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飲食店の開業でネックとなるのが、店舗の設備費やスタッフの人件費など……。しかし、そうしたリスクをできるだけ少なく開業できる方法を知っているでしょうか?

いま、店舗開業の新しい手段として注目を集めているのが、“無店舗型”の飲食店。別名「ゴーストレストラン」と呼ばれる、アメリカ・ニューヨークを発端とした新しいビジネスモデルは、日本でも広がりを見せています。

今回は、世界で盛り上がりをみせる「ゴーストレストラン」をはじめるための基礎知識やメリット、先進事例などを説明していきます。

 


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店舗を“持たない”飲食店。それが「ゴーストレストラン」

ゴーストレストランとは、実店舗のない「バーチャルなレストラン」のこと。

間借りするシェアキッチンで調理をおこない、「UberEats」などのフードデリバリーサービスを通じて注文を受け配達する仕組みによって、営業をおこなう飲食店を指します。

店舗も、配達網も、場合によってはキッチンも自前で持たず、それぞれを補うサービスを活用して最小限のコストで運営。ゴーストレストランのトレンド発祥の地といわれるニューヨークではこのスタイルの飲食店が増えているそうです。

「【店舗も修行もいらない】ホリエモンが考える、これからの飲食店の形をまとめてみた」でもご紹介したように、“廃業率が多い飲食店の経営で店舗を持つことは大きなリスクも伴う”ことは事実。

そのため、店舗を持つことの「リスクとコスト」を下げるための新しい選択肢として、日本でも注目を集めているのです。

必要最小限の設備があればいい。「ゴーストレストラン」のメリット


ゴーストレストランのような店舗を持たないことのメリットは、「手軽にはじめられ、最小限のコストで運営できる」こと。

お店を構えて飲食店を経営するには、必然的に「店舗の家賃」、「スタッフの人件費」などの固定費がかかるもの。また、飲食店の集客には、“立地”が重要。人口の多い、大都市圏の中で人が集まる場所に出店すると、賃料はさらに高騰します。

その一方で、多くの飲食店の売上は「収容人数×客単価」で決まりますが、店舗を持つ場合、そこに収容できる人数には限界があります。

しかし、ゴーストレストランはホールを持たないため、席数に応じた収容人数に限りはありません。キッチンとシェフとデリバリースタッフだけでレストランは成立。デリバリーの部分を「uberEats」などの外部サービスにお願いすれば、キッチンとシェフだけでお店が回るのです。

また、飲食店を開業する際にホールスペースが不要になれば、お店の賃料を安く抑えることが可能になります。通常の飲食店であれば人の多い場所に出店しなければ集客が難しいもの。しかし、デリバリー専門ならば、賃料が安いエリアにキッチンを作ることもできるのです。

ゴーストレストランには、こういったさまざまなメリットがあるのです。

海外ではもはや当たり前。日本にも登場する「ゴーストレストラン」

では、実際にどんなゴーストレストランがあるのでしょうか。ここではその事例をみていきましょう。

ゴーストレストランの走り「Green Summit Group」


出典:Leafage

代表例として挙げられるのが、ニューヨークを拠点とするフードスタートアップ企業「Green Summit Group(グリーンサミットグループ)」です。

同社は2013年に創業して以来、「Leafage」や「Butcher Block」、「Grind」など14種の飲食ブランドを運営。サラダやサンドウィッチ、スムージーといった幅広い料理をすべてオーダーメイドで提供しています。

保有しているのは独自に管理しているキッチンのみ。もちろん実店舗はありません。アメリカのデリバリーサービス「GrubHub」などを利用し、ニューヨーク・シカゴを中心に拡大中の、ゴーストレストランの大手企業です。

Green Summit Group

ドイツ発祥のゴーストレストラン「beets & roots」

出典:beets & roots

2016年末、ドイツ・ベルリンに誕生した「beets & roots(ビーツアンドルーツ)」も、ドイツのデリバリーサービス「foodora(フードラ)」を利用したゴーストレストランです。

