飲食店や美容室などで働く人たちは、一度は夢見る独立開業。そんな社員の夢を叶えるために、多くの企業が「独立支援制度」を設けています。
そこで今回は、様々な企業が行っている独立支援制度を紹介します。
独立支援制度とは
独立支援制度とは、継続年数や資金面の条件を満たした従業員に対し、店舗の屋号や商標の使用を許可する制度です。「のれん分け制度」や「社内フランチャイズ制度」と呼ばれることもあります。
独立希望者はそれまで経験を積んだ店舗の名前を使用できるほか、運営に必要な人材や資金などの面でサポートを受けられます。知識や技術を十分に学んだ従業員に対し、独立支援制度は独立を支援してくれる制度なのです。
フランチャイズとの違いは?
フランチャイズは「店舗運営のノウハウを与える側の本部」と「与えられる側の加盟店」によって成り立つビジネスの形式です。本部は事業の拡大に向けて加盟店をサポートし、リスクの少ない方法で事業を進める加盟店は、利益の一部を本部へと還元します。
事業の拡大に重きが置かれているため、それまで店舗で働いたことがない人であっても、フランチャイズから出店するケースも見られます。
独立支援制度のメリット
実績を積んだ店舗のノウハウや運営方針を教わることができる
通常のフランチャイズ契約をした場合、加盟店の責任者は研修などを通じて経営のノウハウや運営方針などを教わります。しかし、独立支援制度を利用して開業する場合は、実際に自分が運営するであろう店舗で事前に働き、知識や技術を備えることができます。
だからこそ、いざ働く段階になって「思っていたのと違った」という事態が発生することがないのです。
ブランド力を理由に開店最初から集客が見込める
社内フランチャイズを通じた独立は、繁盛店や知名度の高い店のブランドを引き継ぐ場合がほとんど。知識も技術もないまっさらなところからスタートするよりも、馴染みの名前で開業した方が、ブランド力をきっかけに集客効果が見込めます。
店名や商品を見ただけでお客さんの認知度があることから、独自での出店とは異なり、宣伝をする必要があまりないのです。
制度を設ける企業側にもメリットがある
企業にとって独立支援制度は、競合他社へのノウハウの流出を防止するための方法でもあります。これまで勤めた店とも継続的な関係を築くことが可能なため、独立支援制度を取り入れている企業の多くはフランチャイズ店としての独立を積極的に支援してくれるのです。さらに独立希望者にとっては、実績のある店舗を引き継ぐため、創業資金や助成金が得やすいというメリットもあります。
また、独立を目指す人を対象とした人材募集サイトもあり、ここで独立支援をしている企業を入り口として選択すれば、採用後に「独立を目指していたのに、この環境では無理だ」といったようなミスマッチを防ぐことができますし、企業としては特別な人材募集費をかけずに向上心を持った優秀なスタッフを確保できるため、このようなサイトの存在は双方にとってのメリットになっています。
独立支援制度のデメリット
柔軟な経営ができない可能性がある
独立支援制度を利用する場合、フランチャイズと同様に経営方針や営業時間、仕入先を契約上限定されるなど柔軟な経営ができない可能性があります。自分の裁量で経営をしたいと考える方には適していないかもしれません。
開業するまで時間がかかることも
独立支援制度では社員としての継続年数が条件となる場合が多いため、開業するまでに時間がかかるというデメリットもあります。できるだけ早く独立したい方は一考する必要があるでしょう。
独立支援制度を採用している企業事例
では、社内フランチャイズ(のれん分け)を活用した独立支援を行っている企業にはどんなものがあるのでしょうか?こちらでは、独立支援制度を採用している店舗展開企業を一部ご紹介いたします。
ヘア&メイクEARTH
美容師にとって「独立」と言えば、職業人としての夢とその後のキャリアをかけた一大イベント。初めてハサミを手にしたその瞬間から、「いつか自分の店を持ちたい」と意気込む美容師がほとんどです。
そんな美容師の「夢」と「欲望」に注目し、積極的な独立支援を行うことによってブランドを成長させているのが「ヘア&メイクEARTH」です。「経営者を100人作る」というビジョンから、数多くのフランチャイズオーナーの独立を支援。「夢」があるから「成長」がある、という徹底的なしくみ作りによって、サービスを向上させているだけでなく、社員の独立後はオーナーからのロイヤリティによる収益も上げ続けています。
ミニット・アジア・パシフィック
靴修理サービスの大手チェーン「ミスターミニット」を展開するミニット・アジア・パシフィックは、2009年から社員の独立を支援する「のれん分け制度」を採用。その後、2010年には契約社員を「のれん分け受託研修生」として採用する「新のれん分け制度」を開始する(現在は募集停止中)など、徹底的な開業サポートを行っています。
靴修理というベテランの技術が必要とされる業態にあって、収益性の高い店舗を企業側が用意するのれん分けは、ブランドだけでなく現場の士気も向上させる試みと言えるでしょう。
すかいらーく
大手外食チェーン企業であるすかいらーくは、創業してからというもの積極的な店舗拡大を続けてきましたが、その一方で不採算店舗も多く抱えるようになったため、2000年代に入る頃には業績が悪化。
そこで経営再建策の一環として2009年には、社員をフランチャイズオーナーとしての独立させる「のれん分け制度」を開始。これは、報酬体系の見直しによってやる気のある人材をつなぎとめるという意味で、管理職でありながら低処遇に苦しんでいた「名ばかり店長」問題の解決を見込んだ施策だったといいます。
独立を夢見る人のためにある、独立支援制度。
飲食店や美容室で働く人のなかには、独立を考える人は少なくありません。ゼロから自分で始めるのも1つの方法ではありますが、意外に多くの企業が独立支援制度を取り入れています。自分の夢に近づくため、独立支援制度をうまく活用して、いつの日か自分のお店を持ってみるのもいいのではないでしょうか。
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