お店の開業資金はいくらかかる?イニシャルコストとランニングコストについて解説

はじめてお店を開業する人が最初に直面する課題は、スタート資金です。お店を始めるにはどのくらいの費用がかかるのでしょうか?また、開業後にはどのような運営費用がかかるのでしょう。
今回は、これからお店を開業する予定の方、すでに運営している店舗経営者の方も知っておきたい「イニシャルコスト・ランニングコスト」を解説します。店舗の利益拡大に役立つ「損益分岐点」、「ROI」との関係についても把握しましょう。

イニシャルコストとランニングコストの違い

店舗の開業・運営には多くのコストがかかります。店舗経営者としては、どこにどんな費用がかかっているのかを事前に把握し、削減できるポイントを明確にできれば、店舗の利益につながるのです。費用(コスト)の分け方にはいくつかありますが、店舗の経営に役立つ大きな分類方法に「イニシャルコスト」と「ランニングコスト」があります。

イニシャルコスト

「初期費用」を意味します。名前の通り「イニシャル(initial)」が「初めの・最初の」を指し、「コスト(cost)」が「費用」で「最初にかかる費用」となります。店舗開業に必要な物件の取得にかかる費用、仕入れ時に使用するトラック購入費用、器具や備品の費用などの「導入費」と認識していただければわかりやすいでしょう。これらは売上の増減にかかわらず発生する費用のため、会計上「固定費」として分類されます。

ランニングコスト

「維持費用・管理費用」を意味します。「ランニング(running)」が「運用する・維持する」を指し、何かを新しく始めた・導入した際に、それらを運用・維持するためにかかるコストです。たとえば、上述したイニシャルコストに分類されるトラックを運転する際には、燃料や車検代がかかります。これらの費用は、店舗にとって継続的に運用・管理するためのコストなので、ランニングコストとなります。またランニングコストは、トラックの燃料のように、その使用量に比例して増減するため、会計上は「変動費」として分類されます。

イニシャルコスト・ランニングコスト

店舗の開業・運営にはイニシャルコストとランニングコストが欠かせません。店舗経営の際にはコストをできるだけ抑え、コストパフォーマンスのいい運営を目指したいもの。しかし多くの場合、イニシャルコストは店舗にとって開業に欠かせない資源の購入・導入にかかる費用となり、積極的なコスト削減は限られます。たとえイニシャルコストを抑えられたとしても、ランニングコストがかかってしまえば意味がありません。店舗開業の際には、イニシャルコストとランニングコストのバランスを考え、上図のように2つのコストを合わせた「トータルコスト」の削減が重要です。では、トータルコストを削減するには何を意識すればいいのでしょうか。店舗の利益を計画的に考える上で参考となる指標「損益分岐点」との関係をみていきましょう。

損益分岐点との関係

損益分岐点

損益分岐点とは、売上高と費用の額が等しくなるポイントを指します。損益分岐点を上回れば利益が発生し、下回った場合は赤字になります。店舗経営者は損益分岐点を設定した上で、売上高と費用のバランスを考える必要があるのです。月のランニングコストが20万円、収益が60万円の場合、店舗の利益は40万円となります。ただし、ここで注意したいのがイニシャルコスト。店舗を開業する際に2000万円のイニシャルコストがかかったとします。1ヶ月40万円の利益を得ている店舗は、イニシャルコストを回収するのに50ヶ月かかる計算になります。つまり、イニシャルコストをどれだけ抑えられるかが店舗の利益に直結するのです。ランニングコストは売上を立てるための費用ともいえるので、ランニングコストを削減し売上も下がってしまっては本末転倒。店舗経営者にはイニシャルコストの削減と、費用対効果の高いランニングコストの設定が求められるのです。

押さえておきたい!イニシャルコストの種類は?

イニシャルコストの種類

では具体的に、店舗の開業時にはどのようなイニシャルコストが発生するのでしょうか。業種業態に関わらず発生する「物件取得費用」・「内外装工事費」を紹介します。

①物件取得費用

物件取得費用とは、物件を契約するまでにかかる費用の総称です。物件取得までには多くの項目に別れた多額の費用がかかります。店舗開業の際にかかる最初の大きな費用です。では、その内訳を見ていきましょう。

【保証金(敷金)】 支払い額相場:およそ賃料の6~12ヶ月分
家賃が支払われなかった場合の費用や、部屋を退去する際の原状回復費用として、入居前に貸主が借主の債務を担保するために預かる保証金をいいます。一般的な住居を借りるときと同様に、契約終了時には償却分を差し引いた金額が借主に戻ります。

【礼金】 支払い額相場:およそ賃料の1~2ヶ月分
その名の通り、契約時に貸主にお礼として支払う費用をいいます。保証金(敷金)とは違い、一度支払った礼金は戻ってきません。地域によっては礼金という文化・概念がない場合もあります。

【仲介手数料】 支払い額相場:一般的に賃料の1ヶ月分以内
不動産を通して契約した場合、物件紹介の成果報酬として支払う費用です。

【前払い賃料】 支払い額相場:契約日から翌月分までの賃料
契約した月の翌月分の家賃を前もって支払うための費用をいいます。この際、契約した月の残り日数分も、日割り計算で支払います。

