サービスのセルフ化、業界初のセルフエステ『じぶんdeエステ』の経営戦略とは?

業界初、定額制、使い放題のセルフエステサロン「じぶんdeエステ」を展開する株式会社博心。2017年4月に1号店が麻布十番にオープン(現在は移転済み)し、その後も関東中心に東海・関西地方など次々と新店舗をオープンさせています。近年、サービスのセルフ化が多く見られますが、その背景にはどのような要因があるのでしょうか。
今回は、サービスを提供している株式会社博心の取締役社長、古川美佐子氏にインタビュー。サービス開始の経緯や運営状況、セルフ化の未来について伺いました。

「じぶんdeエステ」が生まれた背景とは?


(株式会社博心の取締役社長、古川美佐子氏)

――エステのセルフ化に至った経緯・きっかけを教えてください。

古川美佐子氏(以下・古川氏):セルフ化に至ったのは、実体験に基づいた「悩み」がきっかけでした。サービスを始める前、エステに通う側だった私は、1回2~3万円する個人サロンを1ヶ月1回のご褒美感覚で利用していました。しかし効果を実感できるほど何回も行く金銭的な余裕はなく、高い料金を払いながら続けるか悩みました。そんなある日、通っていた個人経営のサロンが閉店することになったので、エステに使用していたマシンを譲っていただいたんです。その日から、私の家でテレビを見ながら業務用エステマシンを使う日々がスタートしました。お金もかからず制限なく何度も使えるので、その後10kg痩せ、私は気づきました「わざわざサロンに行かなくても痩せるんだ」。そこで、高級なエステマシーン複数台を店内に用意し、お客様が自由に使用できるサービスを自分で作ってみようと決めたんです。

――サービス開始を決めた時点で、経営上の知識などはあったのですか?

古川氏:一緒に始めたのが、通っていたエステのオーナー(現代表の花田氏)だったので、基礎的な経営知識はあったものの手探り状態でした。2017年の4月に麻布の雑居ビルからスタートしたとき、サロンとは言い難い倉庫のようなところで、内装や見た目は今とは比べ物にならないくらいの状態でした。しかし、マシンは妥協せずに高級なものを置いたんです。とにかく予算がないこともありましたが、知識不足で広告も打てず、初日のお客様は0人でした…(笑)

――マシンのコストを抑えようとは思わなかったのですか?

古川氏:はい、サービス開始時に「マシンだけは絶対にいいものを置く」と決めていましたから。我々は、お客様が気軽に高級エステに置いてあるマシンを使ってエステ三昧できるような世界を作っていきたいと思っています。そのためにも、マシンを妥協してしまっては意味がないんです。

――確かに高級エステに「気軽さ」はないですね…。「じぶんdeエステ」が、エステを気軽にしたいと思った理由はなんですか?

古川氏:美容格差をなくしたいと思ったからです。私が地元から東京に上京してきたとき、周りのキレイな子は美容のために何をしているか聞きました。「ママとエステに行ってるよ」…ママとエステ?衝撃でした。お金がないとエステには行けない、格差を感じました。納得できないモヤモヤと、エステが高いというコンプレックスが生まれましたが、同時にそういった思いをしている方や、思い踏みとどまっている方は多いのではないかと考えたんです。そこで、高級エステとはお店の雰囲気や提供価値は違えど、誰もが気軽にエステを利用できるよう「高級エステ・クリニックにおいてあるマシンを自分で使える」をお店のコンセプトにしました。

サービスのセルフ化に伴うコストや課題点


(タブレットの活用で、使用方法の説明も自動化)

――セルフ化には、どのようなコストがかかりましたか?

古川氏:マシン購入と、セルフ化のシステム作りです。お客様が来店し退出していただくまでの一連の流れがすべてセルフになるわけですから、セルフ化に伴う機器の導入には多くのコストがかかります。アプリでお客様にマシンを選んでいただき、部屋まで行き、タブレットを使って使用方法を覚える。ここまで一切従業員の手がかかっていないのは「じぶんdeエステ」だけです。

――サービスのセルフ化にあたり、課題点はありましたか?

古川氏:一番はマシンの費用です。マシンに一番お金をかけているので広告が打てません(笑)。店舗を増やすことも最初は悩みましたが、Instagramを活用した集客により、少しずつお客様の人数は増えていきました。その後は仕入れ時のノウハウやコスト削減が適切にできるようになり、設置するマシン数の増加に伴って会員数も伸びていきました。お客様がエステを続けられないモヤモヤした気持ちと、社会的な人手不足、商業施設の経営戦略などの時代のニーズに、セルフエステというサービスがマッチした結果だと考えています。

サービスのセルフ化の実態


(個室以外にも「ジム」と呼ばれるパブリックスペースも設備)

――サービスのセルフ化によって、どのようなメリットがありましたか?

