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店舗の経費が少ない程、利益は多くなります。売上に対する原価率を計算すると経費をかけ過ぎていないかなどをチェックできるので、売り上げアップには原価率の最適化が有効と言えます。最適な原価率は店舗の業種によって異なりますが、今回は美容室の適切な原価率と計算方法を紹介します。

原価率とは?計算方法をおさらい

美容室の経営にかかる経費を確認する際、「原価率」を意識すると美容室の運営・管理に活かしやすくなります。経費を正確に把握する上で欠かせない原価率について確認しましょう。

原価率の計算方法

原価率とは、売上に対してかかった材料費や仕入れ費の割合のことです。原価率は「売上原価÷売上高×100」という計算で求められます。100円で仕入れた物を500円で販売した場合の原価率は下記の通りです。

〈100円で仕入れた物を500円で販売した時の原価率〉

100÷500×100=20%

原価率を計算できると、売上に対して原価をかけ過ぎていないか、販売価格やサービス料金は適正かなどのチェックに役立ちます。

◎:【初心者向け解説】原価率の出し方を1から学ぼう

美容室にかかる原価と計算例

原価率の計算方法と併せて美容室で必要な材料費の原価を知っておくと、美容室の経営にかかる原価率を求めることが可能です。美容室の経営で想定される原価と原価率の計算例を紹介します。

原価の具体例

美容室ではシャンプー、パーマやカラーの薬剤、トリートメントといった材料の原価がかかります。

材料費は使用する量や材料の質で異なりますが、下記が施術1回あたりの原価の目安です。

〈施術1回あたりに使用する材料の原価〉
・シャンプー…60円
・パーマ剤…600~700円
・カラー剤…300~800円
・トリートメント…200円

その他にパーマやカラーの際には耳キャップや薬剤を浸透させるためのラップ、ヘアセットに使用するヘアオイルやワックスなども必要でしょう。

美容室の原価率計算

サロン専売品のシャンプーなどを販売する場合、「売り上げた商品の原価÷売上高×100」という計算で商品販売についての原価率を求めることができます。

たとえば、販売価格2,000円のシャンプーを1,600円で仕入れたとすると、原価率は1,600÷2,000×100=80%となります。

美容室は販売よりもカットやパーマなどの施術がメインとなるので、施術1回あたりの原価率を把握する必要があります。施術にかかる原価率を知ることで、仕入れ価格の安い業者から仕入れて原価を抑える、適正なメニュー料金を設定するなど、経費をコントロールしながら利益を出すことに役立ちます。

施術に関する原価率は「1回あたりの原価÷メニュー料金×100」と計算します。以下の4つを例に紹介しましょう。

①カット6,000円
②カット+カラー12,000円
③カット+パーマ18,000円
④トリートメント+シャンプー・ブロー8,000円

シャンプーや薬剤の使用量や原価などで原価率は異なりますが、今回はカットのみの場合シャンプー1回、カラーとパーマとトリートメントの場合2回で計算し、カラー剤は600円、パーマ剤は500円のものを使用するとします。

※カラーリングとパーマの際に使用する耳キャップは1枚5円のものを2枚、サロン用ラップ(幅30cn長さ100m)は500円のものを50cm使用すると仮定

〈施術メニュー別原価率の計算例〉
カット6,000円
【材料原価】
シャンプー…60円
【原価率】
60÷6,000×100=1%

カット+カラー12,000円
【材料原価】
シャンプー…60×2回=120円
耳キャップ…5円×2枚=10円
ラップ…500円×(50cm÷10000cm)=2.5円
カラー剤600円と合わせて原価は600+120+10+2.5=732.5円
【原価率】
732.5÷12,000×100≒6%

カット+カラー12,000円、1回あたり原価60円のシャンプーを2回(カット、カラー前のシャンプーとカラー後の計2回)したとすると、シャンプーの原価率は120÷12,000×100=1%とカットのみと同じです。

しかし、カラーリングではヘアカラー剤、耳キャップ、ラップなどもかかるので、メニューごとに原価率を把握するためには、施術にかかる原価の合計額がメニュー料金に占める割合を計算する方が良いでしょう。これは、カラーリングに限らず、パーマやトリートメントなど、使用する材料が複数あるメニューに共通です。

カット+パーマ18,000円
【材料原価】
シャンプー、耳キャップ、ラップの使用量は②と同じと仮定するので、パーマ剤500と合計で原価は500+120+10+2.5=632.5円
【原価率】
632.5÷18,000×100≒3.5%

パーマとカラーを同じ条件にすると、カラー剤の原価に幅がある分、使用する薬剤によってはカラーの原価率の方がパーマより高くなる場合があります。パーマはアイロンを使用する電気代、カラーよりも施術に時間がかかることを考慮してメニュー料金を高く設定し、原価率を抑えることは十分考えられます。

トリートメント+シャンプー・ブロー8,000円
【材料原価】
トリートメント剤200円とシャンプー120円(2回分)で原価の合計は
120+200=320円
【原価率】
320÷8,000×100=4%

※シャンプー後に使用するタオルをレンタルタオルといった1回限りの使用の場合、タオルを使用する回数分さらに原価がかかるので、原価率も高くなります。レンタルタオルの原価の目安は15~20円です。

