーclubFmの提供するアートレンタルのサービスを知って、まず「これは世の中の美術作品に対する接し方を大きく変える試みだ!」と感じました。この挑戦に至ったきっかけとはなんでしたか?

ギャラリー運営に携わるうちに、日本には若手を中心として優秀な作家がまだまだ沢山いるのに、総じてその認知度が低いという課題に直面しました。それは、日本のアート作品に関するマーケットが小さいからなんですね。もっと「カジュアルに絵を飾る」という習慣を広めていかないと、新しい時代にふさわしい仕組みや多様性が生まれてこない。

そこを解決するために考えたのが、オンラインでのプラットフォーム作りです。ギャラリーは運営者の判断が絡むので展示される作家にある程度の偏りが生まれてしまうのに比べ、オンラインであれば自由に幅がもたせられる。そもそも、好みのアート作品を見つけるプロセスは、好みのラーメンを見つけるプロセスと一緒なんです。

ー!?

誰だって、一通り色んな種類のラーメンを食べないと自分の舌にどの味があうかなんて判断できないでしょ?読書だって、個人が本をたくさん読むことを通じて自分の好みをチューンアップしていく。アートだって同じことなのに、現状では個人がそれぞれの好みを見定めるきっかけが不足しているんです。

「数」×「質」でマーケットを拡大する

ーなるほど、clubFmはまさにアートレンタルを通じて「きっかけ」を生み出す仕組みなわけですね。では、その枠組みを支えるには一定以上の「数」と「質」を確保することが必要になると思われますが、この基準はどのようにクリアされているのでしょうか?

現段階で clubFm に登録している作家数は 100 ⼈を超え、作品数でいえば 1000 点以上ありますが、これから東京だけでなく、関西方面などのギャラリーの参加も予定しており、キュレーターの方の参加も増えていきます。 みなさんのご協力を得ながら、作品数は1年ほどで 5000 点まで増やすことを⽬標にしています。
質ということで言えば、日本のトップギャラリーに加えて、コマーシャルの世界も含めて最前線のクリエイティブシーンを見続けているアーティストや、アートキュレーターなどの「目利き」によって推薦される作家を紹介させていただくことで質を担保しています。また、いち早く才能をピックアップする所謂オルタナティブスペースからの推薦作家なども紹介していますので、バリエーションも豊かです。

また、サイトで作品の募集もしていますが、誰でも参加できるわけでは決してなく審査には厳格な基準を設けています。

クオリティ面で充実と、登録作品数やバリエーションの充実とをかけあわせることによって、 サイトを見た⼈が「これだったら好きかも」と思えるようなきっかけを提供することができると信じています。

店舗利用者のコミュニケーションに、新たなきっかけを

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ーそもそもアートを鑑賞するということは、本来はオフラインでの空間体験の一部ですよね。例えばOMISE Labを読んでいる経営者がclubFmのサービスを実店舗のなかに取り入れるとしたら、一番のメリットはなんでしょうか?

もちろん、内装デザインの雰囲気を変えるという意味で、ダイレクトな効果があることは間違いありません。しかしそれ以上に重要な現代アートの役割というのが「コミュニケーションの仲介になる」ということなんです。

例えばclubFmのサービスは企業オフィスのミーティング空間などにもご利用いただいているのですが、そこに絵があることによってコミュニケーションが多様化されるんですね。普段のやりとりの中に、文化的な要素がプラスされるわけです。

これが飲食店であるならば、お客さん同士の会話のなかにその絵の話題が加わるでしょうし、美容サロンであるならば、美容師とお客さんのコミュニケーションに新たな幅が生まれることになる。天気の話とか、仕事の愚痴だけでなく、新たな会話のきっかけを生むことができるんです。

レンタルで楽しむ、「質感の変化」

ー空間演出のなかに「遊び」の要素を持たせることによって、利用者がその遊びに加われるようになるわけですね。

その通りです。数年前にお亡くなりになりましたが、美術評論家の中原佑介さんという方がいます。中原さんが80年代のある対談の中でアートがより生活空間に入り込んでいくのではないかと発言しています。それを中原さんはBGI(バックグラウンドイメージ)と呼んでいる(笑)

店内に流れる BGM を聴いて「あ、この 曲知ってる!」、「不思議な曲だけど、好きかも!」と思うように、 生活空間にアートを加えることで豊かな質感が加わると共に、情感が働く空間に育っていきます。

ーお店作りにもどんどん取り入れたい発想ですね。

現代アート、と言っても決して肩肘を張って見ないといけないものではありません。遊びのひとつとして現代アートに接することが大切だと思っています。

さらには、clubFmは月額レンタルでアート作品を提供しているので、月ごとに作品をローテーションすることだってできる。カフェや美容サロンに足を運んで「前に来た時と絵が変わってる!」と感じるのは視覚的にも新鮮な驚きですし、お店を利用する楽しみにもなります。

ー確かにそれは新鮮!

料金をふくめ、敷居を低く設定しているからこその楽しみ方が提案できれば、と思っています。

1日コーヒー1杯分の料金で、気ままにアートを楽しもう

沖縄出身のアーティスト我喜屋位瑳務(http://gakiyaisamu.com/)さんのコラージュ作品を前にポーズをとる佐々木さん。手にしたフリスビーはくるりやサニーデイサービスのCDジャケットも手がけた小田島等さん(http://odajimahitoshi.com/)の作品です。

沖縄出身のアーティスト我喜屋位瑳務(http://gakiyaisamu.com/)さんのコラージュ作品を前にポーズをとる佐々木さん。手にしたフリスビーはくるりやサニーデイサービスのCDジャケットも手がけた小田島等さん(http://odajimahitoshi.com/)の作品です。

ーではその月額レンタルの価格設定に、どのような思想や哲学がこめられているのかお聞かせください。

どの作品を借りても月額4800円で、これを一日あたりの利用料金に換算すればコーヒー1杯を下回るような値段になっています。すごいお得感でしょ? 思想ということでいえば、作品の種類がいわゆるファインアートであろうが、ポップなイラストであろうが、関係なく同列に価格設定を行っています。そこが業界の中である種のタブー破りになってしまうかもしれないポイントでもあるのですが(笑)

ーアートの世界は歴史的にジャンルの序列作りで制度を築いてきましたからね

でも、実際に一般の人たちがアート作品にたいして持っている評価軸はフラットなものだし、フラットであるからこそ自分の好みやセンスを空間作りにダイレクトに活かすことができる。clubFmはお店側で作品の選定にも関わることができるので、店内空間に店主の想いやこだわりを反映させることができるんです。

(つづく)

新しい時代の、新しいアートの遊び方を提案するclubFm。気になるインタビュー後半では、実際の作品選びをオンラインでサポートする、驚きのコンシェルジュサービスについて余すところなく語っていただきます。おたのしみに!

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magazine 編集部

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店舗BGMアプリ「モンスター・チャンネル」が運営する店舗運営情報magazineの編集責任者。