新鮮な野菜を使ったボウルやラップ料理をメインにサービスを展開。当初は実店舗を持たずに事業を開始しましたが、業績好調につき、2017年に小さな専門店もオープンしました。現在は店舗型のお店として、宅配アプリで配達するお店に進化しています。

beets & roots

日本初のゴーストレストラン「6curry」


出典:6curry

日本国内におけるゴーストレストランの代表格は「6curry(シックスカレー)」です。

同店はハンディスタイルの本格スパイスカレー「カップカレー」を提供する「UberEats専門店」として東京でスタートしました。見た目もかわいく、野菜もしっかり摂れるようにと開発されたカップカレーは、女性を中心に人気を集めています。

「6curry」は「beets & roots」と同じく、独自でキッチンを保有せず、レストランのキッチンの一部を間借りしてサービスを営んでいました。そして、2018年9月に初の実店舗である「6curryキッチン」をオープン。ゴーストレストランでさまざまな実験をし、実店舗を持つことに成功した好例といえるでしょう。

6curry

ゴーストレストランの開業を後押しする「シェアキッチン」と「フードデリバリー」

ゴーストレストランが注目を浴び、じわじわと広がりを見せる背景には、シェアキッチンとフードデリバリーサービスの成長があります。

ニューヨークでは、シェフ起業家が入居するコワーキングスペース「FOODWORKS(フードワークス)」が2016年にオープンし、食の領域に特化した企業を支援する動きがはじまっています。

また、国内でもいくつか同様の事例が登場。さっそく、活用できるサービスをみていきましょう。

シェア型レストランで、賃料が安くまかなえる!


出典:favicon

たとえば、食マーケティング企業の「favy」社が、今年9月銀座に「シェフのためのコワーキングスペース」をオープン。シェア型レストランという飲食に特化したコワーキングスペースは、日本初といわれています。

この「シェフのためのコワーキングスペース」は、約120坪の広さで120席ほどのシェア型飲食店。キッチンの中には5人のシェフが滞在できるスペースがあり、それぞれに調理機材と収納スペースが用意されています。ここに入居するシェフは、各自でメニュー考案と料理提供がおこなわれるため、来店客はさまざまなシェフの料理を楽しむことができるのです。

他にも、約60席のコワーキングスペースのほか、試食会や調理器具のテストができるシェアキッチンが完備された「SENQ京橋」や「飲食店営業」と「菓子製造業」の許可を受けているシェアキッチン「8K(ハチケー)」なども登場。新しい飲食サービスをテスト的にはじめたいときに活用できそうな施設も増えてきています。

デリバリーサービスの活用で、お店を持たずとも提供できるように

シェアキッチンの登場に加え、ゴーストレストランの流通を支えるのが、“フードデリバリーサービス”。この流通網の進化が、多額の資金を必要とせずとも、手軽に飲食業をはじめられるようになった理由です。

日本では、フードデリバリーサービスの代表格「UberEats」をはじめ、全国16,000店舗以上と提携を結ぶ「出前館」も存在感を高めてきており、飲食店の開業ハードルを下げることに繋がっているのです。

ゴーストレストランで、思い切って、チャレンジを

お店をはじめるときに、「ゴーストレストラン」として無店舗でのスタートを切ることの一番のメリットは、「リスクを最小限に抑えて、最大限のチャレンジができること」でしょう。

「まずは、自分の料理の腕前を試したい」「考案したメニューのアイディアが受け入れられるのか試してみたい」いうチャレンジ精神があるのなら、この開業手法を使わない手はありません。実店舗を構えての開業は、失敗すると多額の借金を抱えるリスクもあります。しかし、無店舗なら、たとえ失敗したとしても、やり直すことができるのです。

飲食店開業時の新しい選択肢として、「ゴーストレストラン」を検討してみてはいかがでしょうか。
 


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店舗BGMアプリ「モンスター・チャンネル」が運営する店舗運営情報magazineの編集責任者。