古川氏:一番はお客様が喜んでくださるということです。よく初めて来店された際に、驚かれるお客様がいます。理由を聞くと「自分が高額で通っていたエステで使用したマシンがそこにある!!」諦めや後悔と同時に、このサービスがあって本当に良かったとおしゃっていただけるんです。その声を聞けるのが、なによりのメリットです。
店舗としては、スタッフの教育費・スケジュール管理などの時間的コストも含めた人件費を抑えられる点がメリットですね。いずれは完全無人化やキャッシュレスの導入も考えています。より効率的に資産を運用し、マシンの増量や店舗数の拡大も検討しています。

――支払いには定額制のサブスクリプションモデルも採用していらっしゃいますが、売り上げが会員数に左右されるなかで、価格設定はどうしていますか?

古川氏:私どもが考える点は「部屋数」と「マシン費用」です。一度に抱えるお客様の数を把握・調整できれば、消耗品や、飲食店のような材料費がないので、主にかかるコストはマシンの費用になります。会員数が増えれば増えるほどマシンのコストは下がるので、人数を抱えるキャパと、部屋数に応じたマシン台数の釣り合いが重要になります。サービス開始当初は、どのくらいの値段なら受け入れてもらえるかわからなかったので、価格設定は探り探りでした。その後お客様が増えるにつれ、抑えるべきコストや適正料金がノウハウとして身についてきたので、ご利用時間と金額は自然と定まっていきました。

――継続して定期購買していただくための工夫などはありますか?

古川氏:店舗とお客様の「つながり」を大事にしています。Instagramのアンケート機能でお客様の声を集め、新しい店舗やマシンを展開するときにはそれをできるだけ反映しています。直接的にお客様と関われているわけではありませんが、Instagramで毎日ライブ配信をするなど、コミュニケーションを大切にしています。店舗が積極的に情報を発信し、活動している様子を伝えることが重要です。店舗の様子をお客様に自分ごと化してもらい、参加してもらう。お客様と一緒にお店を作ることをモットーにしています。

――具体的にお客様の声を反映させたものは何ですか?

古川氏:我々のターゲットは、学生さんから高齢の方まで幅が広いです。Instagramで若い方が情報をキャッチアップしてご家庭内で共有することで、幅広い層のお客様の認知が可能になっていると思います。なので、親子で来店してくださる方も非常に多いんですよ。娘と一緒に入れる部屋が欲しいという声から「二人部屋」を設けたり、家族の新たなコミュニケーションの場としても、役に立てていると思います。また、価格がお得と感じていただいたお客様の声から、紹介サービスも導入しました。

セルフ化の未来について

――サービスのセルフ化を検討している個人店舗オーナーが、セルフ化を実施するために必要な設備・準備(従業員への教育等)などはありますか?また、実施にあたり注意点がありましたら教えてください。

古川氏:まだセルフ化していない物事から生み出すのがいいと思います。なかでも、消費者が抱くネガティブな感情を解決できるようなものであればサービスとして提供できると思います。ただ注意したいのが、最初から欲張り多くのものに手を出すのではなく、「あるものから」始めることが重要です。そのなかでも、「絶対に譲れないポイント」を作るとなおいいと思います。「じぶんdeエステ」であれば、マシンは絶対にいいものを置く。広告も無料のSNSを活用してコツコツやっていく。店舗も最初は雑居ビルで始めるなど、マシン以外のものはすべて捨てて運営していました。軸となるもの以外はできるだけ削ってやっていくことがいちばん大切。その後回せるようになってから、整えていく。セルフに限った話でもないですけどね。

――近年ICT技術の進歩により、サービスのセルフ化が増加しています。便利になる一方で、店舗側がセルフ化してはいけないものはなんだと考えますか?

古川氏:セルフ化によって店舗の無人化は進むと思いますが、お客樣とのつながりがなくなるわけではありません。現在行なっているInstagramでの発信のように、直接ではないバーチャルの世界であっても、お客様とのつながりを無人化することは絶対にあってはいけないと思います。なぜなら、お客様が求めるのはサービスの便利さだけでなく、人との関わりだからです。セルフ化ですべての工程を基本的にはお客様お一人で行いますが、店員とのつながりやお客様同士のつながりによって、エステを続けるモチベーションにもなっていると考えています。

じぶんdeエステ