②新装・改装費用

物件取得費用の目処が立った後は、店舗で使用する器具や備品、店舗のコンセプトを反映した内装・外装を構築する費用がかかります。店舗経営者のこだわりや個性によってかかる費用も変わるため、資金と相談しながら進めましょう。
新装・改装費用を抑えたい方には、「居抜き物件」の活用がおすすめです。居抜き物件とは、前のテナントが使用していた設備などがそのまま残っている物件をいいます。テナントによってそれら設備を無償で引き渡す場合と、買い取りを求められるケースもありますが、一から用意するよりもイニシャルコストを抑えられるメリットがあります。

参考記事:居抜き物件をうまく利用して、開業時の初期投資を抑えよう!

【器具・備品】
テーブルやイス、棚、レジスター等が含まれます。飲食店の場合は、冷蔵庫・コンロ・シンク・家電製品などの厨房機器が必要でしょう。サロンは専門機器を一式揃える、お客様サービスとしてウォーターサーバーを設置するなど、業界業種によってかかる費用は異なります。器具の用意には、複数の設備会社や工事会社から見積もりをもらい、最適な価格を比較検討しましょう。

【内装・外装費】
内装費には床(カーペットやフローリング)や天井、壁、窓などの改装費が挙げられます。また、目に見えない部分では電気・水道工事、ガスの配管工事への費用がかかります。上記で紹介した居抜き物件を活用すれば、最低限の費用・短い工事期間で内装を完成できるため、内装にかかる費用は物件の条件によって大きく左右されるのです。
外装費には、看板の制作費、外装塗装、物件状態によっては清掃費や修理費も含まれます。外装はお客様が最初に目にする部分。店舗の印象を決める大きな要因として、費用を意識しながらも最大限の集客効果が出るよう工夫が必要です。

代表的なランニングコスト

ランニングコストの種類

店舗運営のために発生するランニングコスト。ここでは代表的なランニングコストを紹介します。

【原材料費】

製造のためにかかる費用をいいます。飲食店の場合は食材が原材料となるため、店舗運営には欠かせないコストです。売上の目標を立て、利益発生のためには毎月どの程度の原材料費がかかるのかを予測し、計画的な運営を目指しましょう。

【人件費】

人件費は、店舗運営の継続のために発生する費用のため、ランニングコストに分類されます。この場合、従業員1人にかかる保険や福利厚生、通勤手当も人件費とみなされます。

【光熱費】

電気やガス、水道代です。店舗のピーク時以外は空調を弱める、バックオフィスの節電など、店主や従業員の工夫によって削減できるコストです。無駄な光熱費を節約し、店舗の利益拡大につなげましょう。

【広告費】

チラシやポスティングなどオフラインでの宣伝や、Webサイトの構築、Web広告といったオンライン上の広告費をいいます。店舗の認知度が低い開業初期には多くの広告費がかかるでしょう。店舗は広告効果を都度確認し、効果の大きい広告に絞って費用をかけることが重要です。

投資したお金を回収できたかどうかを示す「ROI」とは

店舗の開業にあたり、ここまで紹介したイニシャルコストやランニングコストを把握し、資金回収プランや利益計画を立てる店舗経営者の方も多いかと思います。そこで役に立つのが「ROI」です。
ROIとは「Return On Investment」の略で、「費用対効果」を意味します。費用に対し、どの程度の収益を得られたかを示す指標です。広告費をはじめとする、店舗の利益のためにかけたランニングコストが、効果的に働いているかを確認する指標として活用できます。

ROIの計算方法

ROIの計算方法

ROIは上記の計算方法で求められます。たとえば広告を用いて商品を販売し、1ヶ月で60万円の収益、40万円の総費用がかかったとします。この場合ROIは(60万円−40万円)÷40万円×100=50%です。ROIが50%とは、1ヶ月でかけた総費用のうち、50%の回収を意味します。つまり、2ヶ月で総費用のすべてを回収できることになるのです。毎月かかる費用に対しどの程度の利益を上げればいいのか、今後の計画を立てる際に役立ちます。
費用対効果を把握し、最適なランニングコストを導き出しましょう。

まとめ

今回は、店舗の開業・運営時に把握しておきたいイニシャルコストとランニングコストについて解説しました。ポイントを振り返ってみましょう。

① イニシャルコストは会計上の「固定費」、ランニングコストは「変動費」を指す
② イニシャルコスト・ランニングコストの種類は多岐にわたる
③ 店舗経営者は、損益分岐点を意識したコストの削減・設定が求められる
④ 「ROI」の活用が、最適なコストバランスを導き出す

店舗が利益を生み出すには、必ず費用もかかります。これから開業を目指す方は、開業後に必要となってくるランニングコストも考慮しながら、イニシャルコストを抑える努力をしましょう。まずはコンセプトに沿った物件や備品等を明確にし、事業計画書を作成してみてはいかがでしょうか。

参考記事:最初の2秒で決まる!「なんとなく良いお店」と思ってもらえるコンセプトの作り方