「お店を持ちたい」。そう思い立っても、新規開業のためのノウハウを持っていないために諦めてしまう人が多いかもしれません。しかし、必要な知識を身につけ、コツコツと準備を進めていけば開業することは不可能ではありません。
デザイナー大谷秀映さんが1から店舗をリノベーションするカフェ兼アクセサリー雑貨店、「ZAGURI」の開業準備の様子を密着レポート。11月のオープンに向けて、配線むき出しの内装が徐々に仕上がっていく経過を写真とともにレポートします!
連載「経験ゼロからの開業日記」第6回のテーマは、水回りの工事です。プロに依頼した水回りの工事をはじめ、美味しいコーヒーのために取り寄せた浄水器など、今回も開業に向け目の離せない情報ばかりです。ぜひご覧ください。
なぜプロに頼むのか
店のスケルトン化からカウンター作りまで、これまで店舗リノベーションを自らの手で行ってきた大谷さん。しかし、水回りだけはプロにお願いして仕上げてもらったといいます。
(大谷)「店舗をスケルトン化している時に、水道管に穴が空いていたり、水が漏れていたりしました。さすがにこれは自分には無理だと思いましたし、後々水漏れなどが起こってからでは大変です。ちょうどキッチン回りの設備を探したりもしていたので、業者さんに相談。実際に店舗を見ていただきながら、冷蔵庫の設置や水回りの配管もお願いすることにしたんです」
このように、プロにお願いした経緯を語ってくれました。
キッチンのリフォームといっても、一般家庭と異なり、飲食店用の営業許可を取得できるリフォームにしなくてはなりません。
「排水のための床こう配は1/50~1/100が適当。床と壁が交わる隅は、丸みをつける。天井は配管ダクト、照明器具等が露出しないこと」の他に、営業施設の構造をはじめ、「食品を保存するために、十分な大きさを有する冷蔵設備を設けること」や「洗浄及び消毒のための給湯設備を設けること」など、それぞれの自治体のルールに沿った仕様に合わせなければならないのです。
水漏れ無しの完璧なリフォーム
(大谷)「確かにネットで買えば安いのですが、ネットでは商品だけが届くだけで、設置など内装工事に関する相談ができません。合羽橋を何件か回って、信頼できる取り付け業者さんと相談しながら、水道管の修復も一緒にお願いしました。そこで出会った厨房設備業者さんにはすごくお世話になっていて、お店に直接行って相談できたのがとても良かったです」
また、キッチン回りだけでなく、トイレ設備もプロに依頼したそうです。というのも、重量物の廃棄処分など、面倒な仕事も業者であれば、一手に引き受けてくれるからです。
トイレ内の手洗いはペーパータオルを使わなくても手が乾くジェットドライヤーを設置することを検討していたものの、スペースが狭くて断念。そんな経緯はありますが、キッチン、トイレともに図面通りに、きっちりと仕事をこなしていただいた結果、水漏れもなく、営業許可がおりる完璧な内装に仕上がっています。
美味しいコーヒーのための“水”へのこだわり
店作りを計画し始めた時、「水とカウンターにはお金をかけよう」と思っていた大谷さん。都内での営業だからこそ、限られた機材でいい水を作ることを念頭に置いていたといいます。
浄水器もわざわざアメリカから取り寄せるこだわりよう。有名カフェなどでも導入されているというこの業務用浄水器は、カフェなどではよく見かける定番の製品、エバーピュア社製ハイフローシステムです。浄水の先進国といわれるアメリカで、エバーピュアが誕生したのは1933年。80年以上もの歴史を持つブランドです。
配管の鍍金仕上げ、水平垂直具合とステンレス壁面への映り込み、圧力ゲージ追加など、とにかく美しさには徹底的にこだわりました。浄水器といえば一般的にはお客様の目に触れることが無いように隠しておくものですが、大谷さんはキッチン背面のステンレス壁へ浄水器を取り付けています。これは敢えてお客様から見える所に設置することで、浄水器をインテリアのひとつとして見せるためです。
まさに1杯の極上のコーヒーのため、といっても過言ではないほど、水とカウンターにはこだわっています。美味しいコーヒーのためにこだわった水は、「お豆腐屋さんができるくらい、綺麗で美味しい水を作り出せる設備が整っています」と、大谷さんは言います。
大谷さんのお店作りへのこだわりは、まだまだ続きます。