AIによる混雑予想データを活用した新型コロナウイルス対策事例インタビュー

withコロナ/afterコロナ時代と呼ばれる昨今、多くの店舗が経営に大きな打撃を受ける中で、IT技術を活用し感染拡大防止に努めながら、新たな店舗運営スタイルを確立する動きが加速しています。

今回は、株式会社ROXが提供する来店来客数予測システム「AI-Hawk-」の混雑予想カレンダーを活用し、新型コロナウイルスの感染予防を行う兵庫六甲農業協同組合(愛称:JA兵庫六甲)様にお話をうかがいました。

「AI-Hawk-」混雑予想カレンダーとは

Hawkは過去の来客数や販売数などのデータに、天候データ等の様々なデータ、独自開発した指標を用いて分析を行う需要予測AI。そのシステムに、新型コロナウイルス対策の一つとして追加されたのが“混雑予想カレンダー”です。混雑予想カレンダーのサービスを利用される施設には、ROX社スタッフよりAIが計算した最新の混雑予想カレンダーをメール添付で毎週送信されます。(9月中には自動化の開発を完了予定)

コロナ禍で生じた課題とAI活用による感染対策

――コロナ禍となった当初、店舗運営において生じた課題について教えてください。

JA兵庫六甲が運営する直売所である「六甲のめぐみ」は、毎日平均100人ほどの列ができるような店舗なのですが、それだけ朝の時間帯は密になりやすく、コロナ禍の当初はその混雑が大きな課題となりました。

――そこから「AI-Hawk-」の導入に至ったわけですね。

一番はじめに神戸市さんの方から「StopCovid19」という事業を通じて新型コロナウイルス対策に関する実証実験していくというお話を伺い、多くの企業やサービスをご紹介いただいたのですが、その中の“AIによる人数予測”という部分に関心を持ち、「AI-Hawk-」の導入に至りました。

――導入されてからはどのようなメリットを感じられましたか?

店舗としては、混雑予想データをお客様に事前にご覧いただけるようになったことが非常に大きいと感じています。これまでは職員の感覚的なものでしか表せなかったこともあり、あまりオープンにはできない部分だったものが、しっかりとAIに基づいて算出された予想ということで、SNSでの情報発信やお店での掲示ができるようになりました。

――お客様も空いている時間帯がわかることで安心して来店できますからね。

たとえば、朝の時間帯はその日の人気の野菜や果物をお目当てに来店される方が多いので混雑しやすいのですが、お米などの場合はどの時間帯に来店いただいてもご購入いただけるので、お客様としても「時間をずらして行こう」というふうに活用できているのではないかと思います。

社会問題となっている「フードロス」の解決にも

――ほかにはどのようなことにAIが活用できると考えていらっしゃいますか?

これまでの実績データをもとに数的根拠に基づいた予想をしてくれるので、色々と活用できるシーンは多いのではないかと思っています。

たとえば、現在の直売所では農家さんたちがその日に売れる量を感覚的に判断しながら持ってきてくださる流れなのですが、そこまで売れない日があったり、逆に大量に売れる日があったりします。AIの予想データを活用することで、将来的にはそのような需要の予測ができるのではないかと考えています。

――昨今では「フードロス」も社会問題として取り上げられる機会も増えましたが、AIはそういった課題の解決にも一役買いそうですね。

その可能性は十分にあるのかなと。農協としても「この品目は近年すごく伸びている」とか「この品目は逆に消費が鈍っている」ということをAIで予測して、農家さんに対して作付けの提案などができるようになれば面白いのではないかと思います。

――やはり数値的な根拠が示せるだけで説得力が違いますからね。

そうですね。6カ月後までの予測が可能であれば、作付けの提案がこちらからできるので、「この品目について、過去の実績から計算するとこれだけ売れるので、この面積で作付けするとこれだけの所得になります」というお話が今後できるようになるのではないかと。それは全国の直売所でも求めている機能なのではないかと思います。

――生産者である農家さんにとってもプラスとなる部分が大きいですね。

特に新たに農業に取り組まれるという方は「どれだけの面積で作付けすれば、どのくらい売れるんだろう」という実感がないと思うので、農協からアドバイスする一つの指針としてもすごく役立つだろうなと思いますね。

――AIのみならず、ほかにIT技術に可能性を感じる部分はありますか?

生産者と利用者向けに店舗内の農産物の在庫状況の見える化をIT技術を通じてできればと思います。また直売所は、一般の小売店と違い午前中の特定時間帯に来客が集中するという特徴があるため、利用者のレジ待ちの時間の解消に、会計を一瞬でする技術が導入できれば、ストレスフリーなお買物をお楽しみいただけると思います。

withコロナ/afterコロナ時代の新しい店舗運営

――新型コロナウイルスの感染予防として、ほかにはどのような対策をされていますか?

AIによる混雑予想のほかには、赤外線センサーを入口と出口に付けて、そこで入った人数と出た人数をカウントすることによってリアルタイムで店内にいる人数を把握しています。

あわせて、建物の中が密になりすぎないよう、お客様にお声がけして入場をお待ちいただいたり、店舗ごとの制限数にあわせてかごの量を予め減らしたり、接客カウンター前に透明なガードを設置したりと様々な対策を行なっています。

また、「六甲のめぐみ」は大型店舗ということもあり消毒にも時間がかかるので、営業時間を短縮し、その時間を使って店舗什器やかご等のアルコール消毒をしています。

――コロナ禍をきっかけに店舗運営の形も大きく変化しましたよね。

今回のことでより自分の店舗を把握することができたので、そこは良い点だったのかなと思います。AIや赤外線センサーなどの導入は新型コロナウイルス対策のみならず、様々なシーンで活用できますし、これまでの農協では使ってこなかった新しい技術を取り入れられたことは非常にありがたいことだなと感じますね。

――最後に、店舗運営における今後の目標や関係者のみなさんへのメッセージをお願いします。

「地域のみなさんに農産物を安心・安全に安定提供する」というのが直売所としての使命なので、今後の課題としても、販売形態は柔軟に変えていかなければならないと考えています。それについては神戸市さんや業者の方々、生産者のみなさんと力を合わせ、“今何が必要か”ということを一緒に協議しながら実現していきたいと思うので、これからもご協力をお願いしたいです。