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ABCマートやPC専門店PCデポで販売の実績を作ったのち、現在は株式会社Family Smile代表取締役として、小売・サービス・飲食などといった接客業のコンサルティング・講演などを行う成田直人

ベストセラーとなった「トップ販売員のルール」(明日香出版)など、さまざまな著書も出版している成田氏に、「結果を出す」接客の極意を伺いました。

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「経営者こそ、店頭に立つべき」ABCマートから学んだ成田直人氏の現場主義経営【前編】

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成田直人氏インタビュー
サービスコンサルタント 成田直人オフィシャルサイト

想定外のサービスをすれば、感動は生まれる

– 多くのチェーン店だとマニュアル接客がほとんどではないかと思うのですが、そういったマニュアル接客の欠点や、逆に強みはありますか?

誰もが同じサービスをいつでも提供できるっていうのは強みだと思うんですよ。でも僕はやっぱりデメリットのほうが多いなって思っています。

ひとつはマニュアルに頼りすぎると、離職率が上がる。人は創造性が必要なんです。特に接客業だと、お客様としゃべるのが好きで来ているのに、マニュアル対応を求められるとそこに創造性がないから、シンプルにつまらない。つまらないっていうのが、離職率が上がる理由です。

それから、感動が生まれない。コミュニケーションが想定内のやりとりになってしまうから、別にこの人じゃなくていいしこのお店じゃなくていいし……となってしまう。けれどそこで、「いつもありがとうございます」とか「今日もアレでいいですか」なんて言われると、「自分を大事にしてもらえている」っていう実感が生まれるんです。

こういう喜びを積み重ねるのは、マニュアルでは不可能です。たとえばお客様がレストランに行ったとして、マニュアル対応をされても不満はないけれど、喜びもない。そこで一言添えてあげるとか、ちょっとしたひと手間で変わるのになっていう点が、一番のデメリットだなと思います。全部が想定内で、想定外がないんです

– 接客のパフォーマンスって、ちょっとしたサプライズの積み重ねというか、そういうのでお客様を引き寄せる力があるっていうことですか?

今までは、当たり前のサービスをいつでもどこでも受けられる、っていうのがむしろクオリティだったけれど、今はそれに満足できない人が増えてきています。そこにプラスαのサービスを入れて行くことを企業は努力して作り始めて来ているな、っていうのは、僕はすごく感じますね。

– 最近成田さんが指導とか、アドバイスをした店舗や経営者で、いちばん印象に残っている実例などはありますか?

僕が最近びっくりしたのは、売上が6億から21億になったっていう会社です。僕の基本的なコンサルティングのスタイルは、客単価・成約率・顧客満足度っていうこの3つの指標を上げること。この3つの中で、僕は常に「客単価」を上げることしか考えていないんです。

成田直人氏
■お客さまはもう増えない! だから接客で客単価を上げなさい(アスカビジネス)

成約率を上げても成約率しか上がらないし、顧客満足度を上げようとすると頭打ちになるんですけど、客単価上げようとすると全部上がるんです。だから、客単価=お客様満足度だって決めていて、まずは単価を上げることを考えます。具体的には、メインの商品をよりグレードのよい商品にすることや、周辺の商品をいかにワンパッケージで売れるようにするかということです。

そこの会社は、見事にその方法がフィットしたなっていうのが、最近びっくりしたことです。商品は全く変わっていないんです。人は相当成長しましたけどね。

質問力=接客の質であるということ

– 定食屋と、高級レストランの接客で共通している点ってありますか?

質問力がすごく高い。たとえば、朝ごはんをがっつり食べてからランチに行ったとします。そこで、「大将、おすすめなんですか?」って聞いたときに「今日はかきあげ丼だよ!」って言われると、「油かあ……」となってしまうこともありますよね。お客様のニーズをどれだけ引き出せるかっていうのは、食においては共通点だと思っています

「おすすめはなんですか?」と聞かれたときに、必ず「朝ごはん何食べましたか?」「お腹の好き具合どうですか?」などと聞くこと。食の流れは決まっているので、お客様の現状を把握する力と、潜在ニーズを引き出していること、この2点を質問できるところは庶民の行くような定食屋でも、高級店でも一緒です。

要はお客様に絶対にがっかりさせない。「今日何かいい魚入ってますか?」て聞かれて、おすすめされたものが刺身だとします。そこで、生魚食べられない人ならこれで終わりでしょう?だから必ず聞くこと。好みを聞いたりとか、お腹の好き具合とか現状を確認することは大切です。

– いわゆる、「お店のおすすめ」ってお店の利益だったり、回しやすさを考えて設定されていることがほとんどだと思うのですが、お店目線のおすすめでなく、本当にお客様の視点に立って、その人ならではのおすすめを引き出してあげるということですね。

僕の中で定義があって、「おすすめはおすすめでも、お客様にとってのおすすめをおすすめすることが本当のおすすめ」ということ。だからおすすめはおすすめでも、「相手にとってのおすすめ」をおすすめしなきゃいけないのですが、これができないところが多いです。

– それは洋服とか、販売でも同じことが言えますか?

同じです。洋服の場合は基本、「どこに行くのか」を確認することってポイントなんですよ。あとはその自宅のタンスの中にある洋服をちゃんと聞いて、何がベストなのかっていう提案ができれば、相当喜ばれるはずです。

– 質問力っていうのは、本当にどんな業種でも大切なんですね!

そう、接客の質は質問の質って決めているので。

自分の商品に自信がなければ、何も始まらない

成田直人氏インタビュー

– 最後になりますが、新しく開業する、お店を始めるという人がいちばん忘れてはいけないポイントはなんでしょうか?

僕は接客を教えているんですけれど、なんだかんだ言って飲食だったら1番うまい、商品だったら1番いい、つまりその商品やサービスに自信がないといけません

接客はあくまでも二次的なものなので。もし僕が担当しているお店に、「自分のお店、地域で何番目にうまいと思いますか?」と聞いたときに、「3番目くらいですかね」と言われたら「1番にしろ!」って言います。

商品とか食べ物がおいしくない、よくないっていうのはそんなの売らないほうがいいし。だからまずは商品に対する自信を1番にするっていうのが前提じゃないですかね

– 自分のお店の商品に自信を持つこと、きちんと理解することで、お客様におすすめを聞かれたときも自信を持って紹介できるし、「このお客様には◯◯を提供したい!」という思いも持つことができるようになるのかなと解釈しました。本日はどうもありがとうございました!

成田氏のお話から、経営者が店頭に立ってお客様や従業員とコンタクトをとる、お客様に質問してニーズを引き出す、ちょっとした気遣いのサプライズを与える……という、接客に必要な基本的なことができていない店舗は多いのではないかなと思いました。

現在、店舗の経営や接客、アルバイトの教育に悩んでいる人は、ぜひ成田氏の意見を参考にしてみてはいかがでしょうか?

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magazine 編集部

magazine 編集部

店舗BGMアプリ「モンスター・チャンネル」が運営する店舗運営情報magazineの編集責任者。