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店舗運営の経験なしでゼロからカフェ作りを始めたデザイナーの大谷秀映さんに密着。そのお店づくりを追っていく連載、「経験ゼロからの開業日記」。第1回では大谷さんのカフェのコンセプトメイキングに迫りました。

第2回では、失敗できない“物件選び”を実践。なかなか出会えない理想の物件に、大谷さんはどのようにして出会ったのでしょうか。解説を交えながらその様子を見ていきましょう。

 

理想の物件を見つけるために

飲食店を開業する際、人気のロケーションや一定の広さ、そしてリーズナブルな賃料を希望する人が多いでしょう。しかし、自分の理想通りの店舗物件を探し当てることはとても難しく、なかなか理想の物件に出会うことができません。

そのため店舗物件を探すときは、とにかく入念な準備が必要になるのです。賃料やロケーション、店舗面積などのポイントを絞り、具体化していくことで、理想の物件探しがスムーズに進んでいきます。

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例えば、人気駅界隈の好ロケーションにお店があれば、高い集客力とそれ相応の売上が期待できます。しかしそのような場所には空き物件が少なく、賃料はお高め……。さらに路面の場合は、2階以上の空中階にある物件だと、賃料が一気に2倍ほどまで高くなると言われています。つまり、好条件を期待すればするほど、賃料は高くなり、理想の物件はどんどん遠のいてしまうのです。

 

賃料を計算して、理想の物件を絞り込む

開業後の売上は、どのくらいを想定していますか?なんとなくしか想定できていなければ要注意。なぜならこの売上から、従業員の給料や運営費などを支払っていかなければならないからです。

実は賃料は、売上を想定できないと決めることができません。ロケーションや広さだけでは物件は探せません。ここで大切なのは、売上に見合った賃料を計算すること。そしてそこで出た数字から必然的に、希望するロケーションや店舗の広さが絞られてくるのです。

物件を探していく中で、忘れずに調べておきたいのが、店舗の履歴。不動産屋や物件の周囲の人に、その店舗で過去にどんなお店が営業していたのか履歴を尋ねてみましょう。人通りが多い駅近の路面店なのに、コロコロ店が変わっているような場合は、何かしらの問題があったことが考えられるからです。

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また、理想の物件に近づけるためには、気になる物件に足を運んで、そのエリアや物件の相場感をつかみましょう。そして、そこで得た情報をもとに、店のコンセプトを明確にし、出店するための条件を限りなく具体化しましょう。

どんな客がターゲットになるのか、どんな料理を提供するか、店の広さや席数、営業する時間帯などなど、かなり具体的にイメージすることが大切です。ここでイメージをはっきりさせることができると、物件を選ぶ際にどの条件が譲れて、どの条件が譲れないかの理由も見えてくるはずです。

では、ここからは実際に大谷さんがどのようにしてカフェの場所を決めたのか見ていきましょう。

 

足を使って見つけた理想の物件

大谷さんが物件探しを始めたのは、ちょうど1年ほど前から。毎日のように東京中を食べ歩いて、情報を集めながら、コンセプトや具体的なイメージを絞っていったそうです。

(大谷)「毎日、世田谷・目黒・杉並・文京・代々木・根津・大手町など、東京の街を1日平均9km歩いて物件探しをしました。多い日には20kmも歩くこともありました。歩くことで、店舗周辺の人通りや環境を肌で感じることができたからです。最初は目黒や世田谷で探していたのですが、条件的に合うものがなかったし、人が少ないことが気になったんです。そこで思い切って条件をかえて中央線沿線に出てきてみたら、その日のうちにコレだ!という物件が見つかったんですよ」

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物件巡りのために大谷さんが歩き回った距離の記録

希望していた世田谷や目黒エリアは、坪単価が高く、条件に合わなかったために、出店エリアの変更をしたとのこと。坪単価が高いエリアにはチェーン店や大手飲食店が多く営業していて、その様子はまるで日本中どこにいても、駅前のいつもの風景が広がっていて個性がないと感じたほど。

(大谷)「その点、中央線沿線の方が面白い街だなと思ったんです。西荻窪の方まで足を伸ばした時に、個性的な面白い店が多いなと。坪単価も安く、居抜きで入れそうな良い物件があったのですが、阿佐ヶ谷の方へ来てみたら、面白い個人経営の飲食店も多くて人通りも多い。より条件の良い物件に出会うことができたので、こちらに決めました」

この物件に出会うまでに1年という時間を費やした大谷さん。たとえ金銭面で条件が合っても、人通りが寂しく、ロケーションも悪かった場所ばかりだったと言います。諦めずに理想の物件を求めて歩き回った結果が、今の物件との出会いにつながったようです。

 

諦めないことが物件選びへの近道かもしれない

最初の条件設定もそうですが、大谷さんのように歩いて現場に行き、“外れ物件”に何度出会っても諦めないこと。それが、理想の物件に巡り会うための近道なのかもしれませんね。

 

さて、次回は、いよいよお店作りがスタートします。

 

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店舗BGMアプリ「モンスター・チャンネル」が運営する店舗運営情報magazineの編集責任者。