monstar.ch

「お店を持ちたい」。そう思い立っても、新規開業のためのノウハウを持っていないために諦めてしまう人が多いかもしれません。しかし、必要な知識を身につけ、コツコツと準備を進めていけば開業することは不可能ではありません。

カフェ兼アトリエの開業を夢みて、経験もなく、ゼロから準備を始めたデザイナーの大谷秀映さん。お店が徐々に仕上がっていく過程をOMISE Lab編集部がレポートします。

連載「経験ゼロからの開業日記」3回目のテーマは「間取り決め」です!

 

お客様をスムーズにお店に誘導する動線を意識

物件が決まったら、今度は間取りを考えなくてはなりません。居抜きの場合であれば必要ないかもしれませんが、ゼロから店作りをするなら早めの段階から取り掛かることが大事。間取り図は保健所など申請書類として必要になるほか、お店の骨格を決める大切な作業になります。

たいがい店舗の間取りを決める際には、お客様と従業員の動線の取り方、そしてショップのイメージ作りのふたつの視点からレイアウトを考えるのが最適です。このとき、お客様と従業員の動線は、あまり交差することがないように配置することがポイント。従業員側の動線は効率的で、なおかつ生産性の高いものを意識しなければなりません。

店舗イメージにあった間取りにするため、実測をしながら図面に手を加えていきます。

店舗イメージにあった間取りにするため、実測をしながら図面に手を加えていきます。

店舗のレイアウトを計画するときには、最初にカウンターの位置を決定してから始める場合が多いようです。カウンターの位置は、お客様と従業員の接点になる場所であり、店内で一番重要な位置でもあるからです。

また、ショップのイメージ作りにおけるレイアウトは、店舗のデザインや店舗全体から受けるイメージに大きく関係します。お客様をいかにスムーズに店内へ誘導できるか、その仕掛けづくりができているかが重要です。

レイアウトを作るまでに、店舗デザインにおけるコンセプトの明確化、店舗イメージの概要や魅力などがしっかりと決めておきましょう。なぜならば、これらが基本となり、間取りが決められていくことで、売上や客数に大きく影響してくるためです。

 

図面引き、解体作業、発注に保健所への申請…様々なことが同時進行に

「物件が決まると、不動産屋から入手した間取り図を元に、その寸法を実際に測ってから、どうやってお店を作っていこうかと考え始めました」というように、大谷さんの場合、間取り図を引く際には、すでに様々なことが同時進行していたそうです。

(大谷)「不動産屋からの間取り図は大まかなものでしかないので、実測しないと分かりません。全部細かく実測して、どのような作りにしようかイメージしながら、当時住んでいた家で同じ寸法のものを作ってシュミレーションして、間取り図を引いていきました。」

住んでいた家で、同じ大きさのものを用いてシュミレーション

住んでいた家で、同じ大きさのものを用いてシュミレーション

図面を具体的に引き始めると同時に、店内の解体を始めた大谷さん。通常は「スケルトン物件で入居する」、「居抜き物件で入居する」、「居抜きから好きにリノベーション」という3パターンに分かれるそうです。大谷さんの物件は自由に使うことができる条件だったので、元々ラーメン屋だった物件をスケルトン状態にすることからスタートしました。

(大谷)「解体するにあたって見積もりを取ったら、50〜60万円。これは予算オーバーだったので、妻と二人で解体作業をすることにしました。」

すっきり解体するのに費やした期間は約1ヶ月。この間にシンクの流しを発注。業務用の店舗が多くある合羽橋によく通っていたこともあり、合羽橋にある専門店で注文することに。

そして、飲食店を始める際に、絶対に忘れてはならないのは保健所の許可を得ること。しかし、自治体によって基準は異なります。

(大谷)「東京都のシンクの基準に合わせたものを探していたのですが、図面と寸法が合わないために特注しました」。

自治体によって規定が様々。保健所に申請する際は要チェック!

自治体によって規定が様々。保健所に申請する際は要チェック!

図面を引く際に苦労したことを、大谷さんはこのように語ります。

(大谷)「排水を流すための溝として、グレーチングというものがあります。このフタを塞いでしまうと掃除ができなくなるため、カウンターの長さを調整したりと、納めるための設計がものすごく大変でした」

図面引きに、床を剥がす解体作業、シンクの発注にさらに保健所への申請準備。保健所に図面を持って行った際にいくつかチェックを受け、1カ月後に作り直した図面を再提出。

ただ、大谷さんは以前から図面を書く仕事もしていたので、自己流ではありますが、かなり精度の高い図面が引けていたといいます。

(大谷)「最初のものとほとんど変わっていません。1〜2センチの誤差で納めることができています。その図面を元に、製氷機や冷蔵庫などは、ちょうど納まるものを同じメーカーで探して取り寄せました」

大谷さんが引いた実際の図面。最初のものとほぼ変わらなかったという。

大谷さんが引いた実際の図面。最初のものとほぼ変わらなかったという。

大谷さんは、店舗を保健所に「飲食店」として申請しています。飲食店の場合はカフェ営業と比べて基準がいろいろと厳しくなるため、図面を引く際から配線やキッチンの位置など事細かに反映していったといいます。

 

お店作りで大切なのは、具体的なイメージを描くこと。

図面を引く、解体、申請書類の作成……様々なことが同時に進んでいきました。大谷さんの場合、あらかじめ店のコンセプトやイメージがしっかり作り上げられていたので、思い描いているイメージをそのまま図面に落とし込み、基準に合わせて手を加えていったそうです。

こういう店作りをしたい、という明確な目標やイメージがないと、図面は引けないのです。

次回は、リノベーションの際におさえておきたいポイントを解説します。

▶️【経験ゼロからの開業日記】過去記事を読む

monstar.ch
著者情報
magazine 編集部

magazine 編集部

店舗BGMアプリ「モンスター・チャンネル」が運営する店舗運営情報magazineの編集責任者。