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少子高齢化問題が叫ばれて久しい日本。人間歳を取ると、外出する機会が減り自宅で暮らす時間が長くなる傾向にありますが、体力や健康面での衰えを理由に、自宅や老人ホームなどに居ながら整容を希望する高齢者も増えています。在宅を基本とする高齢者の生活に対して、美容師はどういったサービスや社会貢献ができるのでしょうか?

自宅まで出張。介護美容師・福祉美容師の仕事内容

介護美容師・福祉美容師とは、身体介助を必要とする高齢者や障がい者などに対して、ヘアカットや洗髪、カラーリングやパーマなどの整容を提供する美容師を指します。サービスを必要とする多くの人は、健康面の理由で外出が難しいか、認知症などにより周囲の人たちとの意思疎通が難しい場合がほとんどです。そういった人たちのために、介護美容師・福祉美容師は自宅や介護施設などに出向いてサービスを提供します。

なお「介護美容師」または「福祉美容師」は総称であって、それ自体が正式な職業名というわけではありません。しかし、深刻な高齢化社会を迎えている日本にとって、今後、このような出張サービスに対するニーズはますます増え、介護美容師・福祉美容師に対する期待と社会的信用は高まっていくものと思われます。

美容師免許は必須の資格

介護美容師・福祉美容師になるには国家資格である「美容師免許」が必須となります。専門学校など厚生労働省が定める養成施設に入り、通学で2年間、通信講座の場合で3年間のカリキュラムを終える必要があります。

カリキュラムを修了した後、美容師の国家資格を受験することが可能となります。ここで合格して、晴れて「美容師」を名乗ることができるのです。

介護美容師・福祉美容師を目指す人にオススメの資格

次に介護美容師・福祉美容師を目指す人に有効な資格を紹介します。いずれも認定資格で、美容師の国家資格を所持している人がさらなるスキルアップを目指すために取っておきたい資格になります。

認定福祉美容介護師

「認定福祉美容(理容)介護師」は、福祉の基礎や医学・薬学の知識を身に付けた上で、理美容が施せる技術を習得できるカリキュラムです。前項のとおり美容師(または理容師)の資格取得者か、専門学校などのカリキュラム修了者または単位取得見込みのある人が受験することができます。

通信による1次課程では病院環境衛生学や医科薬科学を学び、続く2次課程では、訪問サービス提供についての基本や、身体の清拭や用具の整え方、ヘッドマッサージ、緊急時の応対方法といった内容をスクーリングで学びます。なお、1次課程と2次課程は順序を入れ替えて受講することも可能で、忙しい人でも柔軟にスケジュール調整ができそうです。無事に両課程を修了した人が最終審査を経て合格となります。

・認定福祉美容(理容)介護師(特定非営利活動法人 医療福祉情報実務能力協会)
https://www.medin.gr.jp/exam_sche/exam_riyoubiyou.html

訪問福祉理美容師

「訪問福祉理美容師」は、介護や医療の基礎知識に加えて理美容道具の取り扱い、高齢者とのコミュニケーション、消毒・感染症対策を1日で学びながら資格取得ができます。受験資格は「認定福祉美容(理容)介護師」と同様です。延べ6時間の講義修了後、認定証が交付されます。札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡の全国7都市で講座を開いています。

・訪問福祉理美容師(一般社団法人 日本訪問福祉理美容協会)
https://jvbwa.or.jp/qualification/

福祉理美容士

「福祉理美容士」は、外出が困難な高齢者や障がい者を対象にサービス提供を行うもので、正しい身体介助方法に加えて、寝たきりの状態での散髪やシャンプーといった具体的な技法を伝授します。受講後は、実践に備えた器具の優先販売などの特典もあります。受験資格は美容師または理容師の資格所持者となります。カリキュラムも自宅学習後の課題提出プラス2日間の実技講習と、比較的短期間で取得できるのもポイントです。

・福祉理美容士(認証NPO法人 日本理美容福祉協会)
https://www.f-npo.org/academy.html

必須ではないが、あるとベターな介護系の資格

一方で、介護美容師・福祉美容師になるためには、介護に関する資格は特に必要ありません。介護美容師・福祉美容師はあくまで散髪などのサービスを提供することが目的であって、利用者の日々の生活を援助するわけではありません。

ただし、寝たきりや車いすの使用者など移動が難しい人もいるため、場合によっては移動(移乗)のサポートをする必要が出てきます。正しい知識を持って人や用具に接することができなければ大きな事故につながる危険があるため、介護の知識はあるに越したことはありません。

一般的には「介護職員初任者研修」(旧介護ヘルパー2級)が有効でしょう。国家資格ではありませんが、介護職員になるための基礎内容を網羅した資格で、座学・実技合わせて最短で1か月ほどで取得可能です。さまざまな福祉系事業者が養成講座を展開しているため、地域性に関係なく受講しやすい点も大きな魅力です。

しかし、実際に介護職に就くことを想定した資格なので、数日間、老人ホームなどの施設に出向いて行う体験型の実技も含まれています。そのため、美容師の仕事と並行しながら資格取得を目指すには、なかなかの根気が求められるはずです。

認知症に特化した民間資格も多数

認知症介助士

サービス利用者に認知症の症状がみられる場合、意思疎通が難しいためコミュニケーション面で大きな不安を抱えてしまいます。ここで認知症への正しい理解が少しでもあれば、散髪のなどのサービスも比較的スムーズに行えることでしょう。

例えば「認知症介助士」の資格では、あらゆる生活環境を想定して、認知症がみられる高齢者への正しい接し方や介助方法を学びます。この資格は、ショッピングセンター、映画館、遊園地といった商業施設や、鉄道、航空、タクシーといった公共交通機関などが、会社ぐるみで従業員に資格取得を薦めている傾向もあるため、世間的に機運が高まっている資格の一つと言えます。

・認知症介助士(公益財団法人日本ケアフィット共育機構)
https://www.carefit.org/dementia/

認知症サポーター

また、正式な資格ではないですが、全国の自治体が主催する「認知症サポーター」の活動も、認知症の基本を知る大きな手がかりとなるはずです。介護系の資格は民間のものを含めると実に多数存在しますが、費用や資格取得のために費やせる時間などを熟考した上でチャレンジしたいものです。

・「認知症サポーター」について詳しくはこちら
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089508.html

フリーランスで独立したい人の強みになる可能性も

近年、美容関係者が施術スペースを間借りしてサービスを提供する「シェアサロン」が台頭してきました。フリーランスや独立を目指す美容師は全国にたくさんいることとは思いますが、自分の店を持つには多額の資金を要することから、ローリスクで始められるシェアサロンは高い注目を集めています。

しかし、特定の美容室に所属しない以上、自分自身のPRや顧客獲得は独力で行わなければなりません。こういった現実を目の当たりにしたとき、介護美容師・福祉美容師の肩書があれば、ほかの美容師との差別化が図れて、さまざまなシーンで重宝されることでしょう。また、出張でサービスを提供することからも、身軽に動けるフリーランスとの相性もぴったりのはずです。

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公益性が高く、誰かの役に立つ介護美容師・福祉美容師の今後

以上のことから、介護美容師・福祉美容師は公共性が高く、社会そして地域貢献できる仕事であると言えます。フリーランスはもちろん、従業員を抱える美容室にとっても、介護美容師・福祉美容師の有資格者がいることは大きなセールスポイントとなるはずです。今回ご紹介した資格取得を念頭に置いて、新たな可能性にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

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店舗BGMアプリ「モンスター・チャンネル」が運営する店舗運営情報magazineの編集責任者。