美容室の理想の原価率・経費について

美容室の施術には上記で説明したシャンプーや薬剤だけではなく、水道代や電気代もかかります。自宅開業の場合を除き、テナント料もかかってきます。

スタッフがいなければ美容室は営業できず、スタッフの技術力がお客様の満足度を左右します。スタッフの技術力向上と高い技術を持つスタッフが長く働ける環境にするためには、人件費をかけることは非常に大切で、売り上げの30~50%は人件費にかかると言っても過言ではありません。

材料費以外にかかる経費を考慮すると、施術に必要な材料費の原価は10%以内に収めることが理想です。

美容室の原価率を抑える方法

美容室の経営を長く続けるためには、経費を削減して利益を多く出すことが大切です。利益が増えればスタッフの給料に反映することもてきるので、モチベーションアップにもつながるでしょう。美容室の経営で把握しておきたい原価や経費の削減方法を紹介します。

材料を安く仕入れる

材料費を安くするためには、材料を仕入れる業者選びがポイントです。大量注文による値引き率の拡大が見込めますが、個人店では一度に大量の仕入れが難しい場合もあるでしょう。大量注文が難しい場合は1つの業者から複数の材料を仕入れる、長いお付き合いをするなど、信頼関係を築いていくことで値引き率を大きくしてもらえることがあります。

業者選びに悩んだら、複数業者の同じ材料の値段を比較することをおすすめします。相見積もりをとることで、他社の方が安ければ値引きに応じてもらえる場合があります。

業者と良い関係を築くことで、材料を安く仕入れてもらえるだけではなく、新製品や美容室向けのイベント情報を提供してもらえるメリットもあるので、信頼できる業者選びは、質の高い美容室の経営につながるでしょう。

注文から到着までの時間が短い、大量の製品から材料を吟味したい場合、ネット通販もおすすめです。ネット通販は急ぎで材料を仕入れられる、業者で扱っていない材料も購入できる、値引き率が非常に高いサロン専用のネットがある、というメリットがあります。ただし、注文数や金額によっては送料がかかり、業者から仕入れるよりも高くなる場合がある点に注意しましょう。

薬剤の使用量をカルテに残す

髪の長さによって薬剤の使用量の目安はありますが、お客様の髪質によっては分量通りでない方が美しいヘアスタイルを作れる場合があります。目安の分量と異なる量の薬剤を使用した方が適切だった場合、カルテに残しておくと次回以降の薬剤を作り直す時間と量の節約に役立つでしょう。

経験を積んで薬剤の使用量を見直す

薬剤の塗布の仕方を工夫することで、今まで使用していた分量より少ない量でも質を保った仕上がりにできます。しかし適切な分量の把握と塗り方を工夫できるようになるには、高い技術力と豊富な知識が必要です。技術力の向上と薬剤の知識をインプットし続けることで、適切な薬剤の使用量と効率的な塗布が身につき、材料費の節約につながるでしょう。

紙を削減する

美容室は顧客カルテや会員カードなど、紙を使用することが多いです。お客様が増えるほど紙の使用量も増えて経費がかさむので、紙の削減は経費削減につながります。カルテを電子化する、LINE@を会員カード代わりにしてスタンプカードやDMとして利用するなどで紙の使用量を減らすことができます。

広告宣伝費を削減する

お客様の獲得には、宣伝で美容室があることを知ってもらうことが大切です。美容室の宣伝方法としてサロン予約サイトへの広告掲載がありますが、サイトへの広告掲載費用も掲載エリアや条件によっては経費がかさむ要因となります。

そこで、広告宣伝費用を抑えながら美容室を宣伝する方法として、SNSでの発信と充実したお店のHPを持つことがおすすめです。SNSではスタッフが実際に手がけたヘアスタイルをヘアカタログのように載せたり、スタッフの人柄が伝わるようなプライベートのこともアップしたりすると、どのような美容室なのか伝わるでしょう。

SNSには美容室のHPリンクも必ず載せましょう。HPの予約フォームや連絡先が分かりやすいなど、HPが予約サイトのような宣伝も予約も兼ねた媒体となることを心がけましょう。美容室の営業を続ける上で、新規のお客様の獲得と同じくらいリピーターの定着も重要です。予算を抑えてリピーターを獲得する方法として、お客様が登録したメールアドレスや会員カード代わりのLINE宛てにキャンペーンのお知らせやクーポンを配布する、といったことができます。

また、現在拡大しているインバウンドの獲得にもSNSは活用できます。Facebook・Twitter・Instagramなど、それぞれの特徴を理解し、適切な集客を目指しましょう。

◎:SNSを活用したインバウンド集客。特徴と事例を紹介!

まとめ

美容室は材料費の他に電気代、水道代、テナント料、人件費などがかかります。特に、人件費は質の高い美容室を続ける上で大きく削減できない費用なので、売り上げを人件費に還元できるくらいの利益を出し続けるためには、原価率を10%以下に収めることが理想です。原価率を最適化し、店舗の売上・利益をアップさせましょう。

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店舗BGMアプリ「モンスター・チャンネル」が運営する店舗運営情報magazineの編集責任者。