流行は時代を映す鏡。その時代ごとに流行りのヘアスタイルが存在しますが、ライフスタイルや価値観の多様化にともない、一人ひとりが理想とする髪型も流行とは別に、それぞれの嗜好や価値観に基づいた個性あふれるものになりつつあります。
今回は、美容師という立場から顧客の髪の状態を見極め、理想どおりのドレッシングを実現する「ヘアケアマイスター」の資格について、その概要を紹介します。
1.コミュニケーションで理想の髪へと導くヘアケアマイスターの役割
2.ヘアケアマイスター資格取得のメリット
3.ヘアケアマイスターの申込み方法
4.4つのコースを順次クリアして得られるヘアケアマイスターの称号
5.個人でもチームでも高みを目指せる資格
コミュニケーションで理想の髪へと導くヘアケアマイスターの役割
「ヘアケアマイスター」とは一般社団法人ヘアケアマイスター協会が設立した民間資格で、お客さんの毛髪診断を正しく遂行し、その結果に対する的確な処置、アドバイスができる美容師にだけ与える称号としています。
女性の社会進出が進み、いまやファッションや美容にお金をかけ“自分磨き”をすることが当たり前の時代です。当然、美容室に来る人のヘアスタイルに対する要求も高いものになってきており、美容師一人ひとりの仕事への責任感も増してきました。
また技術だけでなく、サロンにおける美容師のコミュニケーション能力も問われています。深い知識を持ったお客さんもいれば、髪に不安を抱え、希望する髪型がイメージできないというお客さんもいます。お客さんとの会話を糸口に、理想のヘアスタイルをうまく導いてあげるのも美容師の腕の見せ所です。
ヘアケアマイスターでは、初見で現状を見極め理解してもらう「現状説明」。施術内容を論理的に説明し安心感を持ってもらう「技術説明」。そして術後に「お手入れ方法」を助言し、アフターフォローに努めるようにしています。
いずれにしろ両者のコミュニケーション無くして信頼関係は生まれません。この信頼関係によって美容院と顧客の結び付きが強くなり、ひいては業界全体の活性化へとつながっていくのです。
ヘアケアマイスター資格取得のメリット
ヘアケアマイスターの称号により、蓄えた知識をもとにより幅広い提案ができることが資格取得の第一のメリットと言えます。
美容院戦国時代などと呼ばれて久しいですが、すでにブランドが定着しているお店や“カリスマ美容師”を呼び水に脚光を浴びるお店もあれば、人知れず淘汰されていく美容室もたくさんあります。このような厳しい競争の中、ヘアケアマイスターの資格取得は他院と差別化を図れるチャンスともなります。
もちろん美容師個人にとっても、一定の顧客獲得によってインセンティブが得られたり、将来の独立につながったりとメリットは盛り沢山です。これからの時代、特定のサロンに属さない働き方も提唱されているため、こういった資格は美容師を助ける大きな武器となるはずです。
ヘアケアマイスターの申込み方法
ヘアケアマイスターは美容師(または理容師)のための資格です。そのため、国家資格である美容師・理容師の免許は必須で、なおかつ実務経験が求められます。プロの美容師がプラスアルファで取得する資格と考えてください。
試験は2段階方式となっており、ヘアケアマイスターの1次コースは毎年10月に、2次コースは翌5月に実施されます。試験はすべてマークシート方式で、問題はヘアケアマイスター協会が発行する公式教則本から出題されます。資格は4段階にレベル分けされていて、初等のコース(プライマリーコース)に合格すると次のコースが受験できるステップとなっています。
申込みは、美容室で使う器具や用具などを販売するヘアケアマイスター協会の会員ディーラーが窓口となっていますが、取引先にいない場合は同協会に直接申し込むことも可能です。そして会員には、全国の美容ディーラーのほか、誰もが知っているような有名化粧品メーカーや美容系専門学校などが名を連ねています。
合格者は毎年有名ホテルを会場にした授与式に参加することができるため、自己PRや同業他社と情報交換できるなど、横のつながりが広がる可能性もあります。
4つのコースを順次クリアして得られるヘアケアマイスターの称号
前章で触れたとおり、ヘアケアマイスターは4段階のレベルで構成されています。ここでは各コースの概要について説明します。
プライマリーコース
最初に受けることになるのがこのプライマリーコースです。「毛髪化学」「毛髪カウンセリング」「ヘアケア剤」の3部構成となっていて、毛髪の基本的な構造からお客さんを前にしたカウンセリングの心得、そして実際に使用するシャンプーやコンディショナーの成分や効果などについて学習します。
初等だけあって難易度は比較的低く、100の設問に対して75点以上が合格ラインとされています。
ミドルコース
プライマリーコースの合格者が進むのがミドルコースです。ミドルコースでは、プライマリーコースの内容にプラスして「ヘアカラー剤」「パーマ剤」の基礎を学習します。ヘアスタイルの仕上がりを左右する要素だけに気が抜けません。
プライマリーコースと同じく100問中75点が当落線上となっていますが、カバーする範囲が増えただけに合格率もだいぶ低くなってきます。
マイスターコース(1次・2次)
最後はヘアケアマイスターの登竜門となるマイスターコースです。10月に行われる1次コースでは「スキャルプケア」「皮膚化学」を学びます。髪の成分や使用薬剤に注目したこれまでのコースとは異なり、人間の身体の組織にまで踏み込んだ、より奥深いカリキュラムとなっています。
5月に行われる2次コースではコミュニケーションスキルを学びます。自分の知識を正しく伝えられること。そしてお客さんの要望を正確に引き出し、実現するためのスキルを取得します。2次ではこれまで使用してきた教則本とは別の専用テキストからも出題されます。
マイスターコースでは、1次・2次ともに100問中85点以上が合格とされ、特に2次ではテキスト2冊分から出題されるため覚える内容も広範囲になります。やはりマイスターコースは狭き門で、合格率は1次・2次ともに20%前後となっています。
個人でもチームでも高みを目指せる資格
美容師ならば誰でも受験できるヘアケアマイスターですが、歴代の合格者を見るとサロンの代表者が率先して受験して結果を出しているようです。リーダーが良い結果を出せば、おのずと一緒に働く人も追従するようになり、職場ぐるみで高い意識を持てるようになるシナジー効果があります。
お客さんのため、そして同時に自分たちを高めるためにも、ヘアケアマイスターの資格取得を皆さんで目指してみてはいかがでしょうか。